バーチャルウォーターとは?
輸入した食料を自国で生産するには、どれくらいの水が必要か。その水の分量を数値であらわしたのが、バーチャルウォーターです。仮想水とも呼ばれ、ロンドン大学のトニー・アラン教授が最初に提唱しました。
たとえば、普段なにげなく食べているとうもろこし。1kgのとうもろこしを生産するためには、1,800Lの水が必要です。とうもろこしは1本あたり約350gなので、およそ3本のとうもろこしを輸入するのに、500mLのペットボトル3,600本分の水が運ばれていることになります。
また、牛はとうもろこしなどの穀物を飼料として大量に消費します。そのため、牛肉1kgあたりのバーチャルウォーターは、約20,600Lにものぼりますよ。
バーチャルウォーターの概念にもとづくと、食料を輸入すれば、自国で生産するための水を節約していることになります。一見、よいように思えますが、それだけ海外から水をもらっているということ。つまり、海外からの水に頼って生活しているのです。
地球の水資源には限りがあり、しかもさまざまな理由から水問題を抱えている国々があります。バーチャルウォーターは環境問題への提起として、世界から注目されていますよ。
出典:環境省
「バーチャルウォーター」
「バーチャルウォーター量自動計算」
日本のバーチャルウォーターの現状
日本のバーチャルウォーターの数値はとても高いのが現状。食料の多くを輸入に頼っているためです。もし輸入している食料をすべて国内で生産するとしたら、年間約640億トンの水が必要になります。この水量は、琵琶湖の貯水量の約2.5倍に相当しますよ。
食料の輸入によって生産に必要な水をつかわずにすんでいますが、いいかえると、ほかの国から膨大な量の水を奪っていることになります。日本に住んでいても、世界の水問題と無縁ではありません。
出典:東京大学生産技術研究所「世界の水危機、日本の水問題」
バーチャルウォーターを減らす2つの方法
バーチャルウォーターの輸入量が多い日本では、減らす取り組みが必要とされています。個人でも今すぐ実践できる方法について考えてみましょう。
①なるべく和食を食べる
和食を食べるとバーチャルウォーターを削減できます。日本のバーチャルウォーターの値が上昇した背景には、和食離れによる、食料自給率の低下があるためです。
環境省によると、1965年のカロリーベースの食料自給率は73%でしたが、2021年には38%まで減少しました。食料自給率の低下にともなって、日本は輸入に頼るようになり、バーチャルウォーターが増加するという結果に。
和食はお米や野菜がメインですが、洋食は小麦粉・お肉・乳製品をたくさん用います。小麦粉や畜産物を生産するためには多くの水が必要です。
また、小麦粉の多くは輸入品ですが、ほとんどのお米は日本でつくられています。日本の食料自給率を支えているのは、お米といっても過言ではありません。お米や野菜を中心とした和食を積極的に食べると、食料自給率を上げ、バーチャルウォーターの削減につながります。
ほかにも以下を実践するだけで、食料自給率が1%アップしますよ。
- ごはんを1食につきもう一口食べる
- 月に米粉パンを3つ食べる
- 国産大豆100%の豆腐を月にもう3丁食べる
出典:農林水産省
「食料自給率・食料自給力について」
「食を知ろう」
②地産地消を意識する
地産地消を心がけて、地元でとれた食料を積極的に食べましょう。地元産ならバーチャルウォーターを削減できるだけでなく、輸送にかかるエネルギーも少ないため、さらに環境にやさしいのがメリットです。
買い物をするときは、産地をチェックしてみてください。安いと思ったものが外国産であるケースがたくさんあります。スーパーによっては、地元の野菜が置いてありますよね。お店に陳列されるまでに時間がかからないため、新鮮でおいしいですよ。
世界の水問題
日本では蛇口をひねれば水が出ますが、世界の約6億6,300万人の人が安全な水を手に入れるのに苦労しています。国連開発計画でも、「国によって水の流入量や水資源の分配に大きな差がある」と報告されました。
また、今後さらに世界の人口が増加すれば、水を入手できない人が増えていくと考えられますね。2030年までに世界の人口は約85億人になり、2050年には約97億人に増えると予想されています。
1950年~1995年の間に、世界の水の使用量は約2.74倍に。生活用水は約6.76倍に膨らみました。人が増えれば、多くの水も必要になります。
他国の水不足を補うために、日本は自国の水資源を利用することが重要です。バーチャルウォーターを減らす行動が望まれています。
出典:国士交通省「水資源問題の原因」
ライター
Greenfield編集部
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