自然豊かな場所だけど、子どもとどうやって楽しめばよいか分からない—そんな風にとまどった経験はありませんか?自然体験には知識が必要だと思われがちですが、「ネイチャーゲーム」は「教える」より「感じる」ことを大切にしています。私がネイチャーゲームリーダー養成講座を受け学んだのは、「今、ここ」にある自然を感じ、その気持ちを分かち合うことの大切さです。成果や効率を求めがちな大人の感性をほぐしてくれるネイチャーゲーム。今回は、その考え方と親子で楽しめる簡単な遊び方を紹介します。
ネイチャーゲームとは?スマホ時代に注目される自然遊び

ネイチャーゲームとは、見る・聞く・触る・嗅ぐといった五感を使いながら、自然とのつながりを楽しむ体験活動です。1979年にジョセフ・コーネル氏によりアメリカで発表され、現在では保育園や学校、環境教育の現場などでも広く活用されています。
180種類以上のアクティビティがあり、専門的な知識や特別な道具がなくても、子どもから大人まで一緒に楽しめるのが特徴です。スマホやデジタル機器に触れる時間が増えた今だからこそ、自然に対して自分の感覚をひらく時間には大きな価値があります。
ネイチャーゲームでは、自然との直接的な触れ合いを通じて「自分も自然の一部である」と実感し、感動や気づきを分かち合う「シェアリングネイチャー」の考え方を大切にしています。例えば「風が気持ちいい」「葉っぱの形がおもしろい」というように、自然を直接体験し感じたことを親子や仲間と共有することで、発見や感動がより深まるのです。
難しいルールはありません。身近な公園や散歩道でも実践できるネイチャーゲームの視点は、自然との距離を縮め、親子の時間を豊かにしてくれる遊びのヒントとなるでしょう。
親子でできる簡単なネイチャーゲームの例

ネイチャーゲームには180種類以上のアクティビティがあり、それぞれに自然への気づきを促すための「ねらい」があります。ここでは、ネイチャーゲームをそのまま紹介するというよりも、親子で自然を楽しむための視点や、アイデアとして取り入れやすい活動を紹介します。
どれも特別な道具や専門知識は必要ありません。まずは気軽に楽しみながら、自然との距離を縮めてみましょう。
3歳・4歳でも楽しめる「宝さがし」
「宝さがし」は、「宝物」を身近な自然の中から探すゲームです。リストに「何かトゲトゲしたものひとつ」「木の実をひとつ」「誰かの食べた跡ひとつ」などと書いておきます。
3〜4歳の子どもにはリストを渡すより、一つずつ見本を見せながら口頭で伝えた方が理解しやすいかもしれません。自然を傷つけないよう約束したら、見つけに行きましょう。
大切なのは正解を求めることではなく、子どもの発見を大人が同じ目線で喜び、一緒に面白がること。テーマを持って自然を観察すると、普段は見過ごしてしまう自然の魅力にも気づけます。
集めた宝物はすべて、自然界で誰かが必要としていることを話しながら、元の場所へ返してあげましょう。
小学生にもおすすめの「森の美術館」

「森の美術館」では、自然の中にあるお気に入りの一コマを額縁で切り取り、みんなで鑑賞します。額縁は四角い紙の中央をくり抜いた簡単なものでOK。「美しい」「おもしろい」などと感じるものを探しに行きます。
草木や石、ユニークな形や模様、光が織りなす世界など、どんなものでも構いません。額縁を置いて作品にし、自分なりのタイトルを付けます。クリップなどがあれば、木の枝などにも留められて便利です。この時、額縁に収めるために花を採ったり枝を折ったりせず、ありのままの自然を作品として楽しみましょう。
その後一緒に作品を見て回り、タイトルの由来などを聞きながら鑑賞します。同じ森の中にいても、その人の感性によって見え方が違うことに驚くはず。スマホで写真を撮るのとは違い、その場の空気や発見を共有できるのも魅力です。
準備が無くてもできる「音いくつ」

「音いくつ」は、耳を使って自然や周囲の音に意識を向けるシンプルなゲームです。騒音の少ない場所で両手を肩の高さに上げ、1〜2分ほど静かに耳を澄まします。音が聞こえるたびに指を1本ずつ折り、何種類の音があったか数えてみましょう。
時間が来たら、「鳥の声が聞こえた」「風で葉っぱが揺れる音」「遠くを走る車の音がした」など、気づいた音を紹介し合います。小さな子どもなら30秒程度にし、敢えて数えることをせず「どんな音が聞こえた?」と話し合うだけでも十分楽しめます。
普段は気づかない小さな音に耳を傾けていると、同じ風の音でも、自分からの距離や強さの違いに気づくことがあります。感覚を集中させることで心も落ち着き、自然をより身近に感じられるから不思議です。
ネイチャーゲームの視点が、親子の自然体験を豊かに

