日本の森林や野山で育まれる植物の恵み「和精油」は、心と体にやさしくなじむ穏やかな香りが魅力です。ヒノキやスギ、クロモジのぬくもり、ユズやハッカの爽やかさなど、どれも自然の中にいるような安らぎを届けてくれます。この記事では、数ある和精油の中から日々の暮らしに取り入れやすい5つを厳選し、それぞれの特徴と香りの楽しみ方を紹介します。

日本の自然の恵み「和精油」とは?

和精油

和精油とは、日本で採取・蒸留された植物から抽出された精油のことです。原料には、ヒノキやスギ、クロモジ、ヒバなどの樹木のほか、ユズやレモン、ハッカといった果実やハーブも使われています。

香りは、繊細でやさしく、どこか懐かしさを感じさせるものばかり。昔から日本人の暮らしのそばにあった植物だからこそ、心にもすっとなじみ、安心感を与えてくれます。

また、和精油は、地産地消や森林保全、地域活性といったサステナブルな観点からも注目されています。たとえば、間伐材を活かした精油づくりや地域の植物を原料にした町おこしの取り組みなど、その背景には長い歴史や自然を大切にする想いがあります。

和精油は、香りを楽しむだけでなく、人と自然、そして地域社会とのつながりを育んでくれる存在なのです。

和精油のある暮らし。選ぶ・使う・楽しむコツ

和精油

和精油のある暮らしは、まずは自分に合う香りをみつけることからはじまります。どんなシーンで使うかをイメージしておくと選びやすいでしょう。ここでは、香りの選び方や使い方、心地よく取り入れるためのポイントを紹介します。

その日の気分や季節で香りを選ぶ

香りには、気持ちを前向きに整え、ふっと心をゆるめる不思議な力があります。 たとえば、穏やかに夜の時間を過ごしたいときには、ヒノキやスギのような森を思わせる香りを。朝のはじまりや暑さが続く日には、ユズやハッカのような澄んだ香りが気分を軽やかにしてくれるでしょう。

日本の四季とともに、香りを選ぶひとときー。それも和精油ならではの楽しみ方です。

ディフューザーだけじゃない、香りの使い道いろいろ

和精油は、ディフューザーで香りを楽しむだけでなく、生活のさまざまなシーンで活用できます。

たとえば、精製水と混ぜてルームスプレーにすれば、お部屋全体はもちろん、クッションやカーテンにもやさしい香りが広がり、暮らしの空間を心地よく整えられます。木々の香りは、森林浴をしているような清々しさを感じられるでしょう。

また、お風呂に数滴たらしてゆったりと湯船に浸かれば、心身ともにリラックスできる癒しの時間に。お気に入りの植物オイルとブレンドするのもおすすめです。

わたしは、1日の始まりを気持ちよく迎えるため、ふき掃除に活用しています。バケツに一滴垂らして床を拭いたり、キッチンやリビングの拭き掃除に使ったりすると、家中に気持ち良い香りが広がり、気持ちまで前向きに整っていくのを感じます。

心地よく香りと付き合うために

精油の力をより心地よく感じるには、「ほんの少し」がちょうどいいことも。香りが強すぎると感じたら、アロマストーンやコットンに1滴だけ垂らすなど、控えめに使うのもおすすめです。

また、精油は高濃度の天然成分なので、肌に直接つけるときは必ず希釈をしましょう。正しい使用方法を守ることも、香りと上手に付き合っていく上では欠かせません。

深呼吸したくなる自然の香り。心と体をほぐす和精油5選

和精油

和精油とひとことでいっても、香りの個性はさまざま。日本の自然が育んだ豊かな香りがそろいます。ここでは、日常の暮らしに取り入れやすく、手軽に楽しめる5つの和精油を紹介します。

ヒノキ|深呼吸したくなるような、やさしい木のぬくもり

古くから日本の暮らしに根づいてきたヒノキは、神社仏閣の建材や浴槽などにも使われてきた、日本人にとって馴染み深い樹木です。

精油の香りは、新築の家に足を踏み入れたときや、ヒノキ風呂に浸かったときのような、清らかで落ち着いた空気を感じさせます。どこか懐かしく、自然と心がほどける香りは、気分をリセットしたいときにぴったりです。

