クライマーに多い指の怪我
指には目に見えるような筋肉ではなく腱(筋)が付着しています。スポーツでの成長過程は、神経、筋肉、靭帯や腱の順番で、腱が強くなるのは2年ほどの月日がかかると言われています。
指の第一関節と第二関節で体重を支えるシーンも多いクライミングは、指にとって大きな負担です。
屈筋腱損傷(パキる)
ダイナミックなムーブに移る時や、ポケットを保持した状態から落ちる時などに、特に薬指を負傷しやすい怪我。腱や腱鞘が傷ついたり断裂する瞬間に、パキッと音がして指から力が抜け、指が曲げられなくなります。
手のひら側にある指の腱は、手のひらと手首を通り前腕の肘の内側付近までつながっているため、指のほかに手のひらや前腕を押すと痛みが出る場合もあります。
指の腱鞘炎
クライミングで負傷しやすいのが、手指の使いすぎによる腱鞘炎。指を繰り返し使うことは、指の腱が輪になった腱鞘を幾度となく行き来することになり、腱鞘に炎症が起き痛みが出てきます。
痛みはないけど何となく指が動かしにくい、指がだるくて違和感がある、この症状が腱鞘の炎症の前ぶれ。不快な痛みがじわじわ出始める初期症状の前に、予防することが大切です。
繊細な指を育てる
指を動かす腱は、手の甲側より手のひら側に多く付着しています。動画の筋膜ストレッチは、1本1本の指を独立させて動きを良くしながら強化できます。
セラパテでしなやかな指に
慢性化しやすい手首の故障
手首は27個の骨と指を伸ばす6本の腱を守る腱鞘など、たくさんの筋肉や骨が集まっています。手や手首を酷使し過ぎると手首に余裕がなくなり、骨と筋肉がぶつかり摩擦がおきやすくなります。
手首の腱鞘炎
指の腱鞘炎と並んで多いのが手首の腱鞘炎。ガバの多い課題を登り続ける、指のみでは持てないハリボテやスローパーなど、手首に負担のかかる動作を続けると発症しやすくなります。
手首の腱鞘炎は安静しにくくて慢性化しやすいのが特徴。ストレッチで手首のストレスを解消し、違和感がでないようにテーピングで手首を補強するなど、予防を心がけましょう。
手首のトラブル防止には?
手首のセルフテーピング
手首に余裕をもたせるストレッチ
両方の手のひらを合わせ、指を組みます。右手で左手を引き上げるように引っ張ります。反対も同様に行います。
クライマーにもおこるゴルフ肘
肘関節は、手首から肘までの前腕骨と肘から肩までの上腕骨が、腱や靭帯などでサポートされた構造です。
肘の内側や外側には、手首を曲げ伸ばす筋肉が付着しているため、腕や手首を酷使し過ぎると肘を傷める原因になります。
上腕骨内側上顆炎
別名ゴルフ肘と呼ばれ、ゴルフを好む人が多く発症するだけではなく、さまざまな原因でもおこります。肘の内側の隆起した骨には、屈筋腱損傷で関わる浅指屈筋腱を含め5つの前腕の筋肉が付着しています。
発症すると肘の内側が痛み、慢性化しやすい厄介なスポーツ障害。クライミングでは、前腕の疲労を溜め込まないように登る前後にストレッチをして、ケアをすることが大切です。
肘の疲労解消で故障予防
手首と前腕の外側をストレッチ
肘を伸ばし手のひらは下に向け、反対の手で、手の甲を覆って手首を下に曲げるようにします。
手首と前腕の内側をストレッチ
肘を伸ばし手のひらを上に向け、反対の手で、指先を持って手首を反らすようにします。
不安定な肩関節の怪我
肉の海に浮かぶ関節、と言われる肩関節は肋骨の上に乗った骨で、筋肉や靭帯でつながっています。
不安定な関節故に可動域が広く、肩の筋肉と肩甲骨のバランスが不安定な状態では腱や関節そのものに負担がかかりやすくなります。
クライミングでは肩の関節だけではなく、体幹や股関節動きなど、全身の動きを見直すことが大切です。
腱板損傷(腱板断裂)
小さな受け皿に丸い骨がのった上腕骨頭は、面積比が1/3~1/4程度。その上腕骨頭が外れないように4つ腱がぐるりと囲んでサポートしています。
肩関節の捻じれや転倒、腕を頭の上に挙げる動作が多いと発症するリスクが高く、損傷すると、夜間痛、自力で腕を挙げられないなどの症状が特徴です。
脱臼
脱臼は転倒や衝突の多いスポーツで起こりやすい怪我ですが、クライミングでは、ランジやダイノと言った足がホールドから完全に離れるムーブで脱臼を起こしやすくなります。
また、足を滑らせて肩から落下してしまう、前傾壁で落下してしまうなど、肩に体重がかかる動作で脱臼が引き起こされます。
肩インピンジメント症候群
4つの腱板と骨の間には、関節包、滑液包と呼ばれるクッションがあり、衝撃を吸収して腱板を守っています。肩インピンジメント症候群は、肩関節で滑液包や腱板が衝突したり挟まることで、痛みが出ます。
生まれながら骨に変形やトゲがある他、外傷や肩に負担のある動きを繰り返すことが発症する原因です。
柔軟性と安定性のある肩に
インナーマッスルを鍛えて安定性のある肩に
上腕骨頭を囲む4つの腱「回旋筋腱板」は肩のインナーマッスルと言われる小さな筋肉です。力を生み出す上腕二頭筋や三角筋などの大きな筋肉とは違い、回旋筋腱板は肩の関節を安定させる役割があります。
回旋筋腱板をトレーニングするには、物足りなさを感じるくらいの低負荷が効果的。
棘下筋を鍛える
棘上筋を鍛える
肩甲下筋を鍛える
小円筋を鍛える
肩甲骨を緩めて柔らかい肩に
クライマーは猫背や巻き肩が多いのはご存知でしょうか。肩甲骨の筋肉が硬く遊びがなくなり、肩の軸が前方になると関節を痛めやすくなります。ストレッチポールで肩甲骨を緩め、安定性を高めましょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。