登山中に手ぬぐいを首に巻いたり、ザックに付けたりしている人をよく見かけるようになりました。デザインの豊富さにくわえ、汗を拭くだけなく、いろいろなシーンで使用できるのも人気の理由です。山でどのような活用方法があるのか、詳しく見てみましょう。
日本の伝統「手ぬぐい」
奈良時代に祭礼の装身具として使用されてきた手ぬぐい。当時は絹や麻で作られ、神仏や体を清める高級なものでした。
江戸時代になると、木綿の手ぬぐいが庶民に普及し、生活の必需品として親しまれるようになります。食器を拭いたり、裂いて鼻緒にしたりと用途はさまざまです。実用的に使うだけでなく、江戸の粋(いき)なファッションアイテムとしても人気になりました。
さらに、明治時代になると染色技術が向上し、デザインの幅が広がります。用途も多様化し、現代では登山に欠かせないものです。既存の枠にとらわれず、時代の変化とともに楽しみ方が広がっています。
登山で便利な手ぬぐいの性能
登山で木綿の生地はNGとされていますが、手ぬぐいは使い勝手に優れ、登山でも活用されています。手ぬぐいの主な性能を4つ紹介します。
持ち運びやすい
生地が薄く、畳むとコンパクトになるので、ザックやサコッシュのなかに入れてもかさばらないのが魅力です。タオルは厚みがあるので、小さく畳んでも場所をとります。同じ大きさのタオルと比べると一目瞭然です。
かわいいデザインの手ぬぐいなら、外付けにして持ち運び、オシャレを楽しんでもよいでしょう。
吸水性が高い
手ぬぐいは木綿でできているため、吸水性がバツグンです。汗拭きとしてだけでなく、テントが結露したときや、急な雨で濡れたときに使用してもよいでしょう。
乾きが早い
木綿は化学繊維に比べて速乾性に劣りますが、手ぬぐいは薄いので早く乾くのがメリットです。
両端を切りっぱなしにすることで水がたまりにくく、乾きやすくなっています。そのため、1日に何度も汗を拭いても、ザックに付けて干しておけば乾くでしょう。
耐熱性が高い
手ぬぐいは耐熱性があるため、鍋つかみやご飯を蒸らすときの包みにもなります。山ご飯を作るときになにかと便利です。
登山シーンでの活用方法
手ぬぐいはいろいろな場面で役立ちます。登山ではどのように使えるのかを見てみましょう。
被りものになる
手ぬぐいを広げて頭に巻き、両端を後ろか前で結べば、帽子の代わりとして使用できます。また、帽子の上から手ぬぐいを被ると顔の周りがカバーされ、日焼け対策にもなります。
ヘルメットや帽子を被るときのインナーにすれば、汗止めになり、帽子が汗でびしょびしょになることを避けられるでしょう。
暑さ対策になる
そのまま首に巻くことで、日焼けや暑さ対策になります。濡らして固く絞れば、熱中症対策にも有効です。首や脇の下、太ももの付け根を冷やすとよいでしょう。
マスクの代わりになる
山小屋などでマスクを着用しなければならないときは、手ぬぐいで代用すればOKです。また、噴煙や砂ぼこりを吸い込むのもふせげるでしょう。
木綿製の手ぬぐいは肌触りがよく、快適に着用できるのもうれしいポイントです。車中泊やテント泊などの、就寝時の乾燥対策としても取り入れましょう。
ケガの備えになる
捻挫や打ち身をした場合、手ぬぐいを濡らして患部に当てれば、アイシングとして役立ちます。腕や足を負傷した際には、三角巾代わりにして腕をつるしたり、添え木を手ぬぐいで固定したりできるでしょう。
ほかにも、止血するための圧迫包帯として使ったり、ケガをした患部に巻いたりすれば、包帯やガーゼ代わりにもなります。
応急処置で使える
靴底が剥がれた場合の応急処置として活用できるでしょう。手ぬぐいは裂きやすいので、紐状にし、靴と靴底をしっかり巻いて固定可能です。また、木綿は滑りにくいため、テープより安定するでしょう。
手ぬぐいの取り扱い注意点
お気に入りの手ぬぐいを長く使うために、取り扱い方を知っておきましょう。
色落ちしやすいので手洗いする
手ぬぐいは白い布を染料で染めているので、どうしても色落ちしやすくなります。ほかの洗濯物に色が移らないように、別にして洗うのがおすすめです。洗い方のポイントは以下の2つです。
- 中性洗剤や固形の洗濯石けんで手洗いする
- 陰干しする
なお、使用する前に水洗いしたり、お酢を入れて洗ったりすると色落ち防止になります。
ほつれはカットする
手ぬぐいの端のほつれは、引っ張らずにハサミでカットしましょう。引っ張ると糸がひきつり、しわの原因になります。だんだんとほつれが出なくなるので、それまではカットして対応してください。
また、端を折り返して縫ってしまうと、手ぬぐい本来のよさがなくなってしまいます。ある程度のほつれは魅力として考慮しましょう。
手ぬぐいは、デザイン性と実用性を兼ね備えた登山アイテムです。帽子の代わりや応急処置など、幅広いシーンで重宝します。軽量かつコンパクトで、ザックやサコッシュに忍ばせておけるのもGOODです。使い込むほどなじみ、色落ちやほつれさえにも愛着が湧くでしょう。便利なだけでなく、山小屋の手ぬぐいを集めるのも楽しみのひとつになります。お気に入りの手ぬぐいと一緒に山へ出かけましょう。
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。