冬が近づくとおいしさを増すれんこん。穴があって「見通しがよい」ことから、縁起物としてお正月料理などによく用いられてきました。煮物や酢ばすなどの定番にプラスして、れんこんの多彩な食感を活かしたさまざまなメニューを楽しんでみませんか?
知っておきたいれんこん豆知識
れんこんの収穫方法は、おもに2つあります。田んぼに水をはったままで高圧ホースの水流で掘っていく方法が「水掘り」、田んぼの水を抜いてくわなどを使い掘っていく方法が「くわ掘り」です。地域や土質によって違う収穫方法をとっています。
近年、防除作業などにはドローンが導入され作業が効率化しているようですが、いまだ収穫は人手に頼らざるをえない重労働です。苦労して作られたれんこん。ぜひおいしく食べましょう!
中国種と在来種
いま栽培されているれんこんのほとんどが、明治初期に導入された中国種です。とくにメジャーなのが「金澄(かなすみ)」。茨城県を中心に栽培されているコロンと丸い品種です。
明治以前から食用とされていたものが「在来種」と呼ばれ、奈良時代頃に海外から渡来した種がルーツといわれています。「天王(てんのう)」、「上総(かずさ)」、「あかねれんこん」などが栽培がされていますが、作るのが難しく、希少種となっています。
種類とブランド
関東圏では金澄系が一般的ですが、百貨店やスーパーでは山口県の「岩国れんこん」や石川県の「加賀れんこん」、上の写真の熊本県産「幸祝(こうしゅく)」などのブランドを見かけることもあります。産地や品種の特徴は以下の通りです。
金澄(かなすみ)
千葉の生産者が中国種と在来種「天王」を交配させて1号種を育成したもの。現在は39号まで改良種が進められ、地域の特性にあわせ、茨城や千葉を中心に全国で栽培されています。丸形で食感はシャキシャキ系です。長く収穫できますが、旬は11〜1月頃となっています。
備中(びっちゅう)
中国種から系統選抜された品種で、岡山で栽培が拡がり、現在は徳島など西日本を中心に作られています。色白で大型の楕円形、食感はホクホク・もっちり系で、旬は10〜1月頃です。
ロータスホワイト
愛知が主産地の早生(わせ)品種です。白花種の「岩国れんこん」から系統選抜され、栽培が拡がりました。色白で備中よりやや短い楕円形、食感はしっかり硬めのシャキシャキ系れんこんで、旬は8〜9月頃です。
岩国れんこん
山口県岩国市のブランドれんこんです。岩国のれんこん栽培は約200年前からといわれ、明治以降に中国から導入された白花種が改良されてきました。色白の楕円形で、やわらかく、粘りとシャキシャキ感をあわせもつレンコンです。旬は10~3月となっています。
加賀れんこん
加賀野菜として知られる石川のれんこんで、金沢市を中心に作られています。現在のものは中国の白花種から改良を重ね、昭和40年代から導入が進められた品種です。温暖な地域のれんこんよりやや小ぶりですが、でんぷん質が多く粘りが強い特徴をもっています。旬は10〜2月頃です。
大口れんこん
GI(地域ならではの農林水産物などを保護する制度)に登録されている新潟県長岡市のブランドれんこんです。夏の早生種の「エノモト」はやや小ぶりの楕円形でシャキシャキ系。冬の「だるま」はずんぐり丸形でもちもち食感です。旬はエノモトが8〜10月、だるまは12〜2月です。
部位やシーズンごとの食感の違い
スーパーのれんこんのパックに「シャキシャキ」「シャキホク」「ホクホク」などと書かれていることがあります。これはれんこんの部位による食感の違いを示したものです。大きさや収穫時期によって異なりますが、新しい節ほどシャキシャキ感があります。
- シャキシャキ=芽が出る部分:1~2節目くらい
- シャキホク=2~3節目くらい
- ホクホク=3節目以降
また、暖かい時期に成長し早めに収穫したものはシャキシャキに、約15℃以下で成長が止まり冬場に収穫したものはホクホクねっとり系になっていきます。そして、冬れんこんは土の中ででんぷんが糖にかわり、甘さが増します。
おいしいだけではなく、れんこんには栄養もたっぷり含まれています。含まれるおもな栄養素は、ビタミンC・カリウム・タンニン・食物繊維・ペクチン・鉄・カルシウムなどです。
