認定山岳医制度は登山による事故を未然に予防するために設けた資格制度です。
登山による事故を減らす方策を広く社会に還元し提案していくことを目的としています。
認定山岳医制度とは
ISMM(国際登山医学会)を中心とする登山医学会では、スイスアルプスでの救助活動の経験から、山岳地帯の事故現場における救助活動の指針を明確にしたアルゴリズムの確立を目指してきました。
山岳事故の現場では、いったい何をもって救助者の生死を判定するのか、救助しなくてはいけない境界線をどこに引けばよいのか、これまではあいまいでした。
世界的な流れとして、救助隊の個人的な経験や知識、勘によって決定されがちだった山岳救助の現場に、科学的な判断基準や実績を集積した理論が求められるようになりました。
一方国内でも、これまで山岳地帯の事故現場で行われてきた経験や知恵に頼った救助活動から、科学的な見地に立った救助活動に移行すべきであると考える山岳医療の専門医が現れるようになりました。
その中心的な役割を果たしたのが「日本登山医学会」の立ち上げに貢献された中島道郎医師です。「日本登山医学会」は当初、急性高山病メカニズムの解明や対策を中心課題として研究する医師の集りでした。
2005年5月には日本登山医学会へ発展し、2013年5月に一般社団法人日本登山医学会としてスタートを切りました。
現在は1400名を越す会員が登録しており、「認定山岳医」には、救急医療の分野や産婦人科医、整形外科医、内科医、麻酔科医、歯科医など、ゆうに90名を越す医師がエントリーしています。
日本登山医学会認定国内山岳医制度では、国際山岳連盟医療部会(UIAA Med Com)、国際山岳救助協議会(ICAR)、国際登山医学会(ISMM)の国際山岳医をはじめ、国内山岳医の認定医制度を実施しています。
日本登山医学会認定国内山岳医制度を運営しているのは「日本登山医学会認定医委員会」です。
また、2010年からは「公益社団法人日本山岳協会」と「国立登山研修所」の協力を得て、国際山岳連盟医療部会や国際山岳救助協議会、国際登山医学会などが認定する医師や看護師を対象とした「国際認定山岳医制度講習会」を実施しています。
さらに、2013年からは山岳関係者であればどなたでも参加できる非医療者向けの山岳ファーストエイド講習会も行っています。
日本登山医学会認定山岳医制度
「日本登山医学会認定山岳医制度」は、山岳医学の臨床と研究などあらゆる分野において実践できる医療従事者を養成することを目的として設立された資格制度です。
山岳地帯における疾病やケガの応急処置、山岳環境でのサバイバルテクニック、レスキューテクニックなども習得する必要があります。
日本登山医学認定山岳医制度の受講者は、日本登山医学会に所属する医師と看護師、一般の日本登山医学会会員に限られます。一般の日本登山医学会会員の場合であっても、受講するコースは医師や看護師と同じです。
そのため、医療や学術面の知識をあらかじめ準備しておく必要があります。まだ、日本登山医学会の会員でない方は、認定山岳医のエントリーをする前に会員登録を行ってください。
会員登録を行ったら、日本登山医学会の会員番号が送付されます。認定山岳医のエントリーには日本登山医学会の会員番号が必要です。
「日本登山医学会認定山岳医制度」の講習会は、「座学」と「演習」「検定」の3段階で実施します。「座学」では、高山における医療の知識や救助活動の知識などを学びます。「演習」は、山岳技術・山岳救助の基礎について習得します。
詳細は「日本登山医学会認定山岳医制度」のページをご覧ください。
日本登山医学会認定山岳医の活動
日本登山医学会認定山岳医に認定された医師は、登山者検診ネットワークに参加している医療機関や山岳地帯での救助活動などで活躍しています。
登山者検診ネットワークでは登山を扱う旅行会社と連携して、登山目的で海外へ旅行される方を対象に出国前検診を実施しています。
この健診では、目的の標高の山への登山に耐えられる健康状態なのかどうか、高所で健康を悪化させるような持病の有無について調べます。
登山医学会認定山岳医として有名な大城和恵医師は、イギリスのDIMMを取得して国内初の認定国際山岳医になった山岳医療のスペシャリストです。
現在は「日本登山医学会認定山岳医制度」の実行委員として日本の認定山岳医制度の運営を行われています。また大城和恵医師は、南米の最高峰「アコンカグア」にチャレンジした三浦雄一郎氏のチームドクターを務めたことでも知られています。
三浦雄一郎さんの命に危険があると判断してドクターストップをかけた医師です。ドクターストップになかなか同意しない三浦氏を涙ながらに説得したといわれています。
日本登山医学会認定山岳医制度は山岳エリアにおける救助活動や医療のスペシャリストを養成するために設けられた資格制度です。日本登山医学会に所属する研究チームが行っている高山病研究は世界的に評価されています。
まさに高地医療のスペシャリストが集まる団体です。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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