「喉に違和感がある」「お腹が重い」そんなとき、スイス人義母の家では、ハーブティーが出されます。心を休めたり、落ち着いたりしたい時に飲むハーブティーもありますが、私が義母宅で出会ったのは、体調に合わせて飲むお茶でした。初めて見た時は、ずらりと並んでいてびっくり!今回はスイスのハーブティーでのセルフケアについて紹介します。
スイス人は薬よりもまず「ハーブティー」から

義母宅のキッチン棚を開けると、色とりどりのハーブティーの箱がぎっしり。日本の家庭にある常備薬のように、スイスでは「体調に合わせて選ぶお茶」が備えられています。青い箱は風邪気味のとき、黄色は胃腸に違和感のあるとき、ピンクはリラックスしたいとき、といった具合に。
「ちょっと風邪気味なの」と伝えれば、症状にぴったりのハーブがブレンドされた風邪用ティーを淹れてくれ、「お腹の調子がよくない」とぼやけば、胃腸を整えるお茶を出してくれる。そんな義母とのやりとりは、今では日常のひとコマになりました。
薬を飲む前に、まずは自然の力を借りて体を整える。スイスでは一般的なこうした考え方は親から子へ、そして孫へと受け継がれています。
ハーブティー文化が根付いている理由

ハーブティーがスイスの暮らしに溶け込んでいる背景には、修道院文化とアルプスの自然環境があります。中世の修道院は、祈りの場であると同時に病人を癒す療養の拠点でもありました。修道士や修道女たちは薬草庭(Klostergarten)でハーブを育て、それを薬やお茶として活用していました。
こうした知恵は体系化され、現代でも「Klostertee(修道院のお茶)」として商品名に残っています。
また、スイスは国土の大部分が山岳地帯です。標高の高い場所で育ったハーブは香りや効能が高いと考えられ、古くから重宝されてきました。自然に囲まれた環境と修道院の歴史が重なり合い、スイス独自のハーブティー文化を形作ってきたのです。
修道院医学の伝統はドイツにもありますが、学問や医療体系として整備されてきました。いっぽう、スイスでは日常生活のセルフケアとして、身近なところに残ったという特色があります。
スイスの家に常備されているハーブティー

スイスのスーパーに行くと、ハーブティー売り場の充実ぶりに驚かされます。薬局だけでなく、普段の買い物で手に入れられることが、文化として定着してきた理由のひとつでもあります。我が家でも常備している、いくつかの定番ハーブティーを紹介します。
風邪のひき始めに飲むハーブティー

「修道院の庭」という名前を持つクロスターガルテン(Klostergarten)の「エルカルトゥングスティー(Erkältungstee)」は、風邪の症状が出てきた時に飲まれているハーブティーです。
ハーブには、タイム・エルダーフラワー・リンデンの花・アニスなど、9種の薬草がバランスよく配合され、風邪のひき始めに体を温めて回復を助けてくれます。義母宅では、風邪かな?と感じたらこれを飲んで体を整える習慣があります。
消化を助けるハーブティー

こちらも、クロスターガルテン(Klostergarten)のハーブティー。黄色いパッケージのものは、ミントやフェンネルなどが配合され胃腸の消化をサポートしてくれます。胃腸に負担をかけがちなクリスマスなどのパーティーシーズンに用意しておきたいおなかに優しいハーブティーです。
ピンクのパッケージは、「寝る前のホットミルク」と同じように、暮らしの中で安心感を与えてくれるお茶です。落ち着きたい時にぴったりの、オレンジの花やレモンバームが含まれています。
贈りものにピッタリなスペシャルティー

スイスのティーブランドの中でも特別感があるのが「シロッコ(SOROCCO)」です。カフェやレストランでも提供されているブランドで、洗練されたパッケージと香りの高さが特徴です。
ほかのティーブランドに比べて値が張りますが、オーガニック原料の使用や、生分解性ティーバッグなど細部へのこだわりがあり、サステナブルな姿勢も支持されています。スイスでは贈り物に選ばれることも多く、「特別な時間を演出するお茶」として位置付けられています。
公式サイト:シロッコ(Sorocco)
お土産にも◎なアルプスのお茶
もうひとつ紹介したいのが、スイス・アルペン・ハーブ(Swiss Alpine Herbs)のお茶。ベルナーオーバーランド地方に拠点を持ち、契約農家がアルプスの斜面で育てたハーブを加工しています。高地で育つハーブは香りが濃く、スイス人にとっては「アルプスの自然をそのまま飲む」ような感覚で親しまれています。
パッケージにはアルプスの花々が描かれ、観光客がお土産として手に取ることも多いシリーズ。スイス人にとっては日常の一杯ですが、旅行者にとっては「アルプスの思い出を持ち帰る」ような存在です。
公式サイト:Swiss Alpine Herbs
取り入れてみたいサステナブルなセルフケア習慣

スイス人のハーブティーの使い方は、暮らしを環境に寄り添ったものにしているように見えます。スーパーで売られている多くのハーブティーは、オーガニックやフェアトレードの認証付き。農家や地域を支える仕組みにつながっており、飲むことで「環境や人に優しい選択」につながります。
また、ティーバッグは紙や植物由来の素材が使われているものが多く、なかには使用後はコンポストで土に還せるタイプもあります。「体調の変化には、まずはお茶を飲む」という小さな習慣は、自分の体をいたわると同時に、未来の環境にも優しいセルフケアといえるのではないでしょうか。
日本でも、いつものティータイムを少し工夫するだけで、セルフケアやサステナブルな暮らしにつなげられます。
- 自分の気分や体調にマッチするハーブティーを選ぶ
- オーガニックやフェアトレードのハーブティーにする
- 土に還る素材のティーバッグを選び、飲み終えたらコンポストへ
小さなことですが、自分の体を、そして環境を大切にする行動といえます。お気に入りのマグを用意して、気分や体調に合わせてお茶を選ぶのは、心を整える時間にもなりますよ。
ライター
アルパガウス 真樹
スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。