ネイチャーゲームは、ただアクティビティをゲームとして楽しむだけではありません。自然に対して感性を開き、一緒にいる人と感動を分かち合うきっかけを与えてくれるのが魅力です。
実際にネイチャーゲームを体験した私は、ゆったりとした心で自然と向き合うことができ、初対面の人とも気づきや感動を共有し、元気をもらいました。ここでは、親子の自然体験をより豊かにしてくれるネイチャーゲームの考え方もお伝えします。
”センス・オブ・ワンダー ”で大人も心を開いて
ネイチャーゲームは、大人にとっても自然への感性を取り戻すきっかけになります。普段の生活では、私たちは成果や効率を優先しがちです。散歩をしていても、目的地へ向かうことを考え、足元の地面や風の音にゆっくり意識を向ける機会はそう多くありません。
しかしネイチャーゲームでは、見る・聞く・触る・嗅ぐといった感覚を使いながら、丁寧に自然と向き合うことになります。すると、同じ景色でも新しい気づきや感動が生まれ、心が癒されるのを実感できます。自然の美しさや不思議さに心を開く「センス・オブ・ワンダー」の感覚は、大人にこそ必要なものかもしれません。親が自然を楽しむ姿は、子どもにとっても自然への興味を育むきっかけになるでしょう。
センス・オブ・ワンダーについて詳しくはこちら
”正解”より”何だこれは?”を大切に

ネイチャーゲームでは、正しい答えを知ることよりも、「不思議」「素敵」「面白い」と感じる気持ちを大切にします。例えば「宝探し」で、大人が意図したものと全く違うものを子どもが持ってくるかもしれません。そんなとき「それは違うよ」と言うのではなく、その子の心に寄り添い「どこにあったの?」「ここが素敵だね。」と会話を楽しめば、親子のつながりも深まっていくでしょう。
自然界の物や現象について、全てを知ることは簡単ではありません。すぐに答えの出ないものがたくさんあるからこそ、「何だろう?」「面白いね」という気持ちを共有する時間が生まれます。
大人が知識を教えることよりも、感じたことを一緒に分かち合うことを大切にするのがシェアリングネイチャーの心です。親子で驚きや発見を共有する体験は、自然への興味だけでなく、お互いを理解し合うきっかけにもなるでしょう。
自然を好きになるきっかけは小さな体験から
自然への愛着は、特別な体験だけで育まれるものではありません。身近な自然の中で感じた小さな喜びの積み重ねが、自然を好きになるきっかけになります。
ネイチャーゲームの考え方では、「気づき」が大切にされています。鳥の声に耳を澄ませたり、おもしろい形の葉っぱを見つけたりするだけでも十分です。そして、その発見を親子で共有することで、喜びはさらに大きくなります。まずは散歩の途中で立ち止まり、「何か面白いものあるかな?」と一緒に探してみるだけでもよいのです。
そうした何気ない時間の積み重ねが、自然への理解や思いやりを育み、やがて自然を大切にしたいという気持ちへとつながっていきます。ネイチャーゲームは、その最初の一歩を後押ししてくれる身近な方法なのです。
ネイチャーゲームリーダー養成講座

ネイチャーゲームリーダー養成講座は、自然と人を結ぶ「自然案内人」としての考え方や実践方法を学ぶ講座で、全国各地で開催されています。実際にネイチャーゲームを体験しながら、背景にあるシェアリングネイチャーの理念や、自然との関わり方、人との分かち合いの大切さを学びます。知識を教える技術よりも、自然への気づきを引き出す視点を身につけることに重点が置かれているのがポイントです。
受講者は、自然体験活動に関わる人だけではありません。私が受講したときには、教員や保育士が多かった一方で、「娘が受講するので一緒に参加した」「姉が楽しそうに活動しているのを見て興味を持った」という年配の女性もいました。仕事に活かしたい人のほか、子どもや孫と自然を楽しみたい人、自然が好きで向き合い方を学びたい人にもおすすめできる講座です。
講座を受けた後、疲れている同僚に「空がきれいですね」と気負わずに言えたり、虫や花に対する自分の気持ちを、素直に子ども達の前で表現できるようになりました。身近な自然との関わりを通して、暮らしの中に小さな喜びを見つけたい人にとっても、ネイチャーゲームの視点は大きなヒントになるはずです。
ネイチャーゲームリーダーについて詳しくはこちら

宝さがし:370
森の美術館:371
音いくつ:372
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。