前編では、Farmer’s Village Notoが生まれた背景や、学校給食を出口とした地産地消の取り組み、そして能登半島地震によって見えてきた農業の課題を紹介しました。
後編では、震災を乗り越え再び動き出したFarmer’s Village Notoの現在に迫ります。珠洲市での農業再開、参加者とともに活動を育てる「むら活プログラム」、能登を五感で体験できる「NOTO hundreD」など、関係人口を広げる取り組みから、私たちが能登と関わる可能性を探ります。
2026年再開に向けての新たな歩み

もともと地産地消を進めるために始まったFarmer’s Village Notoの取り組み。
震災を経て、この取り組みの必要性はより明確になりました。
農業を立てなおすことが、地域の暮らしを支えることにつながるー。
その確信が、再開への原動力となったのです。
地域内外の農家が一緒に取り組む
2026年春、石川県珠洲市上黒丸(かみくろまる)地区を舞台に、Farmer’s Village Notoは能登での活動を再開します。
再開のきっかけは、法政大学教授の水野雅男さんが取り組む「紡ぐ学校 上黒丸プロジェクト」。上黒丸地区の棚田で、農業を行う取り組みです。洲崎さんたちはプロジェクトに参画し、地域の農業者やボランティアとともに、有機農業を進めていきます。
地域の農業者と、地域外の人が一緒に農業に向き合う。それは、Farmer’s Village Notoが目指す「消費者とプロの農家が一緒に農業をする」という姿そのものです。
震災によって、能登での活動が止まったFarmer’s Village Noto。2025年は「どうしたら能登で農業を続けられるのか」と問い続ける日々でした。
止まらなかった想いが身を結び、2026年、能登で再スタートを切ったのです。
対話で育てる「むら活プログラム」
Farmer’s Village Notoでは、活動を応援してくれる人を「村民」と呼んでいます。村民は110名ほど。その8割が石川県内、2割が関東圏の人たちで構成されています。
中でも、「地元産の有機野菜を学校給食に」という理念に共感した子育て世代の人が多いのだとか。「農業の関係人口を増やしたい」との想いから洲崎さんは発信を続け、共感した人が村民として集まりました。
「たとえば、村民になった東京の人たちが能登に行くことで、『僕も能登で農作業手伝ったらすごく楽しかったし、あなたも今度一緒に行こう』みたいな会話が生まれるといい。関係人口を一人でも十人でも増やしていくことで、能登が農業で復興する足がかりになると思っています」
村民になると、「むら活プログラム」に参加できます。
村民は、運営にも参加できるのが特徴。村民と対話を重ね、活動内容を決めていくのが、Farmer’s Village Notoのやり方です。
- どうするVillage
Farmer’s Village Notoの運営について意見を出し合いながら、これからのVillageのあり方を一緒に考える関わり方。
プロジェクトの方向性を、みんなで模索していきます。 - Villageで農作業
野々市のほ場などで行われている日々の農作業に、いつでも参加できます。
土に触れ、実際の作業を体験しながら農業の現場を支える関わり方です。 - Villageを食す
野菜の定期便に登録し、毎月届く能登の野菜を味わうなど、食べることを通して能登に関わる方法も。
「食の処方箋プログラム」(オンライン・リアル)に参加し、食について学ぶ機会も用意されています。 - 香土カグツチ@虎ノ門
東京で行われている「香土カグツチ@虎ノ門」の活動にも参加できます。
都市部でのイベントや交流を通して、能登の農業や食の魅力を広げていく取り組み。場所が離れていても、農村との縁をつなぐ関わり方です。
公式HPから申し込むことで、村民として「むら活プログラム」に参加できます。
村民を絶賛募集中。入会金はないので、気軽に始められるでしょう。
「東京や遠方の人が応援してくれることで、石川県の人の励みになります」と話していた洲崎さん。
能登の農業に関心がある人、能登を応援したい人は、村民というかたちで参加してみるのも一つの選択肢です。
能登に行き、能登を味わう「NOTO hundreD」
村民に興味はあるけど、定期的な現地参加が難しい…という人もいるでしょう。
そんな人に向けて、体験型プログラム「NOTO hundreD(ノト・ハンドレッド)」を紹介します。
食や農作業、地域の人との対話を通じて、能登の”今”にふれ、”関係人口を増やす”ためのプログラムです。
農業体験講座は現地だけでなくオンラインもあるので、遠方の人も気軽に参加できるでしょう。まずは能登を知りたい!というひとは、能登で農家さんと交流できる1泊2日のツアーや、能登の味覚が届く定期便がぴったりです。
- 能登人と出会うタビ(ツアー)
能登で農業を営む3人の農家を訪ね、農作業体験などの交流を通して地域の暮らしに触れる1泊2日のツアー。
ブルーベリー収穫、果樹園での草むしり、しいたけ農家の見学などを体験しながら、能登の人の話を直接聞くことができます。 - 里山の味覚・定期便
石川県産の野菜と能登の食品をセットにして、毎月自宅に届ける定期便。
里山で育った旬の野菜や地域の加工品を味わいながら、遠くに住んでいても能登の食文化や農業とつながることができます。食べることを通して能登を知る取り組みです。 - 農作業体験講座(オンライン+現地)
珠洲市上黒丸地区の棚田を舞台に、有機米づくりに参加できる講座。
オンラインで稲作の基礎知識や能登の復興について学び、現地では田植えや稲刈りなどの作業を体験します。農業を通して能登の復興に関わるいい機会になるでしょう。
能登の食を味わい、交流もできる「NOTO hundreD(ノト・ハンドレッド)」。遠くから応援するだけでなく、能登により深く関わりたい。そんな人におすすめです。
2026年3月24日(火)18時から、渋谷でキックオフミーティングが開かれるので、実際に話を聞きたい人はぜひ参加してみてください。
Farmer’s Village Notoから始まる“国産国消”

洲崎さんは、「これからは、農家だけが農業に関わる時代ではありません」といいます。
「流通業者やシェフ、野菜を食べる人も、みんな農業に関わる人たち。『一億総農民』です。地産地消の拠点が全国に広がれば、『国産国消』の実現につながるかと。その途上にあるのが、『Farmer’s Village Noto』なんです。」
すべての人が、農業に関わる存在としてつながる社会をつくること。
Farmer’s Village Notoは、「食べる」「作る」「学ぶ」「参加する」という4つの視点から、地域の食と農を結ぶ拠点づくりを進めています。
「Farmer’s Village Notoの理念や取り組みに共感してくれる人がいたら、何らかの形で応援してもらえるとうれしいです。」
洲崎さんの言葉が示すように、食の問題は決して他人事ではありません。
それは、私たち一人ひとりの暮らしと直結する“自分ごと”です。
能登半島に、農薬や化学肥料を使わない200haの生産拠点をつくり、そこで育てた農産物を子どもたちへ届ける。
Farmer’s Village Notoの新たな物語は、いま能登の地から再び動き始めています。
ライター
そらたね
農業職公務員・食品メーカー勤務の経験をもとに、農業や食の大切さ、美味しいレシピを発信します。趣味は旅とカメラ。日本の四季を撮ること、旅行先で綺麗な海を見ることが大好き。生息地は主に田んぼ、畑、ときどき果樹園。