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【大内龍成】ブラインドスケーター大内龍成が目指すもの〜スケートボーダー取材記Part3

【大内龍成】ブラインドスケーター大内龍成が目指すもの〜スケートボーダー取材記Part3

ブラインドスケートボードの競技化と専用パークの建設

ブラインドスケーター・大内龍成

ーそのやりたいことというのが、ブラインドスケートボードの競技化になるのでしょうか? 実際今年はパラリンピックも盛り上がりを見せましたが、そこにスケートボードは採用されませんでしたし。

はい。もちろんそれもやりたいことのひとつです。ただ今は学生ですし、そこまで動けていないというのが現状なんですよ。

でも卒業したら全国の盲学校を回りたいと思っていて。事前にアポをとってOKが出たところに直接出向いて、スケートボードに乗ってもらい魅力や楽しさを伝えるのが目標なんです。

まだスポンサーに話をするとか、そういう段階にもきていないんですけど、そこでコンプリートデッキを寄付できたら盲学校の生徒達の始めるきっかけにもなるし、競技として広めることにも繋がると思うんです。

パラリンピック競技化まで持っていくとなれば、そこまでの道のりは長いですが、今はオリンピック効果で世間の気運も高まっていると思います。

なので、まずは自分のできることからコツコツとやっていって、その活動に対して賛同して手を上げてくれる企業さんが出てきてくれたら嬉しいなと思っています。

ーただその活動に関してはすでにモデルケースもあると伺いましたが?

はい。実際に自分の滑りを見てスケートボードを始めてくれた盲目の子が、すでに岡山にいるんです。

その子のお父さんも自分の活動に協力してくれていて、岡山にブラインドスケーターでも滑れる施設を造ろうと働きかけてくれているんです。

実現までの道のりは長いし大変だと思いますけど、ブラインドスケーターが集まれる拠点であり、なおかつ一般のスケーターも滑れるような拠点を構えることはなんとしても成し遂げたいです。

もちろん自分1人の力だけでは絶対に無理なので、タイミングになったら同じような考えを持っているダン・マンシーナにも話をして、お互い協力しながらやっていきたいと思っています。そのためにもアメリカに行って彼に会うという目標は絶対に達成したいと思っています。

ーそのブラインドスケーターが集まれる拠点というのは、一般のパークと比べて設計にどんな違いがあるのでしょうか?

セクション(障害物)とアプローチのスタート部分に目印となるものを設置するんです。各セクションにスピーカーを埋め込んで、音が鳴るようにし、その音の方向に滑ればセクションがあるからやり易いんです。

それにセクションごとに出す音楽を変えたり、スタッフが自由に音を出すことも消すこともできるシステムが整えば、一般の方との共存も可能だと思います。

あとは、セクションにアプローチする際のスタート地点となる箇所に、点字ブロックを敷くことも大切だと思います。まっすぐ進めばセクションがあるというのが点字ブロックで確認できるのは、些細なことかもしれないですけどブラインドスケーターにはものすごく重要なんです。

もちろん広範囲に敷いたらライディングのジャマになるので、正方形のパネル一枚をパークの端に置くだけで良いんです。

これらは街中を思い出してもらえばイメージしやすいと思いますが、市街地の横断歩道はだいたいどこも手前に点字ブロックがついています。横断歩道も信号が青になったら音楽が流れるところがあります。

これも視覚障害者のための措置なので、ブラインドスケーター向けのパークも原理はこれらと同じなんです。この2つの要素を各セクションごとに詰め込めたら良いですね。

 

パラ競技化における公平性の課題

ブラインドスケーター・大内龍成

ーパラ競技化には大内さんのようなブラインドスケーターだけでなく、フェリペ・ヌネス選手のような足がないスケーターまで障害が多様です。採点競技という性質を考えると、順位を付けてメダルを与える上での公平性を保つことに課題があるという指摘が目立ちますが、アスリートとしての意見も聞かせていただけますか?

