登山中に急に顔が熱くなったり、頭がボーッとしたり、息苦しくなった経験はありませんか?それ、実は「のぼせ」の症状かもしれません。とくに40〜50代になると、体温調節がうまくできなくなり、登山中にのぼせやすくなる人が増えてきます。熱中症と似たような症状でもあり、軽く見ていると体調を崩してしまうことも。この記事では、筆者自身の体験を交えながら、登山中に起こる「のぼせ」の原因と対策、そして持っていると安心な装備を紹介します。
「登山中に滝のような汗」それはのぼせかも?

筆者が40歳を過ぎた頃から登山中に突然、顔から滝のような汗が吹き出して止まらず、まるでサウナに入っているような感覚に襲われました。最初は「ちょっと暑いだけかな?」と思っていましたが、その後も何度か似た症状があり、病院を受診したところ「のぼせ」と診断されました。
同年代の山仲間にも同じような経験をしている人が少なくなく、年齢とともに体の変化を実感しています。男女問わず起こる可能性があるので、登山中の体調管理として見逃せないテーマです。
のぼせとは?熱中症との違い
のぼせとは、急に顔や頭に異常なほど熱がこもる症状で、ほてり・大量の汗・ふらつき・ボーッとする感覚などがあります。全身の体温上昇というよりも、顔や頭部に集中してほてるのが特徴です。
熱中症に似た症状ではありますが、以下のような違いがあります。
| のぼせ | 熱中症 |
| 主に顔・頭が熱くなる | 全身の体温が高くなる |
| 季節を問わず起こる | 暑い季節に多い |
| 自律神経やホルモンの乱れが原因 | 暑さによる脱水やオーバーヒートが原因 |
| 涼しくしてもすぐに治まらない | 冷却で比較的回復しやすい |
とくに40〜50代の女性に多く見られるホットフラッシュものぼせの一種です。
登山時にのぼせが起こりやすい理由

登山は有酸素運動のため、体内で熱を多く発生させます。服装や装備で体が覆われているため、熱がこもりやすい環境です。とくに風がなく湿度が高い日は、汗が蒸発しづらく体温が下がりにくいため、のぼせやすくなります。
さらに、40〜50代になると、体温調節機能や発汗能力が低下し、次のような体の変化などがのぼせの原因になります。
緊張やストレスによる自律神経の乱れ
登山中に頭がカーッと熱くなったりボーッとしたりするのは、自律神経のバランスが乱れて血管が拡張したままになることが原因です。熱をうまく放出できず、体にこもりやすくなります。仕事や家事、育児などで日常的に忙しい40〜50代は、常に軽い緊張状態にあり、自律神経の乱れを起こしやすいため注意が必要です。
女性ホルモンの乱れ(更年期)
出産後や閉経前後の更年期には卵巣の機能が低下し、エストロゲン(女性ホルモン)が急激に減少します。この体の変化により体温調節がうまくいかず、急に大量の汗が出たり(ホットフラッシュ)、ほてったりします。エストロゲンは自律神経をサポートし、体温調節にも関わっているからです。体内のバランスを保つ役割を持つホルモンの低下が、のぼせの要因にもなります。
水分・塩分不足
汗をかくことで水分や塩分(ナトリウム)を失い、血流が悪化。その結果、体温調整機能が落ち、のぼせやすくなります。水分補給だけでなく、塩分も意識的にとることが大切です。
更年期や自律神経の乱れは朝や夕方に出やすく、早朝から活動する登山では登りはじめに出やすい傾向もあります。登山中の緊張感や標高差、睡眠不足など複数の要因が重なることでのぼせのリスクが高まります。
筆者が実践している「のぼせ」の予防法

筆者は、のぼせが原因で登山中に一時的に歩けなくなったことがありました。のぼせの症状が出ると、体力や集中力が一気に奪われます。重症化すれば行動不能にもなりかねないので、のぼせ対策としてさまざまな工夫を試してみました。そのなかで、やっていてよかったと感じた予防法を紹介します。
病院で自分に合った薬や漢方をもらう
筆者の場合、更年期の初期症状としてのぼせが出ていたため、婦人科で相談し漢方を処方してもらいました。首や脇を冷やしてもなかなか症状が治らないときもあり、予防的に服用することで安心感も得られ、症状も緩和されました。男性の場合は内科で相談すれば、体質に合った処方が可能です。
暑さに慣れる「暑熱順化」を習慣に
急に暑い環境に入ると、体温調節が追いつかずのぼせが起こりやすくなります。そこで筆者は、日頃から暑さに慣れることを意識するようになりました。暑熱順化(しょねつじゅんか)といい、個人差はありますが徐々に体を暑さに慣れさせることで、暑さに強くなり体温調整がしやすいに体になります。とくに、夏はのぼせやすいのでやっておくとよいでしょう。
・ウォーキング/30分~
・ランニング/15分~
・筋トレ・ストレッチ/30分〜
・入浴/40℃くらいの湯船に浸かる
「汗をかくこと」が体温調節機能を鍛えるコツ。無理をせず日常のなかに取り入れましょう。
登山の前日は睡眠をしっかりとる
睡眠不足は自律神経の働きを乱し、のぼせの引き金になってしまいます。無理なスケジュールを避けて、しっかり睡眠をとれるよう余裕をもった工程にしましょう。
メリノウールを着る
のぼせが出やすくなってからは、天然素材のメリノウールを着るようになりました。速乾性・通気性に優れ、「天然のエアコン」といわれるだけあって快適です。サラッとした着心地のうえに涼しく感じますよ。ポリエステル素材を着ていたときよりも、体が熱がこもることがなくなりました。
水はやや多めに持つ
かなりの汗が出るので、通常飲む量よりも少し多めの水分を持つようにしています。経口補水液や塩タブレットもセットで用意するとよいでしょう。
のぼせ対策におすすめの装備リスト

のぼせやすい体質の人が持っておくと安心なアイテムを紹介します。筆者がのぼせるようになってから、必ず持つようになった装備です。とくに氷は、夏の登山でなくてはならないものになりました。
| 冷感タオル | 濡らして首に巻くだけで冷却効果 |
| 冷却スプレー | 即効でひんやり |
| 扇子 | 風がないときに便利 |
| 氷 | 保冷ボトルに入れ、そのまま食べたり飲み物を冷やしたりして体の内側から冷やす |
| 日傘 | 夏の強い日差しをシャットアウト |
暑い季節は、上記のアイテムをすべて持つことが多いですが、その日の天候や季節などで自分に合った持ち物を選ぶとよいでしょう。
ライター
yuki
幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。