卵の殻は、家庭でよく出る生ごみのひとつ。実は家庭菜園で再利用できる優秀な素材ですが、量や使い方を誤ると、逆に野菜がうまく育たなくなってしまいます。今回は、筆者の実体験をもとに、卵の殻を肥料や堆肥として活用する3つの方法を注意点も含めて紹介します。よろしければ最後までご覧ください。
卵の殻は家庭菜園で役立つ!

卵の殻にはカルシウムをはじめとした微量要素が含まれており、土壌改良や植物の成長をサポートする作用があります。ここでは、卵の殻が家庭菜園で役立つ理由やメリットについて紹介します。
卵の殻には微量要素が豊富
卵の殻の主成分は炭酸カルシウムでできており、植物の根を伸ばし、細胞を丈夫にする役割があります。また、マグネシウム・リン・カリウム・鉄分などの微量要素も含まれており、これらは光合成や茎葉の成長に必要な栄養素です。
とくにトマト・ナス・ピーマンなどはカルシウム不足になると実が変形したり、尻腐れ病(果実の底の部分が黒く変色してしまう病気)が出やすくなります。
筆者は過去に、成長の遅い野菜に窒素を追肥しましたが変化がなく、マグネシウムの肥料を株の根元に与えて回復した経験があります。野菜の調子が良くない時は、微量要素を追加してみるのもよいでしょう。
家庭菜園にも環境に優しい
卵はコンビニやスーパーなどで売っているため、手軽に入手可能。肥料を購入する必要がなく、お財布にやさしい栽培が叶います。また毎日の料理で出る卵の殻を再利用することで、ごみの量を減らし環境への負担を減らせます。
小さな畑やプランター栽培なら、家庭で出る卵の殻の量でも十分に取り入れられるので、家庭菜園をエコに楽しむ第一歩になりますよ。
方法① 卵の殻を粉砕して土に混ぜる

卵の殻を家庭菜園で利用する際に一番簡単なのは、細かく砕き肥料として土に混ぜる方法です。ここでは粉砕する手順と気をつけたいポイントをお伝えします。
手順
- 卵の殻をしっかり洗う
- 殻を乾燥させる
※日光に当てて天日干ししたり、オーブンで乾燥(180℃で15分)させて殺菌する
※少量ならフライパンで炒ってもOK - 乾いた殻を砕く
※手で細かくする場合は、怪我防止のため手袋をはめて行う
※綿棒でたたくいて砕く場合は、ジップロックなどのできるだけ分厚い袋に入れて行う。(フードプロセッサーを使ってもOK) - 土に混ぜて使用する
分量の目安と活用のポイント
使用する分量の目安は、10Lの土が入るプランター1つに対して卵の殻は50g(約10個分)です。多く入れ過ぎると土がアルカリ性に偏って植物が育たなくなってしまうので、可能であれば「土壌酸度(pH)計」を購入してpHを図りながら混ぜるのがおすすめです。
鉢植えのように土の量が限られている環境では、少量でもpHが大きく変わりやすいため、入れる量にはとくに注意しましょう。
また、1㎝程度の大きさに砕いて、苗の根元を囲むようにして撒いておくと、ナメクジやイモムシが嫌がり、害虫を忌避する効果があるといわれています。筆者が実施したところ、害虫被害は激減しましたが完璧になくなるわけではないので、補助的な手段として考えておくとよいでしょう。
注意点
- 砕く際に細かい粉が舞いやすいので、マスクを着用すると安心です。
方法② 液肥(酢酸カルシウム液)を作って使う

