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現在全国各地で建設が相次ぐスケートパーク。環境整備が進むにつれて、話題となり始めているのがスケートボードの部活化です。パート1~4までは、顧問の先生や外部ヘッドコーチのお話を聞いてきましたが、最後は部員の声をお届けします。まずは第一期生の青木心我(あおき こわ)さんに、いろいろな質問をぶつけてみました。

 

開志国際高校
【開志国際高校 取材記①】全日制のスケートボード部ってどんなところ?顧問の先生に聞いてみた~前編
開志国際高校
【開志国際高校 取材記②】全日制のスケートボード部ってどんなところ?顧問の先生に聞いてみた〜後編

 

国際色豊かで偏見のない校風

開志国際高校 取材記⑤

様々な国旗が飾られた校内。自由や個性を感じる雰囲気といえる。

ーまずは自己紹介からお願いします。

青木心我(あおき こわ)です。開志国際高校スケートボード部に第一期生として入部しました。年齢は19歳で、毎日のように村上市スケートパークで滑っています。

もともと入学前から趣味でスケートボードをしていて、今はこちらで出会った友達と楽しく滑っています。

ーなぜ開志国際高校を選んだのですか?

本当は中学を卒業したら、海外へ語学留学する予定でした。でも新型コロナウイルスのパンデミックによってロックダウンの措置がとられ、行けなくなってしまったんです。

それでも1年間は待ったのですが、結局解除されないまま2年目を迎えてしまい、さすがにこのまま学校に行かないのは、将来のことを考えても良くないなと。

中学生の頃はスノーボードをメインに活動していたので、開志のことは知っていました。もともと英語を勉強したかったこともあり、スケートボードも両方できるという理由で入学しました。

ー受験する時に開志国際高校以外の選択肢はなかったのでしょうか? 

僕は新潟県内の出身ですが、地元だと雪が降るので、冬場はスケートボードがしたくてもなかなかできません。そんな折に、開志のオープンスクールに行きました。

寮から村上市スケートパークまでの送迎もあるし、今はボロボロになってしまいましたが、学校のすぐそばにスケートパークもあります。設備も整っていて、気軽に滑りに行ける環境がすごく魅力的でした。

ースケートボード部ができるとはいえ、一期生だとどういうところなのか未知数だと思いますし、英語に特化した学校は他にもあると思うのですが?

気軽に楽しく滑りたい願望を叶えられるのは、ここしかないと思いました。プロになりたいからというわけではありません。それに国際高校という名前の通り、英語も勉強できるし、それってめちゃくちゃ最高じゃん! という感じです。

年齢が19歳とお伝えしましたが、自分は一年遅れて入学することになります。だから地元の高校は知っている人も多くて行きづらい。でも開志のような学校なら、学年や年齢で差別する雰囲気もなく、学校自体が国際色豊かです。

偏見などもないし、スケートボードのカルチャーにも近いものがあると感じたことも大きな魅力でした。

開志国際高校 取材記⑤

高校の寮から練習に向かう部員たち。昔では考えられなかった光景が、開志国際高校にはある。

ー今は地元を離れて暮らしていますが、寮生活はいかがですか?

寮にはさまざまなルールがあり、その中で生活しなければいけないので、もちろん大変です。でも毎日友達とお泊まりしているような感覚というか、スケートボード部の仲間達とワイワイしながら共に生活できるのは、すごく楽しいですね。

 

ここなら英語力も鍛えられる

開志国際高校 取材記⑤

スケートボードと英語の両方が高校生活の中で学べる。そこに魅力を感じる中高生も多いのではないだろうか。

ー入学はどのような経緯で決まったのですか?

自分は開志国際高校が第一志望でした。合格した場合、必ずその高校に入学することを前提とした専願入試で受験し、筆記と面接試験を経て入学しました。

ただ当初は海外留学するつもりだったので、どのような学校なのかあまり詳しく調べていませんでした。改めてどういう学校なのか調べて両親とも相談しました。

その結果、良いんじゃないかという話になり、受験までのそういった経緯も面接で全て話しました。明確なビジョンが固まっていたので、そこを評価してもらえたのかなと思っています。

ー開志国際高校にはさまざまなコースがありますが、どこに所属しているのですか?

国際アスリートコースです。開志には通常のアスリートコースもあります。国際アスリートコースは、英語に力を入れているのが特徴で、先生もネイティブだし、授業中は基本英語だけという環境で過ごしているので、特にリスニングはすごく鍛えられている実感があります。

 

部活になることで生まれた意識の変化

開志国際高校 取材記⑤

2022年11月に開催された「第5回マイナビ日本スケートボード選手権大会」にも出場。

ースケートボード部の第一期生として、入部を決めた理由を聞かせていただけますか?

先ほどの楽しく滑りたかったという理由に加えて、もう一度ちゃんとやってみようという気持ちがあったからです。

開志に入ると決めて、なおかつスケートボード部が新設されるなら、やれるところまでやれるまたとないチャンスだと。真剣に上手くなりたいと思っていたんです。

部活に入ることで、大会に出場するハードルも下がり、覚悟を決められると考えました。自分にとっては中身よりも、意識的なところのほうが大きかったと思います。

ースケートボードは何歳くらいからやっているのですか?

もともと親がやっていて、小さい頃から親のボードに乗っていました。ちゃんと乗り始めたのは中1の秋くらいです。そこから、みんなと遊びの延長線上で楽しんでいました。

本格的にやり始めたのは開志に入ってからです。自分の中では、すごく良い環境の変化になったと感じています。

ー実際にスケートボード部に入ってみてどうですか?

