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国際舞台における日本人選手の強さに、相次ぐスケートパークの建設。着々と環境整備が進む日本のスケートボードシーンにおいて、現在各地で話題となり始めているのが「部活化」です。そこで全国に先駆け、いち早くスケートボード部を設立した全日制の私立高校、開志国際高校を取材しました。まずは顧問の横山先生に、設立の経緯や部の大枠についてお話を伺いました。

 

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開志国際高校 取材記⑥
【開志国際高校 取材記⑥】全日制のスケートボード部ってどんなところ?選手として活動する部員に聞いてみた

 

世界に通用するリーダーを育てたい

開志国際高校

一言でいえば尖った個性の集合体。開志国際高校はそんな場所だ。

ーまずは簡単に自己紹介からお願いします。

横山幹雄です。年齢は58歳。新潟県長岡市出身。中学校の教員およびメンタルコーチを経て、開志国際高等学校に勤務しています。スノーボード部・スケートボード部の顧問は、7年前から担当しており、学校では事務に関する仕事をしています。

開志国際高校

スケートボード部の顧問 横山幹雄先生

ー開志国際高校の特徴を教えてください。

医学科進学コース、国際情報コース、アスリートコース、国際アスリートコースと、一般的にはない学科を設けた特化型の高校です。

世界に通用するリーダーの育成を目標としているので、従来の高等学校ではなく、新しいものを取り入れていく柔軟なスタイルです。一般的な普通科ではないことからも、志をもった意識の高い生徒が非常に多いのが特徴です。

 

スケートボードをメジャーにすることが使命

開志国際高校

部活創設時のポスター。当初はスノーボード部と合同だった。(写真提供:開志国際高校)

ーなぜ高校にスケートボード部を設立したのですか?

2022年にスケートボード競技がオリンピック種目になること、スノーボード部員がオフシーズンにスケートボードの練習をしていること、さらに本校一期生の平野歩夢が出場を表明していることから設立されました。

ー創設後、部員はすぐに集まったのでしょうか?

創設から3年間は、まったく入部希望者がいませんでした。原因ははっきりしていて、練習施設が整備されていないことや、冬場はスケートボードができないのでスノーボードをやる必要があること、授業を欠席することが増えるなどが主な理由でした。

開志国際高校

卒業生の活躍は校内に掲示される。先んじてオリンピック種目となり創設されたスノーボード部のあとを追うように、スケートボード部も創設された。

ー平野歩夢選手のお話がありましたが、やはり彼の存在が部の設立に大きく関わったのでしょうか?

平野歩夢選手は、ソチオリンピックの銀メダリストであり、スノーボード界のイメージを変えた一人です。そんな彼が、今度はスケートボード競技に参戦すると知って、スケートボード界のマイナスイメージも変わるのではないかという期待もありました。

ーどのようなイメージがあったのですか?

スケートボードは、ひと言でいうと「遊び」です。夜中に公園で大きな音を立てたり、道路を滑ったり。施設を壊して苦情が寄せられることも。世間一般のイメージは、あまりよくないと感じています。

 

マイナスイメージを払拭した事例

開志国際高校

学校を出てすぐの国道7号線沿いに造った部員専用のスケートパーク。

ーそれまで全日制高校のスケートボード部は前例がなかったと思います。全日制ならではの苦労や印象的なエピソードはありますか?

スケートボードの練習場所は決められていたのですが、玄関や路上など、いつでもどこでも乗ってしまう習慣がありました。その結果、学校の施設を破損したり、道路を滑って地域から苦情が来たりすることもありました。

学校生活においては、髪を染める、制服を腰パンにして履く、ピアスをつけるなど規則違反をする生徒もいました。挨拶や礼儀作法、言葉づかいなど、高校では当たり前のことができない生徒が目立ちました。

このような生徒たちでも、全日制の高校に所属すれば一般常識が身につきます。指導や注意を受けることでマナーを覚えて、コミュニケーション能力も高まるところが、全日制の良さだと思います。

ーパークをつくったことで効果はありましたか?

生徒達はその辺の路上ではなく、パーク内で練習するようになりました。地域の方々からも「頑張ってるね」と言われるようになり、スケートボードのマイナスイメージを払拭する良い事例になったと思います。

高校の部活の場合、活動場所を確保することが絶対条件のひとつですが、同時にそこがすごく大変なところです。でもこうして実現できたのは、全日制だったことがひとつの大きな要因だったと考えています。

開志国際高校

村上市スケートパークができてから使う機会はほとんどなくなってしまったが、それでも高校内にスケートパーク施設があることに驚く。

ー他では予算的な問題などがあってできないということでしょうか?

