日本でのトレッキング体験はあるけれど、海外での登山やトレッキングに挑戦してみたいと思ったことはありませんか?そんな人におすすめなのが、スリランカ中部にそびえる巨大な岩山・シギリヤロックです。この記事では、登頂ルートや絶景ポイント、歴史背景、移動手段や装備、さらにシギリヤロックを真正面から眺められるピドゥランガラロックの魅力を、実体験をもとに詳しく紹介します。
スリランカってどんな国?
広大な緑の中に世界遺産や遺跡が点在するスリランカは、トレッキングや文化体験の旅にうってつけの国です。密林や茶畑、湖や滝など自然のバリエーションも豊富で、歩くたびに景色が変わるのが魅力。
標高の低い地域の気温は年間を通して27℃前後。日中は30℃を超えることもあり、熱帯らしい湿度の高さも感じられます。熱さや湿度はトレッキングに影響するため、歩く時間帯や休憩場所、飲み水の確保を考えながら計画を立てるのがポイントです。
スリランカの基本情報
| 国名 | スリランカ共和国 |
| 首都 | スリジャヤワルダナプラコッテ(行政) |
| 最大都市 | コロンボ |
| 位置 | インド洋に浮かぶ島国、東南アジア |
| 気候・自然 | 熱帯気候、豊かな自然、世界遺産や遺跡が多数 |
| 言語 | シンハラ語・タミル語 |
| 通貨 | スリランカルピー(LKR) |
| 日本からのアクセス | 直行便で約9〜10時間 |
“シギリヤロック”とは?世界遺産の空中宮殿

“シギリヤ・ロック”とは、5世紀後半にカッサパ1世が巨岩の上に築いた空中宮殿とその遺跡群のことです。
築宮からわずか11年後に攻め落とされたシギリヤロック。その後は僧院として使われましたが、やがて人々の記憶から消え去ります。
19世紀後半、イギリスの探検家によって再び世に知られると、1982年には世界遺産に登録。自然と人工建築の調和、そして頂上からの絶景が世界的に高く評価されるようになりました。
標高は約370メートル、シギリヤロックそのものは約200メートルとそれほど高くはありませんが、岩肌に沿った急勾配の階段や直射日光で意外とハード。水分や休憩をこまめにとりながら登るのがおすすめです。
シギリヤロックの基本情報
| 所在地 | スリランカ中部、ダンブッラ近く |
| 標高 | 約370メートル |
| 時代 | 5世紀、カッサパ王による築造 |
| 特徴 | 一枚岩、頂上に宮殿跡、フレスコ画「シギリヤ・レディ」 |
| 世界遺産登録 | 1982年、ユネスコ世界遺産 |
| 登頂時間 | 約1〜2時間(下山を含む) |
| 見どころ | 頂上からの360度パノラマ景観、岩肌のフレスコ画、庭園跡 |
実際に登ってみた!シギリヤロック登頂体験

私が訪れたのは2023年9月。数ある国の中でスリランカを、そしてシギリヤロックを選んだのは、世界遺産としての歴史と文化に触れながら、観光客でも挑戦できるトレッキングを体験したかったからです。
ここからは、登山口から頂上までの道のりや見どころを、実際に登った体験を交えながら順を追って紹介します。
チケット購入とスタート地点(所要時間:約20〜30分)
外国人である私はシギリヤ考古学博物館内でチケットを購入。大人35ドル、子ども20ドル(2025年時点)、現金のほか、クレジットカードが利用可能です。

チケットを手にしたら、まずは庭園(シギリヤ・ガーデン)を散策。美しく整えられた池や噴水、緑に囲まれた道を歩きながら、これから登る巨大な岩山を見上げたときの高揚感は、今でも鮮明に覚えています。
登山開始:緩やかな道から急な石段へ(所要時間:約30〜40分)

