ダイビングを楽しむ上で、ウェットスーツ選びは快適性と安全性を左右する重要な要素です。水中での保温性が適切でなければ、ダイビング体験は台無しになるだけでなく、安全面でのリスクも高まります。本記事では、ダイビング専用ウェットスーツの特徴から選び方、メンテナンス方法までを詳しく紹介し、最適なウェットスーツ選びをサポートします。

ウェットスーツの基本

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ウェットスーツはネオプレン(合成ゴム)素材の気泡による断熱材で保温状態を保ちます。完全な防水ではなく、内部に侵入した少量の水を体温で温め、断熱層として活用するのが特徴です。

水中では熱が空気中の約25倍の速さで奪われるため、適切なウェットスーツは安全なダイビングに不可欠な装備となります。長時間の潜水を可能にし、低体温症のリスクを軽減する役割も担っています。

スキューバダイビング用ウェットスーツの特徴

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スキューバダイビング用のウェットスーツには、他のマリンスポーツのウェットスーツとは異なる特徴があります。

保温と保護を重視

スキューバダイビング用ウェットスーツは、フルスーツ(上下別れていないスーツ)が一般的。バックジッパー(背中ファスナー)式が主流で、これは水の侵入を最小限に抑えつつ脱着のしやすさも確保しています。また水圧がかかり続けてもへたらないような生地が採用されており、首元から足首まで肌を覆うためケガの防止になります。

水中活動に適した機能設計

ダイビング用のウェットスーツはダイバーの動きを極力制限することのないよう、特に肩や腰の可動域を確保したパターン設計が特徴です。またBCDが接触する箇所には耐摩耗性の高い補強材が使われています。

サーフィン用ウェットスーツとの違い

ダイビング用とサーフィン用のウェットスーツは目的に合わせた明確な違いがあります。サーフィン用は波に乗るための激しい動きに対応するため、柔軟性を重視し、厚さに変化をつけた設計が多いです。対してダイビング用は全体的に均一な厚さで、水圧と低温から体を守ります。

よく「サーフィンのスーツを使っていいですか?」と質問を受けますが、答えはノーです。サーフィン用は水圧への耐久性が考慮されていないため、ダイビングの使用では生地の劣化が早まり、保温性が急速に失われる可能性があります。逆にダイビング用のスーツはサーフィンに使用できますが、サーフィン用ほど柔軟性に長けていないため動きにくく、良いパフォーマンスができない可能性が高いです。

スキューバダイビング用ウェットスーツ選びのポイント

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ダイビング用ウェットスーツの特徴を知っていても、選び方が適切でなければ意味がありません。選び方のポイントを確認していきましょう。

正しいサイズ選びが最重要

ウェットスーツや適切なフィット感が命です。大きすぎるとスーツ内での水の循環が増え保温効果が低下し、小さすぎると血行不良や動きの制限につながります。

理想的なフィット感は、着用時に軽い圧迫感がありつつ、深呼吸や基本動作が無理なくできる状態です。特に水の侵入口である首、手首、足首のシール部分はフィット感と動きやすさは重要。フルオーダースーツであったとしても、しあがり時には試着してしっかりと確認しましょう。

水温・環境に合わせた厚さの選択

ダイビングをする場所と時期によって最適な厚さは変わります。熱帯地域では3mm程度、温帯地域では5mm、寒冷地や冬季では5mmを重ねた2ピースもしくは6.5mm。

天候や体調に合わせるために、フードやベスト、インナーなどのオプションパーツで調整可能なスタイルが、より快適なダイビングのためのコツです。ちなみに筆者は真夏の沖縄でも、保温用のインナーを1枚持参しています。天候が変わりやすく、私自身も体が冷えやすいためです。

インナーの選び方はこちらの記事を、ぜひ参考にしてください。

ダイビングの防寒対策!ウエットスーツの中に着るインナーの選び方
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素材による特性と選び方

ウェットスーツの中核となるネオプレンには様々な種類があり、柔軟性、保温性、耐久性、のバランスが異なります。

素材タイプ(例) 保温性 柔軟性 耐久性 おすすめ用途
ジャージ ★★ ★★★ 初心者、レンタル
スキン ★★★ 冬季ダイビング
スーパーストレッチ ★★ ★★★★ ★★ マルチアクティビティ

安価で初心者にも手が届きやすいジャージ素材は柔軟性がよく、破れにくいためレンタルスーツとしてもよく使用されています。保温性が低いため、内側は起毛素材がおすすめです。

ゴムのようなツルツルとしたスキン素材は保温力抜群で、冬でもギリギリまでウェットスーツを着用したいという人に人気。破れやすいため取り扱いに注意が必要です。

素潜りやサーフィンなどにも使用したい人は、スーパーストレッチなどのより柔軟性が高い生地を選ぶようにしましょう。

タイプ別の特徴とメリット

ウェットスーツはフルスーツ(ワンピース)、シーガル(半袖長ズボン)、ロングジョン(袖なし長ズボン)、ジャケットなど様々なタイプがあります。

フルスーツの場合は保温性が高く、2ピース(上下分かれる)の場合は着脱が楽で、水温に合わせて上だけ、下だけ、と選択することが可能です。一般的にフルスーツが主流ですが、これらも水温や環境に合わせて選択するようにしましょう。

筆者は、5mmのロングジョンに3mmのボレロを愛用中。内側を保温効果の高い起毛にしており、国内外問わず快適に使用しています。

スキューバダイビング用ウェットスーツのメンテナンスと保管方法

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より長く使用するためにはしっかりとしたメンテナンスと保管が必要です。どれも簡単にできますので、ぜひ実践してみてください。

使用後の洗浄と乾燥方法

ダイビング後は必ず真水で丁寧にすすぎ、塩分や砂を除去します。特にファスナーは入念に洗浄しましょう。洗剤を使用する場合は、必ずウェットスーツ専用のものを選びます。

洗浄後は直射日光を避け、風通しの良い日陰で乾かします。暖房器具に近づけすぎると生地の劣化が早まったり、変色したりしてしまうので避けましょう。

正しい保管のポイント

完全に乾いたことを確認してから保管してください。ハンガーを使用する場合は専用の幅広いタイプを選び、生地の変形を防ぎます。折り畳んで保管する場合は、折り目がつかないようにゆるくたたみ、膝部分は正座のように折ります。直射日光や高温多湿を避け、風通しの良い場所を選びましょう。

定期的なケアと修理について

定期的にファスナーの開閉に問題がないかを確認しましょう。動きにくさを感じたらシリコンスプレーや専用の円滑剤を適量に塗布。放置すると動かなくなり、特に背中のファスナーは修理代が高額になるので注意してください。

小さな破れはいつの間にか大きくなり、保温効果が薄れます。1,000〜4,000円ほどで、専用の接着剤や修理キットが販売されているので、放置せずに修繕するようにしましょう。

ウェットスーツ選びは、正確なサイズ感、環境に合った厚さ、素材の特性を重視することが大切です。購入後も適切な洗浄・乾燥・保管に加え、定期的なメンテナンスを怠らないことで長く使い続けることができます。ぜひこの記事を参考に、あなたのダイビングライフを彩るウェットスーツを見つけてください。

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ライター

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マリンスポーツのジャンルを得意としたwebライター。海遊びの楽しみ方やコツを初心者にも伝わるよう日々執筆活動中。スキューバダイビング歴約20年、マリンスポーツ専門量販店にて約13年勤務。海とお酒と九州を愛する博多女です。