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UIAA(国際山岳連合医療部会)は、世界規模の山岳協会です。「UIAA」は登山者に役立つ貴重な提言を発表しています。今回はその中から「急性高山病への対応」という提言をご紹介します。

UIAA国際山岳連合医療部会の提言⑤急性高山病への対応

UIAA国際山岳連合医療部会の提言 急性高山病

高山病の中で最も多いのが急性高山病(AMS)です。急性高山病(AMS)が重篤になると、高所肺水腫(HAPE)や高所脳浮腫(HACE)へと進行します。

高所順応がうまくいっていないことが急性高山病(AMS)を発症する主な要因です。注意深い高所順応と、水分や栄養の摂取、疲れをためないことなどが急性高山病(AMS)を予防する最善策です。

適切な高所順応の日程が組まれているかチェック

海外のトレッキングツアーでは、適切な日程を組んで高所順応を行っていないことがよくあります。

適切な高所順応を行うツアーなのかどうか予約の段階で確認することが、急性高山病(AMS)を予防する最初のポイントになるでしょう。

ツアーのスケジュールを見て適切な高所順応を行っているかどうか、しっかり確認してください。

どの程度の時間をかけて高所順応を行うのが適切か

では、どの程度の時間をかけて高所順応を行えばいいのでしょうか。標高2,500m~3,000mを越えたら、高度に対して適切に順応できるように余裕のある日程を組むことが重要です。

2,500m~3,000mを越す高地では、2日から4日かけて徐々に高度を上昇させた後、2日ほど同じ標高で滞在して馴化する必要があります。

一番注意すべき点は、高所での宿泊地の問題です。2,500m~3,000mを越えたら、前日の宿泊場所と当日の宿泊場所との高度差を300 m~500 m以内におさえなくてはいけません。

宿泊場所よりも多少高い場所まで行くのはかまいませんが、宿泊場所は前日との高度差を300 m~500 m以内にする必要があります。

危険性がある標高

UIAA国際山岳連合医療部会の提言 急性高山病

世界最高峰の高地都市「ボリビア・ポトシ」 標高4,067m

急性高山病(AMS)は標高2,500m以上の場所で発生します。急性高山病(AMS)が重篤になると高所肺水腫(HAPE)を発症しますが、この場合は標高3,000m以上で起こります。

さらに高所脳浮腫(HACE)の発症は4,000m~5,000m以上の標高で発症することがあります。上記のような高い山や高い場所へ行く際は、十分に注意して高所順応を行ってください。

高山病症状を抑える薬剤について

高所順応を早める薬がありますが、使用は緊急事態かやむを得ない場合に限定しましょう。

緊急事態かやむを得ない状況とは、高い場所にある空港に降り立つ場合とか、緊急の救助要請があって高所へ向かう場合、または適切に高所順応を行っているのに急性高山病の症状が現れたときなどです。

急性高山病(AMS)の症状

UIAA国際山岳連合医療部会の提言 急性高山病

急性高山病(AMS)の典型的な症状として「頭痛(局所的な痛みではなくびまん性が多い)」「睡眠障害」「倦怠感」「食欲の低下」「手足のむくみ」「動悸」「吐き気や嘔吐」などが挙げられます。

ひどい倦怠感がある場合や急激な眠気に襲われるといった症状は、高所脳浮腫(HACE)の恐れがあるので注意が必要です。

ちょっとした動作でも苦しい、または安静時であるにもかかわらず呼吸が苦しい、このような症状が現れたら高所肺水腫(HAPE)を疑ってください。

高所肺水腫(HAPE)の症状

急性高山病(AMS)が重篤化すると、高所肺水腫(HAPE)に進行します。

典型的な高所肺水腫(HAPE)の症状は、「ちょっと動くだけで苦しい」「安静にしているのに呼吸困難になる」「呼吸数の増加」「よく咳こむ」「心拍数の急増」「微熱」などが挙げられます。

高所脳浮腫(HACE)の症状

高所脳浮腫(HACE)の典型的な症状は以下の通りです。

「尋常でない頭痛がする」「吐き気と嘔吐」「めまいやふらつき」「運動失調」「意識レベルの低下(混迷または幻覚)」「理性を失う」

以上のような症状が現れたら高所脳浮腫(HACE)を疑い、「つぎ足歩行」(線の上をまっすぐ歩けるかどうかのテスト)を実施して確かめてください。「つぎ足歩行」テストは感度の高いどこでも行えるテストです。

急性高山病(AMS)を発症した際の対応

軽度の急性高山病(AMS)の場合は、症状がおさまるまで同じ高度にとどまりましょう。症状が改善しないうちは高度を上げてはいけません。

24時間以内に症状が改善しない場合は下山してください。寝るときは上半身をわずかに持ち上げて眠るようにしましょう。症状が改善しない場合は、必ず医療スタッフの指示にしたがって対応してください。

高所肺水腫(HAPE)を発症した際の対応

ただちに休息させましょう。休息する姿勢は上半身を垂直にします。可能であれば下山させる「受動的搬送(ストレッチャー、ヘリコプターでの搬送)」。

「受動的搬送」ができない場合は、その場で治療を行って症状が軽減したら徒歩で下山させます。寒さから患者の身を守り、医療スタッフの指示にしたがいましょう。

高所脳浮腫(HACE)を発症した際の対応

高所脳浮腫(HACE)の場合も基本的な対応は高所肺水腫(HAPE)の場合と同じです。必ず医療スタッフの指示にしたがって治療を受けさせてください。その後の対応も医療スタッフの指示にしたがいましょう。

参考:国際山岳連合医療部会による提言集

急性高山病は標高2,500m以上になると発症の恐れがあります。高所肺水腫(HAPE)は標高3,000m以上で発症する恐れがあり、高所脳浮腫(HACE)は標高4,000m以上の高所で発症する可能性があります。日本には標高3,000m以上の山があまりないので、高所肺水腫や高所脳浮腫の危険性は少ないですが、海外の遠征登山に参加される方は、今回の記事を参考にしてしっかり対策をととのえてください。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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