庭園を抜けると、いよいよ登山スタート。最初は緩やかな石段や岩場が続き、鳥のさえずりや滝の水音に励まされながら一歩ずつ進みます。
やがて木々の合間から巨岩が姿を現し、近づくほどにその圧倒的な存在感が全身に迫ってきます。熱を帯びた岩肌からはじわりと熱気が伝わり、乾いた風に砂の匂いが混じる。まるで岩そのものが生き物のように呼吸している―そんな迫力を肌で感じた瞬間でした。
ライオンテラス(ライオンの爪):王宮の入口(所要時間:約20分)

ライオンテラスは、かつて王宮の正門として造られた巨大なライオン像の台座部分です。急な階段が続き、両側には切り立つ岩壁が迫ります。手すりを握りながら登り切ると、頂上への最後のステップが見えてきます。
頂上からのパノラマビュー:王の目線で見渡す大地(所要時間:約10〜15分)

登りきった先に広がるのは、言葉を失うほどの大パノラマ。360度、果てしなく続くジャングルの緑が地平線まで広がり、点在する村や湖が太陽の光にきらめいています。
かつて宮殿が築かれていた頂上には水槽跡や石垣、基礎部分が残り、当時の生活を追体験することができます。

吹き抜ける風に包まれながら立っていると、まるで王カッサパがこの地を支配していた時代にタイムスリップしたような感覚に。眼下に広がる大地を王の目線で見渡す瞬間は、登頂の苦労を忘れるほどの感動をもたらしました。
下山ルート:美人画を眺めながら(所要時間:約30分)

下山は登りとは別の岩肌沿いのルートを進みます。途中には「シギリヤ・レディ」※と呼ばれる美しい壁画があり、1500年以上前の鮮やかな色彩が今も残されています(※シギリヤ・レディ=岩肌に描かれた女性像のフレスコ画)。
その先には「ミラーウォール」※と呼ばれる白い壁が。古代の人々の詩や落書きが刻まれています(※ミラーウォール=漆喰で磨き上げられ、当時は鏡のように光を映した壁)。

下山ルートは観光客で渋滞することも。登頂の余韻を感じながらゆっくり下る時間は、シギリヤの歴史と文化を肌で味わえる貴重なひとときになることでしょう。
ピドゥランガラロックからの絶景

シギリヤロック登頂の翌日、隣のピドゥランガラロックにも挑戦しました。こちらは道が整備されておらず、森や岩場を進むスリリングなルートです。
ピドゥランガラロックの基本情報
| 所在地 | スリランカ中部、シギリヤ近郊 |
| 標高 | 約220メートル |
| 特徴 | シギリヤロックを真正面から望める岩山。整備されていない自然の道や岩場が続き、探検気分で登れる |
| 登頂時間 | 約1時間〜1時間半(下山含め2時間前後) |
| 見どころ | 頂上からのシギリヤロック全景、ライオンのテラスや王宮跡を俯瞰、朝日・夕暮れ時の絶景 |
登山口と準備
登山口はピドゥランガラ寺院の横にあり、入場料は1,000ルピー(現金のみ・2025年時点)。日の出に合わせて出発する場合はヘッドライトがあると安心です。
登頂ルートと所要時間(約1時間〜1時間半)

仏像や僧院跡が静かに佇む境内を通り抜けて寺院の裏手に回ると、うっそうとした森の小道へと入っていきます。大きなガジュマルの木が頭上を覆い、足元には木の根が複雑に張り出していて、自然の階段のよう。
湿った土の匂いや鳥の鳴き声に包まれながら、時折差し込む木漏れ日を頼りに進みます。やがて岩や木の根っこの多い道が続き、ところどころで岩をつかみながらよじ登るクライミング的な箇所も。慎重に足場を選びながら体力に合わせて休憩しました。視界が開けるたびに、シギリヤロックの全景が目に飛び込んできます。
シギリヤロックを一望する絶景