今がおいしい!食感別冬のれんこんレシピ
秋から冬にかけてれんこんがおいしい季節になります。日に日に店頭に並ぶれんこんの数が増えていきますよ。そこで、作る料理に合わせて種類や部位を選んでみてはいかがでしょうか?お買い物も楽しくなる、食感を活かしたレシピを紹介します。
【シャキシャキ】れんこんサラダ
寒くなってきましたが、ビタミンCたっぷりのサラダを食べてみてください。今しか味わえないれんこんの食感、そして、ラディッシュ&パクチーで彩りと香りを楽しんでくださいね。
材料(2人分)
- れんこん 小(1節)2個(中なら1個)
- ラディッシュ 4個
- パクチー 1把
- 水(れんこんさらし用) 約1L
- 酢(れんこんさらし用) 大さじ1/2
- レモン 1/2個
- オリーブオイル 小さじ1
- 塩 小さじ1/2
- 黒コショウ お好みで
つくり方
- れんこんをスライサーでスライスして、酢水につける
※あまり長い時間つけすぎないように注意。栄養素が抜けてしまいます。 - ラディッシュを2mm幅、パクチーを7cm程度に切っておく
- 鍋でお湯を沸かし、水を切ったれんこんを入れてさっとゆでる(再沸騰したらOK)
- ボウルに溜めた冷水にさらしてれんこんをさます(約30秒)
- よく水を切ってボウルに入れ、ラディッシュとパクチーと一緒に塩・レモンしぼり汁・オリーブオイルで和える
- 盛り付けて黒コショウを振ってできあがり
新鮮なれんこんは生でも食べられますが、さっと湯通しすると粘りが出て食感がよくなります。パクチーがなければ、水菜やカイワレ大根などで代用してください。
【シャキホク】れんこん明太子のマヨネーズあえ
れんこんの甘みとピリ辛明太子がマヨネーズの酸味でコーティングされ・・・ビールにぴったりのおつまみです!
材料(2人分)
- れんこん 中1個
- 明太子 大1本
- マヨネーズ 大さじ2
- 塩 小さじ1/2
つくり方
-
- れんこんを乱切りにして、沸騰したお湯に塩を入れて約2分ゆでる
- 溜めておいた冷水にさらして粗熱をとり、ざるにあげてよく水気を切る
- 明太子をほぐし、皮をはずす
- れんこんと明太子をマヨネーズであえてできあがり
※おまけ:明太子からはずした皮をスキレットで炙って、おつまみにもう一品!
筆者はシャキシャキ派なので茹で時間を短めにしましたが、お好みで長めにゆでればホクホク感が増しますよ。
【トロトロ】すりおろしれんこん汁
寒い日に、体の芯まであたたまるすりおろしれんこん汁はいかがでしょうか?余っている食材をいろいろ使ってみてください。
材料(2~3人分)
- れんこん 大1個(3節)
- にんじん 1本
- じゃがいも 大1個
- たまねぎ 1個
- まいたけ 中1パック
- とりむね肉 適量
- だし(昆布・かつお) 600ml
- 薄口しょう油 大さじ2
- 料理酒 大さじ3
- みりん 大さじ1
- 塩 小さじ1
- ※味変用 豆乳 200ml
つくり方
- れんこん2/3を15mm幅くらいのいちょう切りにする
- れんこんにあわせてほかの食材を切る
- 鍋でサラダ油を入れ、弱火でとりむね肉を炒める
- とりむね肉に焼き色がついたらほかの食材を炒める
- 酒とみりんを入れてひと煮立ちさせ、塩と温めただしを入れて弱火で約30分煮込む
- れんこんをすりおろす
- 薄口しょう油とすりおろしたれんこんを入れ、ひと煮立ちさせてから弱火で約5分煮たらできあがり
※味変で豆乳を入れるのもおすすめ!濃厚でマイルドな味わいになります
すりおろしれんこんは、種類・部位・収穫時期により、やや酸味が強かったり、粘性の強弱があったりします。料理は経験です。自分の好みを考え、食べる人の意見を聞き、何回かトライして少しずつ「絶品」に近づけてくださいね。
ライター
Maita
アウトドア大好きなフリーランスのフードコーディネーター(FCAJ認定/1級)&Webデザイナー。こだわって作った『つくりおき料理』で楽しいキャンプ飯を考案。また、日本各地の固定種・在来種の食材を使った料理を手掛け、地域の食文化の継承を模索している。一人でも家族でも仲間でも楽しめる、そして地球にやさしいレシピを提案していく。