毎朝の一杯が、遠い森の鳥たちの休息地を守る力になる。そんなやさしい選択肢が“バードフレンドリー®コーヒー”です。コーヒーが好きで自然も大切にしたい。でも忙しい日々の中で、無理のないかたちで貢献したい。そんな想いを持つ人たちにぴったりのコーヒーを紹介します。

バードフレンドリー®コーヒーとは

バードフレンドリー®(Bird Friendly®)は、米・スミソニアン協会のスミソニアン渡り鳥センター(SMBC)が定める環境基準を満たしたコーヒーに与えられる認証です。ポイントは森の木陰(シェード)で、自然林に近い多層の樹冠の下で、栽培されていること。

森の機能を残した“働く森林”の中でコーヒーを育てることで、渡り鳥の休息・採餌の場が守られます。認証は有機栽培であること、鳥の生息環境に直結する森林構造や木陰率などがチェックされます。

具体的な認証基準としては、乾季の測定で最低40%以上の樹冠被覆(ジュカンヒフク)※1、複数層の樹高(低木・中木・高木の多層構造)、多様な樹種(11種以上など)を備えることが求められます。こうした自然の森に近い環境であることが、鳥や昆虫、ほ乳類にも恩恵をもたらすと実証されており、これらの厳しい基準を満たしたものだけが、バードフレンドリーコーヒーとして認定されます。

※1 樹冠被覆
ある土地の面積に対して、樹木の枝や葉で覆われている部分の割合

なぜバードフレンドリー®コーヒーが鳥に優しいのか

バードフレンドリーコーヒー

近代的な日なた栽培は伐採によって一面の農園に変わりますが、バードフレンドリー®は多様な樹木の木陰でコーヒーを育てるため、森林の機能が維持されます。結果として、渡り鳥が南北を往来するあいだに立ち寄る中継地や越冬地としての役割が保たれ、鳥たちは安全に羽を休め、果実や昆虫を採ることができます

森林を守ることは、土壌の保水・流域保全にもつながり、コーヒーの品質面でも、木陰でゆっくり熟すことで味わいが豊かになりやすいとされています。

また、認証農園の豆はプレミアム価格で取引きされるため、生産者側には森を守るほど暮らしが安定する、という動機付けがはたらきます。自然環境、コーヒーの品質・生産者の生計の3つを同時に満たすのが、この認証の強みといえるでしょう。

バードフレンドリー®コーヒーの生産者

バードフレンドリー®認証を取得している農園は現在12カ国、59農園存在し、総農園面積は約17,000haにもなります。その多くが中南米の国々ですが、エチオピアなどのアフリカ大陸や、インドなどの南アジアにも認証農園が存在します。

バードフレンドリー®コーヒーの公式サイトでは、渡り鳥の種類から農園を探すこともできます。たとえばルビーキクイタダキというスズメよりも小さく、オスの頭の羽毛が美しいルビー色の小鳥がいます。この鳥は渡りの時期に、グアテマラのアソバグリ組合が管理する農園に北米からはるばる海を渡ってやってきて羽を休めるのです。渡り鳥の種類からどこの農園のコーヒーを飲むか選ぶのも面白いかもしれません。

バードフレンドリー®コーヒーはどこで買える?

バードフレンドリーコーヒー

バードフレンドリー®コーヒーを取り扱う店やサイトは数多く存在します。それぞれの方法について紹介します。

輸入食品店で買う

全国のカルディコーヒーファームではバードフレンドリー®ブレンドを豆もしくは挽かれた粉の状態で購入できます。カルディは店舗が全国にあるので足を運びやすく、店頭でコーヒーの味や淹れ方など気軽に相談できるのがメリットです。

コーヒー豆専門店・ロースターで買う

小川珈琲や南蛮屋などのコーヒー豆専門店で購入することも可能です。焙煎も行う店舗では、豆の焙煎度合いや、粉にする際の挽き方の注文を聞いてくれるところもありますので、自分好みのコーヒーを手に入れることができるかもしれません。

オンラインで買う

先に紹介したカルディ、小川珈琲、南蛮屋、日本野鳥の会のバードフレンドリー®コーヒーはすべてオンラインでも購入することができます。味に関する口コミを参考にしながら選ぶことができます。近所に取り扱い店舗がない場合は便利です。

失敗しない選び方は?

バードフレンドリーコーヒーを買いたいと思った場合、パッケージに「Bird Friendly®」のロゴがあるかを確認しましょう。これはSMBCが監修する公式認証の印です。味は販売元によって浅煎り〜深煎りまで様々。

どの味が自分に合うのかわからないという場合は、はじめはカルディの「バードフレンドリー®ブレンド」がおすすめです。クセのない味わいで飲みやすく、そこから自分の好みを研究してみるのが良いかもしれません。

バードフレンドリー®コーヒー、実際に飲んでみた感想

今回は私がいつも利用している、カルディで購入した「バードフレンドリー®ブレンド」を飲んだ感想をお伝えします。豆のまま購入し、自宅で挽いてホットコーヒーを淹れました。

酸味と苦みのバランスがよく、癖のない味わいという印象を受けます。カルディの公式サイトでも、バードフレンドリー®ブレンドは酸味と苦み、重さなどの指標はどれも中間程度とされていて、多くの人に受け入れられる味ではないかと感じました。

バードフレンドリー®ブレンドはカルディ以外でも購入することができます。コーヒー専門店の小川珈琲がオンラインで販売しているバードフレンドリー®ブレンドは酸味が強くさわやかな味わいで、同じくコーヒー店の南蛮屋のバードフレンドリー®コーヒーはコクがあり濃厚な風味が特徴のようです。

また、日本野鳥の会ではパッケージにタンチョウとシマフクロウが描かれた2種類のブレンドが選べます。味の好みによってどのコーヒーを選ぶのも、また楽しみの一つです。

毎日のコーヒーを変えるだけで、渡り鳥のための木陰が守られる手助けができる。大きな寄付や遠出ができなくても、コーヒー一杯から自然保護は始められる。そんな実感がバードフレンドリー®にはあります。今日選ぶ豆が、明日の森を少し濃く、豊かにする。鳥とコーヒーを愛する消費者として、その小さな選択を楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考サイト:
バードフレンドリー®コーヒー公式サイト
Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute

麦原拓馬

ライター

麦原拓馬

東京都在住の週末バードウォッチャー。
高尾山の登山中にキツツキを見つけたことがきっかけでバードウォッチングに興味を持ちドハマり中。
多摩エリアをメインにアウトドア活動を行っている。
愛犬のミニチュアシュナウザーと毎朝散歩をするのが日課。