冬支度をはじめたある朝、久しぶりにホイールを外して驚きました。チューブレスタイヤの中でパンク防止剤のシーラントが白く固まっていたのです。そのまま放置していたらと思うと、少し怖くなりました。ここでは、その反省を込めて、筆者がオフシーズンに実践している洗浄と保管の正しいメンテナンス方法を紹介します。

放置して気づいた、シーラントの失敗

ロードバイクのチューブレスタイヤは高性能で、レースの頼もしい相棒。シーズン中は空気圧の調整やシーラント量などに気を配っていたにもかかわらず、シーズンオフに入った途端、気がゆるんでしまっていました
同じく自転車が趣味の夫に促されてメンテナンスを試みると、チューブの中でシーラントが固まり、走行が危険な状態になっていました。筆者のように「普通に使えたしまだ大丈夫」と油断してしまう人も多いのではないでしょうか。

メンテナンスを怠ると、チューブレスタイヤは気づかぬうちに性能を損ない、次の走行でグリップや空気保持に悪影響を及ぼす恐れがあります。放置したままでは、タイヤも気持ちも鈍ってしまう—。この経験をきっかけに、オフシーズンこそ整える時間が必要だと感じました。

シーズン後に“放置NG”な理由とは?

シーズン中はしなやかだったチューブレスタイヤも、放置すると内部では硬さが増します。

見た目がきれいだと「まだこれくらいなら」と油断してしまいがちです。筆者も、しばらく放置していたせいでタイヤが劣化し始め、走行に支障をきたす可能性がありました。あのとき気づかなければ、完全にダメにしていたと思います。

ここでは、放置によって起こる代表的な劣化現象を2つ紹介します。

ゴムの劣化・変性を防ぐ

ゴムは空気中の酸素や紫外線、熱によって酸化し、柔軟性を失う性質があります。

とくに、直射日光が当たる場所や高温多湿での保管は、表面が白っぽくなったり、微細なヒビが入ったりと変化が起こりやすいため要注意。ゴムの変性を防ぐには、直射日光を避けた冷暗所での保管が有効なため、筆者もガレージ内で保管しています。

また、長期間使用しないときはホイールから外して軽く水洗いし、乾燥させておくと安心です。

シーラント硬化のリスクを防ぐ

チューブレスタイヤの内部に充填するシーラントは、空気に触れると徐々に硬化する性質があります。

筆者の場合は、一度空気抜けをした際に内部のシーラントが酸素に触れ、さらにそのまま放置したために固着してしまいました。シーラントが固まるとバランスを崩したり、気密性を損ねたりするため危険です。

また、見た目は問題なくても内部ではカチカチに固まっているケースも。このリスクを防ぐには、シーズン後に一度タイヤを外し、シーラントを完全に除去してから保管するのが理想です。

古いシーラントを処理して、次シーズンでの活躍に備えましょう。

筆者が実践するチューブレスタイヤの洗浄手順

ロードバイクのタイヤ内部には、目に見えない汚れやシーラントの残留物が意外と多く残っています。

洗浄は3ステップで思いのほか簡単にできます。洗浄、乾燥が可能なスペースを確保してから作業を始めましょう。

①タイヤを外して洗う

タイヤレバーを使用してタイヤを外します。空気をしっかり抜いてからビードをリム中央に落とすと外しやすくなります。レバーは挿入角度を浅めにし、テコの原理で外すのがコツです。

筆者は力任せに外そうとしてレバーが滑り、危うくホイールを傷つけそうになりました。焦らず少しずつ進めましょう。

洗浄には、ぬるま湯(35〜40℃ほど)と中性洗剤を活用するとシーラントの汚れが落ちやすく、泡立てたスポンジで軽くなでるだけできれいになりますよ。

②固着したシーラントを優しく除去する

シーラントは半年ほどで粘度が変化し、固まり始めるといわれています。また、固着したまま放置すると、バルブ詰まりやホイール腐食の原因にもなりかねません。

筆者も固着したシーラントの除去にはかなりの時間がかかりました。運よくパンクせずレースシーズンを終えましたが、もしパンクしていたらシーラントが機能せず、最後まで走りきれなかったでしょう。

乾いたシーラントは手で軽く剥がすか、ぬるま湯でふやかしてから除去します。金属工具を使うとタイヤを傷つけるリスクがあるので避けましょう。

③「完全乾燥」を徹底する

タイヤやホイールに残った水分は、カビやサビの原因になります。風通しのよい日陰で半日〜1日かけてしっかり乾燥させましょう。

筆者はエアブローを使用して水分を飛ばし、室内で保管しています。エアブローを使用する場合は、風圧が強すぎてビードに負荷がかからないように離れた位置からやさしく風を当てるのがポイントです。

タイヤメンテナンスの際は、劣化状態なども一緒に見ておきましょう。

以下の記事ではタイヤの交換目安について紹介しています。

ロードバイクタイヤの寿命はどのくらい?交換する目安は?
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来シーズンのために!オフシーズン中の正しい保管方法

洗浄を終えたら、次のシーズンまでの保管環境を整えましょう。

ここでは、タイヤ単体とホイール装着状態、それぞれに適した保管方法を紹介します。どちらの場合も直射日光を避け、風通しのよい涼しい場所で保管するのがおすすめです。

タイヤ単体で保管する場合

ホイールから外したタイヤは、床に直接置かずに保管するのが基本です。

床に直接置くと湿気を吸いやすいので、新聞紙や段ボールを敷くか、ラックを使用して浮かせるのが理想的です。筆者は普段使いのものはホイールにつけたままラックを使用、長期間使用せずに外しておく場合はぶら下げて保管しています。

ホイールごと保管する場合

タイヤ内部の空気圧が低すぎるとビードが外れたり、タイヤとホイールの隙間から空気が入ったりする恐れがあります。空気圧を1〜2bar程度残した状態で立てて保管すると安心です。

定期的に空気を補充すれば、シーラントの固着リスクも抑えられます。

再度シーラントを入れる際は、以下の記事を参考にしてください。

実体験で解説!ロードバイクのタイヤ空気抜けとシーラント補充のコツ
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手をかける時間もまたロードバイクの楽しみ

ロードバイクは走る喜びと手をかける楽しさが共にあるスポーツです。オフシーズンは、酷使した愛車をゆっくり整えてあげる絶好のタイミング

プロに任せる部分と、自分でできるメンテナンスを分けながら、少しずつ“自分のバイク”を育てていく感覚を味わってみてください。

シーラントの固着は、放置したほんの少しの油断から起こります。オフシーズンこそ、愛車をいたわる時間です。愛車の一部分であるタイヤやホイールも、丁寧な洗浄と正しい保管で整えれば、次に使う際にその差をきっと実感できるはずです。

yomec(よめしー)

ライター

yomec(よめしー)

自然豊かな新潟県在住、夫婦でロードバイクを楽しんでいる自転車ライター。子育てしながらトレーニングする方法を日々模索中です。今ではヒルクライムを中心としたレースが家族旅行に。愛車はSPECIALIZEDとBROMPTON。夫婦での所有スポーツバイクはなんと8台。ファミリーでも楽しめる自転車の魅力を発信します。