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自然の岩に設置されている金具は、室内と劣化速度が違います。また施工方法や金具の種類などが、設置したクライマーによって違いがあるなど安全性を見極めるのが困難なのが特徴です。今回は、自然の岩に設置されている金具の安全性の見極め方をお伝えします。

金具の種類と名称

岩壁金具 安全性

岩に設置されている金具の事をクライミングの世界では「ボルト」と呼びます。岩に穴を穿ち、「ハンガー」と呼ばれる金属プレートを「ボルト」で固定します。

そしてハンガーにクイックドローやカラビナをかけて、クライミング中の安全確保用具として使用します。

ですから、実際にはボルトにカラビナにかけているわけではなく、ハンガーにカラビナをかけていますが、ボルトとハンガーを分けて考えると「あのボルトで留められたハンガーにカラビナをかける」と説明が長くなってしまうので、ボルトとハンガーの総称として「ボルト」と呼称することで現在は定着しています。

もう一点、岩の隙間に打ち込むピトンやハーケンと呼ばれる楔状の金具と差別化する為に、ボルトと呼称する事もあります。

リボルトといって老朽化したボルトの打ち換え作業時に、ボルトに比べて強度の低いピトンやハーケンは取り外してしまうので、現代のクライマーはボルト以外を目にする機会も少なくなりました。

また、現在はピトンやハーケンを使うクライマーは少ないので、やはりハンガーとボルトの総称としての「ボルト」というのが、呼称の理由の大部分を占めています。

 

金具の使い方

岩壁金具 安全性

最も多く見られるボルトはグージョンボルトと呼ばれるものです。これは穴をあけた岩の内部でボルトが広がり、その拡張力で岩に固定されるタイプのものです。

施工が簡単でミスが少なく、また強度も十分なことから多くの環境で使用されています。見た目の特徴は、ボルトの頭がなく、ナットで締められている点です。

ハンガーをカラビナですくうようにかけて使います。上からかけると、確率は低いですがカラビナの破断事故などにもつながりますので注意が必要です。

次に多く見られるボルトは、ケミカルボルト(ケミカルアンカー)と呼ばれるものです。こちらは非常に強靭な接着剤を穴を空けた岩の中に入れ、ボルトを差し込んで接着するタイプです。

施工に注意が必要で、穴をあけた岩の中をしっかりとブラシで掃除する必要があります。また、施工の強度は湿気などの影響を受けるので、施工の時期にも注意を払う必要があります。

ボルトも高価で、あまり積極的に使用されませんが、塩害に非常に強く、海岸沿いのクライミングエリアや石灰成分を多く含む石灰岩などには積極的に使用されます。

見た目の特徴は、スパナなどで締めるような構造ではなく全体的に滑らかで、ボルトと岩の接地面には接着剤とみられる痕跡があります。

使い方での注意点は特になく、穴の中にカラビナを通すだけとシンプルです。

 

グージョンボルトの安全と危険の見分け方

岩壁金具 安全性

岩場の開拓経験のないクライマーは、ハンガーの錆の度合いなどでボルトの安全性を判断することが多いです。

しかし、実際に岩に取り付けられているのはボルトそのものなので、ボルトの劣化具合を見て安全性を判断しなければなりませんが、それは非常に難しいです。

というのも、ボルトと岩の接地個所は岩の内部なので、目視による確認が出来ません。

この部分をしっかり解説すると膨大な写真と文章量になってしまうので、説明が難しいのですが、やはり何度も経験者について行き、環境に適した判断方法を学ぶことが大切です。

また、海沿いのクライミングエリアや石灰岩のエリアなどでは、ハンガーに大量の錆などが見えなくても、ボルト自体が激しく錆びている場合があります。

これは「ガルバニックコロージョン」という化学反応による腐食の可能性が高いです。

簡単に説明すると、異種金属同士の接触による腐食のことを指しますが、例えばボルトの素材が鉄(スチール)でハンガーがアルミなどの場合、激しく腐食します。

分かりにくいのはハンガーがステンレスでボルトがスチールだった場合、内部が腐食しますのでハンガーは比較的きれいなままです。不安な場合はクライミングを中止するなど、身を守る選択をしましょう。

 

ケミカルボルトの安全と危険の見分け方

岩壁金具 安全性

ケミカルボルトの危険を知る際、最も難しい部分が、施工者がしっかり岩をブラシで掃除していなかった場合です。

仮に施工者が岩の中をしっかり掃除せずにボルトを設置した場合、接着剤とボルトは強固に接着されていても、ボルトと岩は穴を空ける際に発生した細かな砂が接着剤に付着して、接着が不十分という可能性があります。

これは、ボルト、接着剤、砂、岩、という順番で接着されている状態になるので必然的にボルトと岩の間に空隙が出来てしまい、何度も登って荷重がかかるうちに空隙が広がり、ある日突然スポッと抜けてしまう可能性もゼロではありません。

実際に「ケミカルボルトが抜けた」という話は何度も聞きます。

もう1点は、ケミカルボルトと岩壁の接地部分(見えてる部分)が錆びている場合。

これはケミカルボルトの表面のコーティングが老朽化によってはがれてしまい、多くは石灰岩ですが岩のアルカリ成分と亜鉛が反応して錆びてしまう現象である可能性が高いです。

グージョンボルトのガルバニックコロージョンなどに比べると化学反応による腐食速度は遅いですが、それでもいつかは荷重に耐えられなくなります。

表面的なものであれば問題はありませんが、あまりにも錆が目立つ場合は注意が必要です。

 

人間が施工したものには個人差があり、とても危険な場合もあります。特に、ケミカルボルトの掃除不十分などは見て分かるものではありません。「ノーリスクはない」という事を忘れないようにしましょう。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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