自分は、そもそもハンドスケートとブラインドスケートボードは分ける必要があると思っています。正直フェリペ・ヌネス選手のようなハンドスケートは全然やってないし全くわかりません。もちろんハンドスケートもすごいなと思います。ただ自分はそれが見えないので、その事実がそこにあるのみというだけなんですよ。

だからそれらを一括りにして競技化するのは、はっきりいって自分も難しいと思います。ただブラインドスケートボードに限れば、ブラインドサッカーはすでにパラリンピックの種目になっていますし、可能性はゼロではないのかなと思うんですよね。

そのためにもまずは自分がブラインドスケートボードを競技として確立させて、それをモデルケースにハンドスケートとか他のハンディキャップ競技が生まれてくれれば良いなと思っています。

ーそうは言っても、同じブラインドスケートボーダーでも目の見え方は個人で違ってくると思います。そこで公平を保つにはどうすれば良いと思いますか? 実際にブラインドサッカーの場合は選手それぞれがアイマスクをつけて競技をしていますが。

そこは採点競技という体裁を取らなければ良いと思いますね。そもそもスケートボードは難しいですし、ひとつのトリックを覚えるにしてもかなりの数の失敗を経てようやくできるものです。

そうなると基本的にオリンピック会場のように面積が広くてバリエーションも豊かなパークで、ブラインドスケーターがオリンピック選手と同じルールで同じような使い方をするのは、先ほどのブラインドスケータ向けのパーク設計の観点からいっても難しいんじゃないかと思っています。

それにアイマスクをつけるにしても、昔の自分みたいに若干でも見える人がいたら、事前に会場のセクション配置が確認できるのでスケートボードにおいてはそれがものすごいハンデになってしまうと思います。

でもスケートボードには昔から馴染みのある S.K.A.T.E. GAME(※1)があるので、これであれば公平性を保てて勝敗をつけることができると思うんです。お題はフラットトリック(平な滑走面で行うボードを回すトリック)に限らず長いカーブボックス(長い箱型のセクション)やフラットレール(平均台のようなセクション)を用意して、それぞれが好きなセクションで得意な技を披露する形にすれば、バリエーションも豊かでシンプルにトリックの成功失敗だけで競いあうフォーマットになるんじゃないかと思うんですよね。

※1 親がお題(トリック)を出して成功したら子が同じトリックにチャレンジ。できなかったら1回につき1文字、「S」「K」「A」「T」「E」の順に文字が付く。親がトリックを失敗したら攻守交代で、「SKATE」(1人で5回ミス)になった人が負けというルールのコンテスト。ゲーム感覚で世界的に親しまれているスケートボード特有の競技ルール

 

自身の映像作品制作への想い

ブラインドスケーター・大内龍成

ーそのような競技化の動きの一方で、最近はハンデキャップを背負ったスケーターたちの映像作品も話題になっています。ダン・マンシーナ選手もいくつか残していますし、フェリペ・ヌネス選手に関してはパラリンピック直前のタイミングでフルパートを公開し、実在する海外の有名スポットでもフッテージを残したことが話題になりました。大内さんも自身のパート制作に意欲的だと伺っていますが?

もちろんです。シーンの確立には競技化もものすごく大切なんですけど、自分はカルチャーとしてのスケートボードも忘れないでほしいと思ってるんですよ。やっぱりスケーターならフルパート(自身のライディングを収録した映像作品)を残して、自分という存在をいろいろな人に見てもらいたいですよね。

こうやってメディアに取り上げていただけるところまで来たのなら、このまま黙って自分のスケート人生を終わらせるつもりはないですし、先ほどお話させてもらった活動を実現させるには新たなスポンサーも必要になります。

そのためにも自分の名刺がわりになるようなフルパートが必要なんです。自分には自分なりに刻んでるものがあるので、それはどんな形であれ近いうちに実現させたいんですよね。

ーただフルパート制作でストリートで撮影するとなると、ブラインドスケーターならではの苦労も多いのではないでしょうか?