頂上に立つと、目の前にはシギリヤロックが真正面にそびえ、その背後から朝日がゆっくりと昇ってきます。
黄金色の光が岩肌を照らすと、刻一刻と色を変えながら輝き、まるで巨岩そのものが目覚めていくよう。眼下には緑豊かな森と水辺が広がり、遠くの山並みまで淡い朝もやに包まれています。
静かな空気の中で鳥の羽ばたきが響き、世界遺産の王宮跡や庭園までもが柔らかな光に浮かび上がるその景色は、息をのむほど幻想的でした。
朝日・夕暮れ時のおすすめタイミング

ピドゥランガラロックは、夜明け前に登れば、朝日に照らされるシギリヤロックを静かな森の中から眺められます。夕暮れも、黄金色に染まる岩山を見渡せるため、登山時間を計画する際には朝夕どちらかの時間帯に合わせると、よりドラマチックな体験ができます。
必要な装備と注意点

シギリヤロックとピドゥランガラロックは、どちらも登山の楽しさとスリルを味わえる岩山です。持っていくと安心な装備と注意点をピックアップしました。
歩きやすい靴
岩場や階段、根っこの多い道が続くため、滑りにくい靴が必須。本格的な登山靴やトレッキングシューズである必要はないものの、履き慣れたスニーカーがおすすめ
通気性のよい服装
汗をかきやすいので、速乾性のあるTシャツやパンツ
帽子・サングラス
直射日光を避けるため必須
薄手の羽織り
朝夕は冷えることがあるので、軽く羽織れる上着があると安心
日焼け止め
遮るものが少ない岩肌の上では強い日差しを浴びやすい
飲み水
500ml〜1L程度は必ず持参
入場料・チケット
シギリヤロック・ピドゥランガラロックともに入場料がかかる
休憩:急な岩場や階段があるため、無理せず休憩を取りながら登ることが安全で快適な登山のコツ
アクセスと移動手段
シギリヤ村にあるシギリヤロックとピドゥランガラロックを訪れるには、まず、スリランカ国内での移動手段を考える必要があります。私も現地で迷わないよう、事前に移動ルートを調べて計画しました。
コロンボやキャンディからの行き方
コロンボやキャンディからシギリヤ村までは、バスや電車、タクシーで移動します。コロンボからは直行の長距離バスもありますが、所要時間は約4〜5時間。キャンディからだと約2〜3時間でアクセスできるのでおすすめです。
ローカルバスの難しさ
現地のローカルバスは安くて便利ではあるものの、情報が少なく、乗り場や運行時間が複雑です。特に外国人旅行者には不慣れで、バス停の位置や停車場所がわかりにくいことも。また、混雑や急な運行変更の可能性もあり、時間の余裕を見て計画する必要があります。
安全・快適・自由度の高いタクシーチャーター
私の場合、空港に程近いリゾート都市・ニゴンボからシギリヤロックを経由し、コロンボまでの移動に4日間タクシーをチャーターしました。理由は単純で、安全・快適・時間に縛られず自由に行動できるからです。
途中、古都キャンディやダンブッラ石窟寺院、ポロンナルワの遺跡などの有名観光地に立ち寄ったり、地元で評判のレストランを教えてもらったりと、自由度の高い旅を満喫できました。
相場と費用の目安
相場は、日本語ガイドなしで1日あたり50〜70ドル(約7,500円〜10,500円)程度が目安。通常は運転手代と燃料代が含まれますが、日本語ガイド付きや、コロンボからシギリヤ・キャンディ・ヌワラエリヤなどの主要観光地への長距離送迎、山道を走るエリアや早朝深夜の移動では追加料金がかかる場合があります。
料金は利用時間、距離、人数、交渉内容、チャーター会社によって変動するため、具体的な日程と行き先を伝えて事前に見積もりを取ると安心です。料金はやや高めですが、安全と効率を考えれば納得の選択でした。
ライター
Ryoko
ひとり海外旅行と海外トレッキングを愛し、自然や文化に触れる旅をライフワークにするライター&エディター。猫と音楽にも目がなく、心惹かれる音や風景を文章で切り取るのが得意。国内外のフィールドで得た体験を、読者と共有することを楽しみにしている。