カヌーの発祥はどこ?
東京オリンピックの開催が近づき、日本人選手の活躍が期待されています。なかでも、注目を浴びている競技としてカヌーがあげられます。
みなさんの記憶にも新しい2016年リオ五輪の際には、羽根田選手がカヌーで日本勢初の銅メダルという快挙を成し遂げました。
東京五輪でもメダルが期待されているカヌー競技ですが、カヌーは歴史の古いスポーツで古来より世界中で人々の生活を支えていたという記録・遺構が残っています。
カヌーの起源は6000年以上前!
カヌーの発祥の地は所説あり、6000年以上前、現在のイラク付近で栄えた古代メソポタミア文明の時代までさかのぼります。
その文明を築いたシュメール人の王墓からカヌーのような丸木舟が発見されています。
このメソポタミア文明はチグリス・ユーフラテス川の地域で発展してきたので、カヌーが生活の重要なインフラを担っていたのでしょう。
そのほかにも、カヌーの発祥地としてさまざまな地域があげられており、エジプト・中央アジア・東南アジア・オセアニアなどの地域でその痕跡が残されています。
いずれも大河や海など水辺を生活の拠点としていた地域が多く、運搬や狩猟・漁業の際にカヌーのような丸木舟を使い、人々の生活を支えていたと思われます。
日本でも丸木舟(カヌー)が発見されている
島国である日本でも、カヌーのような丸木舟が古くから生活の役に立ってきました。2017年に、千葉県市川市雷下遺跡から、約7500年前のものとみられる丸木舟が発見され、考古学的に重要な発見として注目を集めています。
これは前述したメソポタミア文明と同時期かより古いものであると推測されます。縄文時代の日本が、当時の最も栄えた文明と同じ高度な航海技術があったと思うと、歴史のロマンを感じますね。
移動手段のカヌーがスポーツへと発展
カヌーが移動手段からレジャーやスポーツへと発展したのはイギリスといわれています。
1865年にイギリス人ジョン・マッグレガーが自作のカヌー(正確にはカヤック)でヨーロッパのさまざまな河川をめぐり、その体験をまとめた著書が人気となり、イギリスを中心にヨーロッパでカヌーがレジャーとして人気になったのです。
1866年には世界ではじめてのカヌーレースがテムズ川で開催されました。
カヌーはベルリン大会からオリンピック競技へ
1924年にはコペンハーゲンで国際カヌー連盟が設立。1930年に初の世界選手権大会が開催されました。オリンピックの正式種目になるのは1936年ベルリン大会で、男子のカヌースプリント競技です。
その後、1948年にロンドン大会では女子のスプリント競技が正式種目として採用され、1972年ミュンヘン大会では男女ともにスラローム競技が正式種目になります。
日本カヌー協会の設立
日本では、1936年のベルリン大会の折、日本の競技選手団が折りたたみ式カヌー(ファルト)を持ち帰りました。これが日本でカヌーが広まるきっかけになったといわれています。
2年後の1938年には「日本カヌー協会」が設立され、実質的に活動するのは第二次世界大戦後になります。終戦後、日本は「国際カヌー連盟」に復帰すると、1960年には日本カヌー協会が再開。
1964年には第18回オリンピック東京大会でフラットウォーターレーシング(スプリント)が正式種目として採用され、ここから日本でのカヌー競技は大きく飛躍をとげていくことになります。
世界各国のいろんな種類のカヌー
ここまで、カヌーの歴史をひも解いてきましたが、各国にはさまざまな種類のカヌーが現在も活躍しています。どのようなカヌーがあるのかみていきましょう。
北米・ヨーロッパのカナディアンカヌー
カヌーときいてまずイメージするのは、北米圏・特に北のアラスカやカナダでおもに用いられているカナディアンカヌーではないでしょうか?
いわゆる丸木舟のような形で、シングルパドルをつかい、1~2人でこぐタイプのカヌーです。
古くからアラスカのネイティブアメリカンの人々の生活の重要な移動手段として役立ってきました。このカナディアンカヌーがヨーロッパ圏に伝わったといわれています。
また、同じくアラスカやカナダで活躍しているカヤックもカヌーの一種に入ります。
カナディアンカヌーとの違いは、ダブルブレードパドルを使うことと、スプレースカートと呼ばれるものを用い、運転手とカヤックを覆ったクローズドデッキタイプであることです。
当時は、アラスカの海でアザラシなどを狩猟する際、海水の流入を防ぐためにアザラシやトナカイの皮をはっていました。
ちなみに、カヤックが転覆した際、カヤックから出ずに回転して浮上する「ロール」という技術がありますが、これはアラスカの極寒の海に投げ出されることは命取りになるため、カヤックから脱出せずにリカバリーする技術が必須だったためです。
操船技術ひとつとってもお国柄の違いがあり、とても興味深い乗り物と言えます。
南太平洋・インド洋地域のアウトリガーカヌー
ところ変わって、あたたかい南方・ポリネシア、ミクロネシア、東南アジア、インド洋の一部などに広く分布しているカヌーに、アウトリガーカヌーというものがあります。
アウトリガーとは「浮き」のことで、カヌーの横に浮きが張り出しているのが特徴です。
アウトリガーカヌーは安定性が非常に高く、高波を受けても転覆せずに長距離を移動することができます。漁はもちろん、海をわたって他の島々と交流することもできました。
このアウトリガーカヌーは分布域がとても広大で、マダガスカルからイースター島までと南太平洋の広い範囲を網羅できるほどです。
アウトリガーカヌーの起源はいまだはっきりとしたことはわかっていませんが、このようにさまざまな地域で人々の生活に根差しているのは、アウトリガーカヌーが長距離移動に適したカヌーであり、広範囲にわたる航海が可能だったことを示唆しています。
日本にもカヌーのような舟が存在していた
最後に日本のカヌーについてです、前述したように古くから日本にもカヌーのような舟はありました。
現在でもその特徴を色濃く残しているものがあります。北海道のアイヌの人々が使用していた「チプ」というカヌーのような舟があります。河川や湖沼を移動する際に用いられていたということです。
現在でも、千歳市及び千歳アイヌ協会でアイヌ文化の伝統を守る取り組みとして、このチプを新造する取り組みが進められています。
また、沖縄ではサバニとよばれる小型のカヌーのような舟が古くから漁に用いられてきました。旧暦の5月4日には豊穣祈願行事「ハーリー(ハーレー)」というレースが行われます。
色とりどりに装飾が施されたサバニを大勢の人々が競漕する姿は迫力満点です。
ライター
Greenfield編集部
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