アウトド・フットウェアアブランド「KEEN(キーン)」は、製品づくりだけでなく、自然環境の保全や持続可能な社会の実現に力を入れてきました。その中心にあるのが、“世界を少しでもポジティブに変えたい”という強い思いの活動「KEEN EFFECT(キーンエフェクト)」。本記事では、KEEN JAPANのPR担当・西方拓己さんへのインタビューを通じて、その活動の背景や想い、現場での取り組みについて紹介します。
ブランド創設時から根づく“行動する精神”
KEENが創業したのは2003年。その翌年に発生したスマトラ沖地震に際し、翌シーズンの広告予算をすべて被災地支援に充てました。広告を通じて「これはKEENにとって最後の広告かもしれません」と宣言したそのアクションは、単なるブランディングではなく、信念の表明でした。
「創業時から“世界を少しでも良い方向へ変えたい”という強い思いがありました。環境保護だけでなく、災害支援や子どもの教育支援、ジェンダー平等など、多様な分野に対して取り組んでいます」
当時まだ小規模だったブランドが社会貢献を優先したその姿勢は、今もブランドの根幹に息づいています。
アウトドアと社会貢献の接点をつくる現場力
イベント担当を経験してきた西方さんは、KEEN EFFECTを体現する場として、フィールドイベントの重要性を語ります。
「群馬県のみなかみ町で開催された野外音楽フェスNew Acoustic Camp2024では、Leave No Trace Japan※とコラボして、来場者が楽しみながら環境について学べるコンテンツを企画しました。また、同時に実施したゲームの参加費は全額、KEEN KEEN EFFECTのパートナーに寄付する形を取っています」
ごみの分解年数をクイズ形式で学ぶミニゲームや、登山時の行動食をごみが出ないようにパッキングするワークショップなど、楽しみながら気づきを得られるしかけが満載。生活に直結する内容だからこそ、多くの人が驚きとともに学びを得られたのでしょう。
※Leave No Trace(リーブ・ノー・トレース)とは、環境に対するインパクトを最小限にして、アウトドアを楽しむための環境倫理プログラム。KEENはLeave No Trace Japanのゴールドパートナーです
「PFASフリー」を実現した製品開発の裏側
KEENでは、製品の開発過程でも環境への配慮を徹底しています。中でも注目すべきは「PFAS(ピーファス)フリー」への取り組み。PFASとは撥水性などの機能性のために使われていた化学物質ですが、環境や人体への悪影響が指摘されています。
「2014年からPFASを段階的に廃止し、2024年に全製品で100%フリーを実現しました。大きな一歩ですね」
欧米ではPFAS規制が進んでおり、「使っていないことをあえて言わなくてもよい」レベルになってきていますが、日本ではまだその情報が浸透していないのが現状。そのためKEEN JAPANでは、PFASに関する啓発やコミュニケーションにも力を入れています。
暮らしに取り入れる「循環する意識」
西方さんが環境保護に関心を持ったきっかけは、2019年に報道されたオーストラリアの森林火災でした。その後、プライベートでも環境に優しい暮らしを心がけるようになったそうです。
「自宅ではコンポストを取り入れていて、生ごみを堆肥にし、妻の実家の畑で活用しています。そこで育った野菜をもらうという循環が生まれています」
また、アウトドアに出かける際はチャックつき袋を活用した行動食のパッキングやマイカトラリーの持参を実践するなど、小さな行動から意識を反映させています。
アウトドアは「天井のない自分の家」
「アウトドアを楽しむ場所を、家のように大切にしてほしい」と語る西方さん。その思いは、とてもシンプルでわかりやすいものです。
「誰でも、自分の家はきれいにしておきたいと思いますよね。アウトドアも同じで、自分が楽しむ場所をきれいに保つことが大切です」
行動を変えるのは「共感」と「体験」
KEENが目指しているのは、「知識を伝えること」よりも「行動を変えること」。そのために必要なのは、理屈よりも共感です。
「若いころに参加した野外フェスap bank fesで“マイカトラリーは必ず持って来よう”というルールがありました。持ってこなければ購入しなければいけないという、ちょっと強めのメッセージで。あと、アーティストも含めた全員参加型のごみ拾いも。そういったことを当たり前にできる人たちの姿が“かっこいい”と思えましたね」
押しつけではなく、「やってみたら気持ちがいい」「楽しい」と感じてもらう。KEENは、そんな体験の場をこれからも創り出し続けてくれることを期待しています!
インタビュイー
KEEN JAPAN PR & KEEN EFFECT Assistant Manager
西方拓己さん
入社後リテールマーケティングとして直営店系の販促を担当した後、イベント担当として音楽フェスやKEEN EFFECT関連イベント、店舗系のイベントなどを担当。2025年1月からはPR担当兼KEEN EFFECT担当として、環境保護活動の推進に尽力している。
取材協力:KEEN JAPAN
KEEN EFFECT
ライター
朝倉奈緒
ファッション誌の広告営業、独立系音楽会社で一通り経験後、フリーランス編集&ライターとして独立し、カルチャー・アウトドア・ナチュラルフードを中心に執筆。現在Greenfield編集長/Leave no Traceトレーナーとして、自然を大事にしながら楽しむアウトドア遊びや学びを発信。プライベートではキャンプ・ヨガ・音楽に親しみ、玄米菜食を実践中。