子どもと一緒にアウトドアを楽しみたいのに、思うようにいかなかった経験はありませんか?小さい子との外出はただでさえ大変。今回は、現役保育士であり親子向け自然体験を15年以上開催している筆者が、声かけや関わり方のヒントをご紹介します。
年代別・子どもの傾向と心がけたい大人の対応
子どもはそれぞれ個性があり、性格や育ちのペースはみんな違うものですが、それでも年代によって共通する行動の傾向があります。
子どもが思うように動いてくれないときや泣き出してしまったとき、どのように接すればよかったのか、悩んだ経験は親なら誰にでもあるはず。アウトドアで、おおよその年代別に起こりうる子どもの行動をピックアップして、大人の対応のコツを紹介していきます。
しかし、これが正解というわけでもありません。子どもが10人、親が10人いたら、親子の組み合わせは100とおり。すべての親子に通用する魔法のような技があるわけではないのです。それでも、いつか役立つヒントになるかもしれないので、どうぞご覧ください。
よちよち歩き始めた頃(1~2歳)
歩けるようになった子どもは、歩くこと自体が楽しそう。未舗装の道のデコボコは、街中のアスファルトで覆われた平らな道とは違い、子どもにとっては非日常かもしれません。上り坂をがんばって歩いていると思ったら、くるりと方向転換して下って行ってしまうことも。なかなか目的地にたどり着けないと大変です。
かといって、目的地までベビーキャリアで大人が背負っていく習慣にも落とし穴があります。いつもベビーキャリアに乗せられているため、促されても歩こうとしなくなってしまった子どもの姿を見たことがあります。
逆に、どんなときでも子どものペースに合わせていたら、大人のほうにストレスがたまるでしょう。結局は、「歩くの楽しいね」「ちょっと疲れちゃったね」と共感しながら、好きなように歩かせたり、抱っこしてみたりを繰り返すしかありません。何ごともほどほど。子どもと自分の気持ちの折り合いをつけながらお互いに楽しもうと割り切るのがおすすめです。
こうと決めたら譲らない頃(2~3歳)
水たまりを棒でかき回すのが楽しくて…、どんぐりを拾うことにこだわり続けて…、チョウを捕まえるまでは納得できず…大人が「そろそろ行こう」と声かけしても動こうとしない。大人の思い通りに動いてくれないこの年代の子どもには、よくある光景だと思います。
大人も一緒に楽しめるなら満足するまでお付き合いするのが理想的でしょう。しかし、目的地まで行ってやりたいことがあるなら、ある程度おつき合いしたあと、子どもに気持ちを切り替えてほしいですよね。
ベストな声かけは状況によっても違いますが、その子が好きなものの力を借りて「ごはん食べよう」「あっちで虫を探そう」などと誘うと進んでくれることもあります。「あと3回やったらね」と区切りを提案したり、「これを運んでくれない?」と頼ってみたり「もう少しでゴール」と見通しを伝えたりするのもいいかもしれません。
子どもが自我を持ち始め親子で折り合いをつけるのが難しいこの時期は、大人のほうが先に譲歩すると、子どもも譲ってくれることがあります。どうしても妥協点が見つからない場合は、計画が変わっても楽しめる心の余裕を大人がもてるといいですね。
自分でやってみたい気持ちが膨らむ頃(3~5歳)
危ないことでも、時間がかかることでも、自分でやりたい!できるはずだから、大人に手伝ってほしくない。そんな強い意志をもった子どもの姿は、もっと小さい頃からも見られます。
自分でやりたい、その意欲はとても貴重です。物や環境は大人が与えることができますが、意欲は本人の内側から湧き出るもの。子どもの「やりたい」に対して「ダメ」と言い続けたり、思いに気づかなかったりしては、せっかくの意欲をしぼませてしまい、成長のチャンスを逃してしまいます。
でも、大人が子どもの安全を確保できないと感じたときは、無理をさせるべきではないでしょう。やりたい気持ちを尊重したうえで、できない理由を丁寧に言葉を選んで説明すれば、子どもにきちんと伝わるはずです。
逆に、やらせたいのに子どもが尻込みする場合もあります。怖がる気持ちは、自分の身を守るために大切な感情です。無理強いすると、その先ずっと苦手になってしまうかもしれません。いつ試してみるのか、挑戦のタイミングは子ども自身に選ばせてあげたいですよね。
知的好奇心が高まる頃(5歳~)
年長さんくらいになると、「これ、なんていうの?」と生き物の種類に興味をもったり、「どうしてこうなるの?」と自然の仕組みに興味を示したりする子がいます。
大人もわからないようだったら、一緒に図鑑や本をめくって調べるのもおすすめです。スマホを使って、写真から瞬時に判別してくれるAI機能も利用できます。いづれにせよ、親子で一緒に調べておもしろかった、という経験こそが貴重ではないでしょうか。
子どもの判断が間違っていても、間違いに気づくのは大人になってからでもよし。自信に満ちた子どもは、大人が間違いを指摘したところで、自分のほうが正しいと主張するかもしれません。好奇心と探求心は、これから先その子の人生をずっとおもしろくしてくれるでしょう。思う存分、熱中できる環境を整えてあげたいですね。
子どもも大人も充実したフィールド体験にするコツ
親子でのフィールド体験を充実させるためには、事前の準備も欠かせません。子どもが不機嫌でどうしようもない場合には、体調が崩れる前兆ということもあります。おでかけ前には生活リズムを整えて、無理のない計画にすることも大切でしょう。
空腹や寒さ、疲れ、眠気による不快感があると、子どもは楽しむどころではなくなります。身体も心も満たされたうえで非日常を味わい、新しい経験や発見を重ねられるといいですね。
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三児の母。