和の香りを代表するヒノキの精油は、親しみやすく、毎日の暮らしに寄り添いながらやすらぎを与えてくれます。

香りの特徴
・木部の精油は、ほんのり甘く、やさしい木の香り
・深い森に包まれるような穏やかさが魅力

おすすめの使い方・シーン
・お風呂に数滴垂らして、ヒノキ風呂を感じるバスタイムに
・就寝前、ディフューザーに入れて心をゆるめたいときに

スギ|深い緑に包まれ、静かに広がる清らかさ

スギは古くから日本の山々に自生し、建材や暮らしの道具としても親しまれてきた代表的な樹木です。

精油は、針葉樹ならではの清々しさを感じさせてくれる香り。森の奥深くに分け入ったような、研ぎ澄まされた感覚に包まれます。

香りはヒノキと比べるとややシャープな印象。清浄感のある香り立ちは、気持ちを切り替えたいときや、空間をすっきりと整えたいときにもぴったりです。

日本人にとって馴染み深いスギですが、精油として香りを取り入れることで、目に映る緑とはまた違った、新たな魅力を発見できるでしょう。

香りの特徴
・針葉樹ならではの清らかさとシャープな香り
・森の中にいるような、静かで落ち着いた印象

おすすめの使い方・シーン
・玄関やリビング、寝室の空気をリフレッシュしたいときに
・朝のスタートや気持ちを切り替えたいタイミングに

クロモジ|凛とした美しさが漂う、希少な香り

クロモジは、日本各地の山野に自生するクスノキ科の樹木。清々しさの中にほんのりと甘さが重なる、上品で奥ゆかしい香りがします。精油は枝や葉からわずかしか採れず、とても希少です。

気分を切り替えたいときや、ゆったりとしたひとときに。ディフューザーやアロマストーンに1〜2滴垂らすだけで、やさしい香りが空間を包み、落ち着いた雰囲気をつくります。

単体でも十分に魅力的ですが、柑橘系やウッディ系の精油と組み合わせることで香りに奥行きが生まれ、より豊かに楽しめます。

香りの特徴
・清涼感と甘さをあわせ持つ、上品で繊細な香り
・凛とした中にやわらかさがあり、奥ゆかしい印象

おすすめの使い方・シーン
・アロマストーンに数滴垂らして、ゆったり過ごすひとときに
・柑橘系やウッディ系とブレンドして

ハッカ|澄みわたる清涼感で、心と体をリフレッシュ

ハッカの精油は、古くから日本の暮らしに寄り添ってきた香りです。なかでも、北海道・北見で栽培される和種ハッカは、高品質なことで知られています。ひんやりとした清涼感のある香りは、心地よい爽快さを与えてくれます。

気分をすっきりさせたいときや、蒸し暑い季節のリフレッシュにも。また、メントール成分には虫が嫌う性質があるため、精油を使って手作りの虫除けスプレーを楽しむのもおすすめです。

夏の暮らしにひとしずく。ハッカ油のクールダウン&虫除け活用術
夏の暮らしにひとしずく。ハッカ油のクールダウン&虫除け活用術

手頃な価格で手に入りやすく、暮らしの中で気軽に取り入れられる精油です。

 香りの特徴
・キリッと爽やかで、清涼感あふれる香り
・頭がすっきりする爽快さ

おすすめの使い方・シーン
・スプレーにして、蒸し暑い日のリフレッシュに
・虫除けの手作りスプレーに

ユズ|清々しくもまろやかに。どこか懐かしい和の柑橘

日本人にとってなじみ深い果実「ユズ」。精油は、主に果皮から水蒸気蒸留によって抽出されます。柑橘のみずみずしさの中に、和精油ならではの穏やかな甘さが重なり、どこか懐かしさを感じさせる香りです。

湯船に数滴垂らせば、まるで冬至のゆず湯に浸かっているような、やわらかな匂いに包まれます。自律神経のバランスを整えたいときや気持ちをすっきりと整えたいとき、緊張をほぐしてリラックスしたいときにもぴったりです。

 香りの特徴
・みずみずしく、まろやかな甘さを感じる柑橘の香り
・どこか懐かしく、心がほぐれるようなやさしさ

おすすめの使い方・シーン
・お風呂に垂らして、ゆず湯のような香りを楽しむときに
・前向きに一日を始めたいときにディフューザーで香らせて

日本の自然が持つやさしさを、香りを通じて感じられる和精油は、難しい知識や特別な道具がなくても、ひとしずくの香りが暮らしや心に静かな変化をもたらします。
和精油は、地産地消や森林保全など、自然や地域を大切にする取り組みのもとで作られているため、香りを選ぶことそのものが、サステナブルな暮らしへの小さな一歩につながります。

AYA

ライター

AYA

静岡県出身。海と山に囲まれた自然豊かな環境で育ち、結婚後に、タイ・バンコクへ移住。病気がきっかけで、ヴィーガンのライフスタイルに目覚める。現在は、2児の母として子育てに奮闘しながら、人と環境にやさしいサステナブルな暮らしを実践中。自身の経験をもとに、ヴィーガン、環境問題、SDGsについて情報を発信している。