しっかりした施設が地元になかった影響もあるのですが、村上という環境にいると、あらためて浬璃(松本)や穂澄(甲斐 )たち部員のレベルの高さというか、自分との格差みたいなものを見せつけられます。もう毎日喰らってますよ(笑)。

でもそれが良い刺激にもなっていて、本当に全てが楽しいです。スケボーの魅力は上手い下手関係なく、一緒に楽しめるところです。自分は恵まれているなと思います。

ー今までどんなコンテストに出場してきましたか?

今年度は、AJSA(日本スケートボード協会)の北陸サーキットに出ました。普段滑っているところではなく、遠征してきちんとした大会に出ることが初めての経験だったので、全然上手くいきませんでした。

でも新たな出会いがあって友達もできたので、すごく充実していました。

それ以前に村上で行われたコンテストの出場経験はあったのですか?

一昨年の11月に開催された全日本選手権に出場しました。周りは日本のトップばかりだったので、こちらも全く上手くいきませんでした。

 

日常的にトップレベルを体感できる

開志国際高校 取材記⑤

国内トップの選手が集まる村上は、それだけで得られる経験値が大きくなる。

ー全日制高校でスケートボード部がある学校はまだ前例がありません。その辺りも高校を選ぶ理由のひとつになりましたか?

両親は、そこまで真剣に勉強をしなさいというタイプではなかったのですが、ある程度はしてほしいと思っていたようです。

文武両道に、勉強もスケボーもバランス良くできるという意味では、自分にとって全日制の開志国際高校は最良の選択だったと思います。

ー普段の1日や1週間の流れはどういう感じですか?

基本的に平日は、月曜から金曜まで毎日学校があります。放課後にパークに行き、みんなで楽しく滑っています。土日は朝からパークに行く日もあれば、みんなで遊びに出かける日もあります。

ーいつも同じメンバーで滑っているのですか?

基本的にはそうなのですが、スケートボード部として集団で活動はしていても、毎回同じメンバーが集まるわけではありません。浬璃(松本)や穂澄(甲斐 )はプロスケーターとして、自分以上にいろいろなコンテストに出ているのでいない時もあります。

それに、もともとスノーボード部と合同だったところから独立してできた部なので、今でも交流があります。スノーボードのオフシーズンには一緒に滑ることもあります。

部活としてはまとまっていますが、個人がしっかりと確立してるところも、特徴のひとつだと思います。

ー松本浬璃選手や甲斐穂澄選手といったプロが、日常的に在籍していることをどう感じていますか? スケートパークでは、上手い人がいると滑りにくいと感じる人もいますが。

2人とも普通に接してくれるし、お互いスマホで撮りあって、もっとこうしようとか話すこともあります。特に壁を感じることもなく、楽しんでいますよ。そういったところが、スケボーカルチャーの魅力ですよね。

ー開志国際高校スケートボード部ならではの魅力は、どのようなところですか?

一番は、村上市スケートパークで毎日滑れることです。雪国だと冬は滑れなくなる時期がありますが、全天候型で空調付き。夏も冷房が効いているので熱中症にもなりにくいし、しかも送迎バスまである環境は他にはないと思います。

自分が開志に行くことを決めたのも、環境が整っていることが大きな理由です。この環境があると、全国からすごいスケーターが日常的に集まってくるので、身近で国内トップレベル、世界レベルを感じとれます。

特に大きなコンテストが控えているタイミングにはいろいろな人が集まるので、すごくいい刺激を受けています。

 

もっとスケートボード部が増えてほしい

開志国際高校 取材記⑤

現役部員もスケートボードの部活が広がることを願っている。

ースケートボード部がある高校はまだ数少ないですが、それが自分の高校にあることはどう感じていますか?

素直に嬉しいです。ただスケボーはストリートから始まっているので、まだあまりスポーツ味がないというか、遊びの延長みたいな感じが根強いと思います。

でもオリンピックの影響もあり、競技として始める人が増えています。大変だとは思いますが、部活として活動する学校がもっと増えれば、世間にも認められていくと考えています。

そうなれば今問題とされているストリートのスケボーに関しても、出来ることが増えていくと思います。

ー今後、日本におけるスケートボードの部活動はどうなっていくと思いますか?

増えていくと思うし、増えてほしいです。今の自分は、全国の高校生の割合で言ったら、0.1%にも満たない貴重な経験をさせてもらっていると感じます。

やはり部活になることによって、それがきっかけで興味を持ち始める人が出てくるのではと。もともと日本は競技としてのスケボーのレベルはめちゃめちゃ高いのですが、部活が全国各地に広がればもっと高くなると思います。

だから今回の記事で、スケートボード部ってこんな感じなんだとか、こうしたら良いんだ! と広くたくさんの人に知ってもらえたら嬉しいですね。

ーでは最後に、進路に悩んでいる中学生にメッセージをお願いします。

今はいろいろな選択肢がありますが、自分は開志国際高校を選んで良かったです。地元だけではなくて、自分のやりたいことに合わせて、とにかくいろいろ調べてみるのが良いかと思います。

シンプルに「屋内パークが近くにある」「帰り道にそのまま寄って滑れる」というのも理由のひとつになります。自分が本当にやりたいことは何か?を考えて決めてほしいです。たくさん悩んで将来に向けて頑張ってください!

Photo by Yoshio Yoshida

開志国際高校
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開志国際高校 取材記⑥
【開志国際高校 取材記⑥】全日制のスケートボード部ってどんなところ?選手として活動する部員に聞いてみた
スケートボード部、第一期生の青木心我さんのお話はいかがだったでしょうか。部活になることにより、彼のように真剣に打ち込む人が増えるのではと感じました。それは間違いなくスケートボードの裾野を広げています。最後となるパート6では、同じ生徒でもプロから見た目線として、松本浬璃選手にお話を伺っていきます。

ライター

吉田 佳央

1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。フォトグラファー兼ジャーナリストとして、ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。