お米を作っていない時期の稲田を活用した田んぼキャンプ。里山の環境保全や、地域の活性化に貢献できるめったにない機会です。本記事では、田んぼキャンプの魅力や、あると便利なもの、そしておすすめスポットを紹介します。稲刈りが終わった10〜4月の過ごしやすい時期に、里山で素敵なひとときを過ごしてみませんか?

なぜ田んぼがキャンプ場に?

田んぼ キャンプ

人の手によって美しい景観や生態系が守られている田んぼ。使わずに放置しておくと荒れてしまいますが、キャンプ場として活用することで、人やお金が流入します。田んぼキャンプは、アウトドアを楽しめるだけでなく、地域の人々に育まれてきた里山を守る活動にもなります。

休耕田を有効活用できる

農家の高齢化や後継者不足により、休耕田が増えています。とくに棚田は、機械が入りにくく作業の手間がかかるため、耕作放棄地が目立つようになってきました。

そのような里山の景観を守るために始まった取り組みのひとつが、田んぼキャンプです。お米を作っていない田んぼをキャンプ場として整備すれば、地元の収入になります。さらに、キャンプをきっかけに地域に訪れる人が増えれば、地元経済の活性化にもつながります。

日本の原風景ともいえる里山の景色。多くの人にとって、親しみ深い風景ではないでしょうか。環境保全と地域の活性化、その両方をかなえられるのが、休耕田の有効活用です。

里山の暮らしに親しめる

田んぼキャンプを行っている団体によっては、地元の人々との交流や、地域の文化にふれられるプログラムを実施しています。

自然や伝統と結びつきの強い里山の暮らしにふれるのは、都市部に暮らす人にとっては貴重な体験となるでしょう。その地域の歴史や、人々の想いを知る機会でもあります。

子どもにとっては、「お米ってどうやって作るの?」「田んぼにはどんな生き物がいるの?」といった疑問に出会える貴重な学びの場。自然と人とのつながりを大切に思う心が育ちます。

田んぼキャンプを楽しむためのTips

田んぼ キャンプ

田んぼキャンプを楽しむコツを紹介します。いつものキャンプサイトとの違いをふまえて、準備万端で田んぼキャンプに出かけましょう!

田んぼに適した持ち物ガイド

田んぼキャンプを快適に過ごすためには、服装や持ち物の準備が大切です。通常のキャンプギアにプラスして、田んぼで必要なのは泥への対策。またキャンプ専用設備ではないということをふまえ、あると便利なものを紹介します。

あると便利なもの
  • 長靴・防水シューズ(泥に強い靴)
  • 雨具・着替え(泥汚れ対策)
  • ふき取りタイプの食器洗い洗剤、ウエス(使い古したタオルなど)
  • カート(必要に応じて)
  • 簡易トイレ(必要に応じて)

普段は稲作に使われている田んぼは、キャンプ専用の場所と比べ、水はけがよくないことがあります。地面が柔らかいこともあるで、泥対策は必須です。長靴や防水シューズを用意しておきましょう。

また、場所によっては洗い場で家庭用洗剤を使用できないことがあるため、水のいらないふき取りタイプの食器洗い洗剤やウエスがあると役立ちます。

キャンプ場と違い、公民館などがキャンプ客のトイレとして貸し出されるケースもあります。テントからの距離が遠くなることがあるので、簡易トイレがあると便利です。

田んぼ周辺の道は、車が入れないことがあります。キャンプサイトまで乗り入れできないところでは、荷物を運ぶカートなどがあると重宝しますよ

田んぼに泊まる際のマナー

田んぼキャンプでは、周辺環境への配慮が欠かせません。休耕期間が終われば、また稲作に使われる場所だということを意識しましょう

食べ残しやゴミは必ず持ち帰り、「来たときよりも美しく」生産者へ返すのが基本です。撤収後、食べられるものが残っていると、野生動物を寄せつけて農地が荒らされてしまうおそれがあります。

空き缶やビニール袋などの金属・プラスチック類が田んぼの中に残されていると、トラクターなどの機械の故障や、土壌汚染につながります。

また、一般的なキャンプ場と比較して、民家が近いことが多いのも田んぼキャンプならでは。生活している人々に配慮し、騒音には注意しましょう

周辺の田んぼは大切な農地です。立ち入り禁止のエリアには入らないようにしてください

もともと田んぼキャンプは景観保全を目的のひとつとした取り組み。自然やそこに暮らす人々への思いやりを持って、未来の里山づくりに楽しみながら貢献していきましょう。

予約前のチェックポイント

田んぼキャンプに参加する際は、キャンプ場の環境や設備を事前に確認しておくと安心です。通年営業、あるいは冬季のみ

閉鎖していることが多い一般的なキャンプ場とは違い、期間が限られている点に注意です。

申し込み前に確認したいこと
  • キャンプ場のオープン期間
  • 周辺設備(トイレ・水場など)
  • 貸出可能な備品(テント・調理器具など)
  • アクセス(駐車場の有無、場内の道幅・舗装されているかなど)
  • 体験プログラム

田んぼキャンプの会場には、実際に稲作に使われている田んぼも多くあります。キャンプで使用できるのは、稲刈り後の10月頃から、田植え前の4月頃までが中心。参加前にスケジュールをチェックしておきましょう。

キャンプ場と違い、キャンパー専用のトイレや水場がなく、公民館・神社などの設備を貸出しているケースもあります。事前にチェックして、持ちものを相応に備えましょう。

車でアクセスする場合、田んぼ周辺は細い道が多いため、マイカーで通れるかを確認しておくと慌てずに済みます。駐車場情報の確認もお忘れなく!

