今起きている山の環境問題とは?
山では環境に影響を及ぼす問題が起きています。その中でも、登山者が増えたことによって起きているトイレ問題、ゴミ問題、登山道の荒廃について紹介します。
山の問題①トイレ問題
山でのし尿処理が問題になっています。
昔はし尿は土の中の微生物が分解してくれるとされていましたが、現代は山のオーバーユースにより、山の分解能力を超えるし尿が放流され、環境に悪影響を及ぼしているのです。
トイレがあるかないかが問題ではなく、どう処理するかで影響が変わります。環境に優しいバイオトイレの設置や登山者自身によるし尿の持ち帰りなど、対策が必要です。
山の問題②ゴミ問題
山にはたくさんのゴミが捨てられていて、自然破壊を引き起こす重大な問題になっています。
小さなゴミのポイ捨てや食べ残しの生ゴミが積み重なり環境に悪影響を与えているのです。
しかし、登山者のポイ捨てゴミだけが多いのではありません。違法業者による、ゴミの不法投棄も深刻な問題で、家電製品やパソコン、さらに産業廃棄物も山に捨てられているのです。
このように様々なゴミが捨てられることにより、土に有害物質が流れ出したり、動物が誤って食べてしまったり、生態系にさまざまな影響を及ぼします。
富士山のゴミ・トイレ問題
富士山は、ユネスコ世界自然遺産として登録されるため準備が進められていました。
しかし、観光客が多い富士山には、ゴミの投棄問題や登山者のトイレマナーが悪いなどの問題がありました。
結果、自然遺産としての登録は実現せず、世界文化遺産として登録されることになりました。
山の問題③登山道の荒廃
アウトドア人口が増加したことにより、登山道の荒廃が問題になっています。
原因がオーバーユースです。登山道が荒れることで歩きにくいからと登山道を外して歩く登山者が増えて土壌が踏みつけられ、登山道の荒廃はどんどん進みます。
登山できなくなるだけじゃない?山の環境はなぜ大切か
登山者にとって大切なフィールドを守るために山の環境問題を解決する必要があります。山の環境を守ることは私たちの身近な生活を守ることにも繋がるのです。
放っておくとどうなる?山の環境問題が与える影響
たとえば、山の環境問題が与える影響に、「マイクロプラスチック問題」があります。
山に捨てられたペットボトルやビニール袋などのプラスチックのごみが川から海へと流れます。だんだんと細かくなり、マイクロプラスチックになるのです。
それを海の生物が摂取してしまうことにより、生態系に影響を与えます。
海のマイクロプラスチック問題と山の環境問題、一見関係なさそうにみえますが、山から川、そして海、と環境問題も繋がっています。
魚やお米が食べられなくなる?生活への影響
山の土に含まれる栄養成分は河川を通して海へ至り、魚類の餌となる海中の微生物やプランクトンを育てます。
山の保水力が健全なら、大雨が振っても土砂が河川や海に大量に流入して漁業を荒らすこともありません。
山の環境が悪化すれば、海の生態系にも影響を及ぼし、魚介類の種類が減少、漁獲量にも影響します。私たちが食べる魚の種類が少なくなってしまうのです。
また、新潟や福島など、米どころでは積もった雪を山が天然のダムのように保水し、田んぼを潤します。山が保水力を失えば、麓の田畑での農作物の出来にも関わってきます。
山の環境は農業にも大きく影響してくるのです。
山の環境問題のために私たちにできること
山の環境を守るために、山に入るときに必要なマナーがあります。一人一人が行動することで、山の環境問題を減らすことができるのです。
そこで、私たちが山でできるマナーやルールについて紹介します。
私たちにできること①ゴミは持ち帰る
ゴミを減らすことが山の環境を守るために重要です。登山中に出たゴミは山にポイ捨てせず、必ず自分で持ち帰ります。
小さな包装などは意図せずポケットから落ちてしまうこともあるので、最初から剥いてナルゲンやジップロックにまとめて詰めてみるなど、工夫をしてみましょう。
さらに、ごはんの残り汁や飲料の飲み残しを土に捨てるのも、成分によっては土壌を汚染し、環境破壊に繋がることがあるため注意が必要です。
私たちにできること②携帯トイレを持参する
携帯トイレを持参することで、トイレがないときに対処できるだけでなく、整備されていないトイレから山に垂れ流しになることを防ぐことができます。
ツエルトとセットで携帯していれば、簡易トイレが作れるので安心感にもつながります。
携帯トイレを使用したとき重要になるのが、使用後のゴミです。使用した携帯トイレは山に捨てず、必ず持ち帰るようにしましょう。
私たちにできること③登山道を外さないで歩く
高山植物や動物を守るためにも、決められた登山コースを歩きます。自然への影響を最低限にし、山の環境を守る配慮が必要です。
一度荒れてしまった登山道は元に戻るまで長い時間がかかります。
荒れて滑りやすかったり傾斜がきつかったりする場合でも、登山道を踏み外さないように、体力やテクニックを身につけましょう。
私たちにできること④登山ルールを守る
カントリーコードを調べてみよう
美しい山を守るために、山域によってはカントリーコードとしてルールや心構えが定められています。
一人一人が登山前にカントリーコードを確認し、ルールを守って登山することで、自然を守ることになるのです。
カントリーコードには山域それぞれの特徴が盛り込まれているので、その山域の魅力を確認することもできますよ。
例として、富士山と小笠原のカントリーコードをご紹介します。
富士山のカントリーコード
富士山は10のカントリーコードが定められています。
- 美しい富士山を後世に引き継ぐ
- ゴミは絶対捨てずに、すべて持ち帰る
- ゴミになるようなものを最初から持っていかない
- 登山道をはずれて歩かない
- 登頂記念の落書きをしない
- 車道外へ車両等を乗り入れない
- 溶岩樹型等の特殊地形を壊さない
- 駐車場ではアイドリングをしない
- 動植物を採らない
- トイレなど公共施設をきれいに使う
参照:やまなし観光推進機構
小笠原カントリーコード
小笠原には、自然と共生するために10のカントリーコードか定められています。
- 貴重な小笠原を後世に引き継ぐ
- ゴミは絶対に捨てずに、すべて持ち帰る
- 歩道をはずれて歩かない
- 動植物は採らない、持ち込まない、持ち帰らない
- 動植物に気配りしながらウォッチングを楽しむ
- サンゴ礁等の特殊地形を壊さない
- 来島記念などの落書きをしない
- 全島キャンプ禁止となっているので、キャンプしない
- 移動は、できるだけ自分のエネルギーを使う
- 水は大切にし、トイレなど公共施設はきれいに使う
参照:小笠原村
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。