単位制や通信制の高校が、どのような活動をしているか把握はしていませんが、おそらく施設費の予算をとっていないのではと思います。

当校では施設費を有効活用させてもらっています。例え学校のパークがなかったとしても、村上市スケートパークに行けば練習は可能です。個人で勝手に練習するのではなく、学校の費用を使って送迎や施設費も賄っています。

ー部活をサポートする体制が整っているのですね。

実は村上のパークも無償で使用させていただいています。学校の部活として教育委員会に申請しているので、自由に使うことができます。

 

在籍する生徒と普段の活動

開志国際高校

スケートボード部員の松本浬璃選手。現在日本のコンペシーンでトップに立つ1人だ。

ー部活に加入している人数や、普段の活動内容について教えてください。

今はスノーボード部とあわせて16名在籍しています。スケートボード部だけだと3名ですが、スノーボード部員の中にはスケートボードをやる生徒もいるので、割合は半々くらいですかね。部活として別々とはいえ、一緒に活動することも多いです。

平日は学校が終わった後に、毎日片道30~40分かけて村上市スケートパークまで行き、2時間半くらい練習します。部員のほとんどが寮に入っているので、食堂が終わる20時までに戻れるようなスケジュールで活動しています。

ー練習内容はどのように決めているのですか?

水曜日と金曜日は、外部ヘッドコーチとして平野英樹さんに指導をお願いしています。他の日は、各自で課題を決めて練習しています。

開志国際高校

校内には立派なトレーニングルームも完備されている。

ー部員のサポートを中心に担当されているのですね。

今はほとんどしていないのですが、バスの移動時間に隣に座ってもらって、堅苦しい感じではなく将来のことなど、いろいろな話をしています。そういった時間もアスリートにとっては大切だと考えています。

 

幅広い将来の選択肢

開志国際高校

全日制高校なら卒業後の選択肢が広がる。今のペースで競技人口が増えていけば、ニーズはさらに増えていくだろう。

ースケートボード部は通信制も含めると全国にいくつか存在しています。それらと比べて開志国際高校スケートボード部にはどんな特色がありますか?

当校はアスリートコースの生徒に限らず、誰でもしっかり挨拶ができます。例え相手が誰か知らなくても、自然にできる生徒たちばかりです。普通はやれと言われなければ、なかなかできない。常に礼儀正しくあることは、学校にいないと身につかないものではないでしょうか。

また、村上市スケートパークは無料で利用させてもらっているので、最後の5分間は掃除をして感謝の気持ちを表す活動もしています。他にも行政が主体で行なっているキッズスクールの手伝いもしています。

こうした活動を通して、人間関係や思いやりの心を学べるのは、部活として活動しているからこそできることだと思います。

ー素晴らしい取り組みです。他にもあれば教えてください。

しっかり勉強もするので、大学進学率が高いのが特徴です。今年はスケートボード部とスノーボード部からも、多くの生徒が内定をもらっています。全日制だと、将来の選択肢が大きく広がると思います。

将来も今のように競技中心でやっていける人もいますが、全ての人がそうなれるわけではありません。社会に出ても問題ないくらいの教養やマナーを勉強を通じて身に付けておくことで、将来の可能性を広げられます。

ー進路の幅が広がれば、野球やサッカーといったメジャースポーツにスケートボードが近づいてきた証にもなると思います。

例えば甲子園や高校サッカー選手権に出て活躍したとしても、プロとして活動できる人は僅かです。いざ社会に出る際に、戦える武器として知識もあると可能性が広がりますよね。

先ほど当校は大学進学率が高いとお話しましたが、スノーボード部では中京大学や日本体育大学などから、スポーツ推薦の話が私に来ることもあります。推薦の場合、基本的にはスキー部に入ってスノーボードをやる形なので、そこまでしてやるかは本人の意思にもよりますが。

スケートボード部は、まだスポーツ推薦のようなルートは確定できていません。でも全日本選手権で結果を出した、世界に出て活躍している、なおかつ将来のことを考えて大学で勉強したいという気持ちがあれば、私の方からアプローチすることはできます。

今後、開志国際高校のスケートボード部から、大学への進学ルートが構築できる可能性は大いにあると思います。

ーそれは全日制だからできることだと言えますね。

はい。実はスノーボード部に関しては、そういった活動を経て来年新たにスノーボード部が新設されるところがあり、当校から進学する生徒がいます。

グループ校ではありますが、新潟医療福祉大学に開志国際高校から推薦入学する形になります。スポーツ医学系の学科なので、競技を通した発展系の仕事と言えるのではないでしょうか。

Photo by Yoshio Yoshida

開志国際高校
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何事も前例がないことを始めるには苦労が伴います。しかし日本独自の文化とも言える部活動制度にスケートボードが上手く収まったら、未来の選択肢は確実に広がります。それは今のキッズスケーターや保護者の方々にとっても喜ばしいことです。後編では生徒の将来のために行っている取り組みや、入学についてなど、詳細を掘り下げていきます。

ライター

吉田 佳央

1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。フォトグラファー兼ジャーナリストとして、ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。