おすすめの田んぼキャンプスポット4選

全国から、田んぼキャンプを体験できるおすすめスポットを紹介します。特産物や眺望、アクセスのしやすさなど、それぞれの地域の特色あるスポットにぜひ出かけてみてください。

①棚田CAMP(長野県上田市)

田んぼ キャンプ

長野県上田市の稲倉の棚田は、「棚田CAMP」として農閑期だけ開放されています。日中、目の前に広がるのは、北アルプス連峰の雄大な景色と、棚田百選に選ばれた美しい風景。夜には満天の星に包まれ、まるで自然と一体になったような特別な時間を過ごせます。

棚田キャンプへの参加特典として、天日干しで仕上げられた棚田米や信州ハム、棚田石鹸などが提供されます。現地でしか手に入らないものが多いので、旅のお土産にもよいですね。

薪割り体験・ネイチャーゲーム・サウナサロン・棚田BARなど、大人も子どもも楽しめる体験プログラムが豊富。とくに体を使って自然とふれあうネイチャーゲームは子どもにとって忘れられない学びの時間になるでしょう。

テントや寝袋など、キャンプ必需品はほとんどがレンタル可能。手ぶらに近い感覚で参加できるので、初心者でも気軽に参加できます。

名称 棚田CAMP
住所・アクセス 長野県上田市殿城2889-1
上信越自動車道の東部湯の丸ICから15分
上田菅平ICから10分
問い合わせ先 E-mail:info@tanada-camp.com
TEL:090-4458-9756
公式サイト 棚田CAMP

②田んぼ de camp(大阪府豊中市)

田んぼ de camp」は、都市近郊型のキャンプ・バーベキュー施設です。大阪駅から車で約20分、阪急岡町駅・曽根駅から徒歩約20分とアクセスは抜群日帰りでも気軽に行ける距離です。休耕田を整備した開放的な雰囲気で、心地よい風を感じながら、キャンプやバーベキューを楽しめますよ。

必要な道具・機材はすべてそろっており、手ぶらで気軽に参加できるのもうれしいポイント。徒歩約1分の場所には大型ディスカウントストア「ドン・キホーテ」があるので、買い出しに便利です。

近場で楽しみたい人や公共交通機関を使う人、気軽にアウトドアをしたい人にぴったりのスポットです。

名称 田んぼ de camp
住所・アクセス 大阪府豊中市勝部1丁目5−31 渡辺ビル
阪急岡町駅・曽根駅から徒歩約20分
問い合わせ先 TEL:06-6840-0294
公式サイト 田んぼ de camp

③タカチホ棚田キャンプ(宮崎県高千穂町)

田んぼ キャンプ

タカチホ棚田キャンプ」は、日本棚田百選に選ばれた美しい棚田を使ったキャンプ場です。この施設の特徴は、サブスクリプションを導入していること。月額利用料を払えば、農閑期の11〜4月の間で、利用者が選択した期間中は何度でもキャンプを楽しめるユニークなスタイルです。

棚田を耕作している生産者など、地域の人と交流できるイベントもあります。焚き火を囲んで地域の歴史や暮らしにふれるひとときは、きっと忘れられない体験になるでしょう。

施設の利用による収益の一部は、地元自治会や生産者に寄付され、棚田や地域の環境保全に役立てられています。世界農業遺産やユネスコエコパークにも認定された棚田に泊まれる貴重なチャンス。環境保全に貢献しつつ、絶景を堪能できますよ。

名称 タカチホ棚田キャンプ
住所・アクセス 宮崎県高千穂町 大平地区
問い合わせ先 E-mail:trailhead@kntf.jp
公式サイト タカチホ棚田キャンプ

④美里棚田キャンプ(熊本県美里町)

田んぼ キャンプ

日本の原風景として、観光客や写真家に人気の熊本県美里町にあるのが「美里棚田キャンプ」。

美里町の棚田のうち4つは、農林水産省に「つなぐ棚田遺産」として認定されており、景観の維持や環境保全への取り組みなどが評価されています。キャンプ場として利用できるのは、下福良(しもふくら)と白石野(しらいしの)の棚田で、いずれも「つなぐ棚田遺産」に登録されています。

利用者には、地域で収穫された棚田米2kgが提供されるので、農村の恵みを味わえますよ。

キャンプ場としての受け入れは、10〜12月の土曜日限定で、下福良で1日2組、白石野で1日5組と少なめ。気になる人は、早めの予約がおすすめです。

名称 美里棚田キャンプ
住所・アクセス 熊本県美里町
公式サイト 美里棚田キャンプ
田んぼキャンプは、休耕田を有効活用することで環境保護に貢献できる取り組みです。また、地域の魅力を体験でき、人が集まれば地方創生にもつながります。ちょっとユニークな田んぼキャンプで里山に泊まってみませんか?

そらたね

ライター

そらたね

農業職公務員・食品メーカー勤務の経験をもとに、農業や食の大切さ、美味しいレシピを発信します。趣味は旅とカメラ。日本の四季を撮ること、旅行先で綺麗な海を見ることが大好き。生息地は主に田んぼ、畑、ときどき果樹園。