やっぱり一回も行ったことがない、どういう状況かわからないスポットはリスクが大きいですよね。そこでガツガツ攻めるのは危険性が高いので、スポットをよく知るというのは一般のスケーター以上に大事になってきます。その時点で他の人より一段階ステップを越えなきゃいけないんですよ。トライしたことがあるスポットなら、ここからこう入れば大丈夫とかそういうのが感覚で残ってるのでやりやすいんですけどね。

ただ、そんなことでゴチャゴチャ言っても、結局はやるしかないんですよ。だから自分がやりたいことに対して今何が必要なのかを考えて、シンプルにそれを実行するだけです。今の自分にとってはそれが映像だと思っているので、できることをひとつずつ着実に進めていきたいんですよ。

 

病気に打ち勝ったと言えるドリームトリック

ブラインドスケーター・大内龍成

ーではそのパート制作はどんな状況なのですか? こんなスポット・トリックがやりたい、こんなものに仕上げたいなどの希望があれば教えてください。

まだこれからスタートするところです。埼玉に来て、ようやく近くで自分のパートを撮ってくれると言う人も見つかったんですけど、スケジュールの都合がつかなかったりで、なかなかサクサクと思うようには進まないんですよね。でも気合入れて頑張っていくつもりです。

パートの中身に関してはまだ漠然としてるんですけど、自分ができるトリックはなんでも出したいですね。逆にココでコレをやるんだ! って決め込んで自分の幅が狭くなるよりは、メッセージ性の部分も含めてフィルマーと話しながら決めていきたいんです。その方が伝わるところは大きいと思いますし。

ただそこにもひとつだけこだわりがあって、いつかは目が見えてた頃にやってた思い入れのあるスポットで、目が見えてた時にできなかったトリックと同じトリックをメイクしたいんですよ。それができたらある意味病気に打ち勝ったひとつの証にもなりますしね。

 

自らに言い聞かせている格言

ブラインドスケーター・大内龍成

ーそのスポットとトリックのストーリーだけでドキュメンタリービデオが作れそうですね。では締めくくりとして来年に向けての意気込みと、将来はスケートボードにどんなところで関わっていきたいか聞かせてください。

近い目標でいったらまずはやっぱりパートを残すことですね。そこから次に繋がっていくと思うので。そうした先の将来的な目標がブラインドスケートボードの競技化になります。そのためにも自分がアメリカに行ってダン・マンシーナやジャスティン・ビショップ達と行動を共にして、得たものを日本に還元することもはすごく重要になってくると思います。NHKの特集番組の話がうまくいったら良いですね。そこで手応えを感じてきたいです。

ーいろいろとありがとうございました。では最後に大内さんと同じ障害者の方やスケートボードを上達させたいという初心者にメッセージを。

自分が自らにいい聞かせている格言に「決して囚われるな、ただやるだけ」という言葉があります。

これは何事も自ら行動しなければ何も変わらないんだぞという暗示でもあるんですが、自分のように目が全く見えないのにスケートボードをすると言うことは、世間一般的には普通ではないかもしれません。でも自分はそうは思わないんですよね。

そもそも普通の概念は人によって違うと思います。もしやりたいんだったら、そこで自分の置かれてる現状に囚われる必要なんてないんです。「やってみろ! やってダメなら諦めがつくだろ。やってもないのに諦めたら後悔しか残らないぞ。だからやるだけなんだ! って常に言い聞かせてるんです。

自分は視力というものを失ってしまったからこそ、物事にチャレンジできることのありがたみを身を持って感じています。これは身体障害者に限らず健常者の皆さんにもいえることだと思うので、どんどんチャレンジしてください! どこかで会ったら一緒に滑りましょう。どうもありがとうございました!!

 

ブラインドスケーターとして活躍する大内龍成さんのインタビューはいかがだったでしょうか? 今回のインタビューを通じて、彼からは盲目でも健常者と同じ生活ができるんだということを証明するかのようなパワーを感じました。改めて人間には無限の可能性があるのだなと思いますし、例えハンディキャップを抱えようとも懸命に前を向き、進み続けるその姿勢は、健常者の方の多くの心も突き動かすものだったのではないでしょうか。これからの彼の活躍を心より応援したいと思います。
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