カルシウムを効果的に野菜に与えるには、卵の殻とお酢を反応させて作る「酢酸カルシウム液」がおすすめ。
卵の殻とお酢の反応の仕組み
卵の殻をお酢に入れると、すぐにシュワシュワと泡が出はじめます。炭酸カルシウムが酢に含まれる酢酸と反応して酢酸カルシウムという形に変わり、水に溶けやすくなるためです。
粉のままでは土に混ぜても分解に時間がかかりますが、液体にすることで野菜が効率よくカルシウムを吸収できるようになります。
作り方と使い方
酢酸カルシウム液のくわしい作り方はこちらです。ぜひチャレンジしてくださいね。
・卵の殻 3個分
・お酢 200ml
【必要な道具】
・500ml以上のペットボトル
・ザルまたは排水溝ネット(できあがった卵の殻を濾せるもの)
・ボウル
- 【作り方】
卵の殻を乾燥させる(前述) - 1.を細かく砕いて、ペットボトルに入れる
- お酢をペットボトルに入れて蓋を閉める
※蓋をきつく締めると破裂する可能性があるため、緩めにする。 - 屋外に一晩置き、発砲が落ち着くまで待つ
- 4.の中身をザルなどで濾しながら液体をボウルへ入れて、液体をペットボトルに戻してから冷蔵庫で保存する
作った原液は必ず水で薄めてから使用しましょう。目安は原液10mlに対して水1L(100倍)です。
少しずつ様子を見たい人は原液3mlに水1L(300倍)程度に希釈してから与えるとよいでしょう。使用頻度は週に1回程度で行います。
注意点
- 原液のまま使うと酸が強すぎて根を痛めたり、葉焼けの原因になります。
- 作る際にはアルコールや合成酢ではなく、穀物酢や米酢を選びましょう。
- 液肥は保存中に傷みやすいため、作り置きする場合は冷暗所で管理し、できるだけ1〜2か月以内に使い切るようにしましょう。
方法③ コンポストに入れて堆肥化する

最後は、殻をコンポストに入れる方法です。今までの方法に比べると手間が少ないため「あまり時間をかけたくない」「殻の量が多すぎて困っている」という人におすすめです。
手順とポイント
殻を洗って乾燥させた後、砕いてコンポストへ入れます。ポイントは、手で簡単に細かく砕いてから投入すること。分解がスムーズになり堆肥化が進みやすくなります。
卵の殻をそのままコンポストへ入れると、分解が遅くなり後で大きな殻が土に残りやすくなります。また、調理後に出た卵の殻をまとめて乾燥させ、砕いてからコンポストに加えると効率よく処理できますよ。
メリット
卵の殻をコンポストに混ぜれば、生ごみの削減につながります。しかも、ゆっくり分解されながら土にカルシウムを供給してくれるため、長期的な土壌改良材としての効果も期待できます。
市販の石灰と違って急激に土の性質を変えることは少ないので、家庭菜園初心者にもすぐに取り入れられる方法です。
注意点
- 重要なポイントは、卵の殻は必ず洗浄して乾燥させてから入れること。何もせずにそのまま入れるとカビが生えたり、臭いや害虫の発生源になります
- 堆肥化するためは、卵の殻のほかに有機物や水、空気などが必要です。コンポストに野菜くずや落ち葉などの有機物と、微生物がいる米ぬかや土などをバランスよく混ぜることも大切です
- 堆肥を作る際に臭いが出たり、虫が発生しやすくなります。とくに集合住宅の場合はベランダなど限られたスペースで扱うため、隣家に迷惑をかけないようコンポストの設置場所はよく検討しましょう
卵の殻利用時の注意点

卵の殻は家庭菜園で活用するととても便利ですが、使い方を間違えると逆効果になる場合があります。最後に注意点をまとめたので参考にしてください。
衛生管理
卵の殻は必ず洗浄してから乾燥・殺菌し、カビや臭いを予防しましょう。量が多くてフライパンやオーブンが使えない場合は、晴れの日に日干しするのも有効です。
入れすぎには注意
卵の殻を多く入れると土がアルカリ性に偏ってしまい、野菜がうまく育たなくなってしまいます。土壌酸度計を使うか、様子を見ながら少量ずつ使用することが大切です。
害虫忌避は効果あるが過信しない
卵の殻を砕いて害虫被害を予防する方法もありますが、効果としては限定的です。完全な防除策としては過信しないようにしましょう。
粉砕時はマスクを着用し、換気のよい場所で作業を
卵の殻を粉砕すると、細かい粉塵が舞い上がりやすく、吸い込むと体に悪影響を及ぼすおそれがあります。作業するときは必ずマスクを着用し、屋外や風通しの良い場所で行うようにしましょう。
保管は丈夫な袋がおすすめ
卵の殻は砕くととても鋭利になるので、すぐに袋が破れないようお米の袋など丈夫なものに入れて保存しましょう。また、湿度が高いとカビが生えやすくなるため、通気性のある土嚢袋もおすすめです。
参考サイト:
農家web
現代農業WEB
チバニアン兼業農学校
ライター
akari
母子キャンプ歴7年。アウトドアを楽しむシングルマザーです。大人一人でも子供とキャンプを楽しめるコツやおいしいキャンプ飯のレシピをご紹介します。薪ストーブinのおこもり冬キャンが大好き。