ウイングフォイルは、ウィングとフォイルを組み合わせたスポーツです。ウイングフォイルを知るために、今回はフォイルとはどんなものなのかを解説します。

フォイルはまさに水中飛行機

フォイル

フォイルとは端的にいうと“水中翼”のことです。

フェリーなどの船を指す名称に「水中翼船」という言葉があるように、フォイルは決して新しい物ではありません。ただ、今まではこれを水上スポーツでは利用していなかったのです。

 

揚力を使って浮上するフォイルの形状

飛行機の翼がスピード増加に伴う空気の流れによる“揚力”で機体を浮かせていくように、フォイルは水流が生み出す揚力によって、ボードなどの艇体と操縦者を浮かせます。

水中翼船のフォイルや、注目されるきっかけとなったアメリカズカップの使用艇などは、重量のある大型船にはフォイルの剛性など、さまざまな面からL字型の片翼形が採用されています。

小さなボード+操縦者で楽しむ水上スポーツの場合は、軽量なため飛行機の翼のような両翼形のフォイルとなっています。

飛行機にも似たフォイルの構造

ボードのボトムから水中に垂直に伸びた巨大なフィンのような形状のマスト(帆柱、翼柱の意味)の先端に、直角に水中翼(両翼形)が付いている構造で、さらに主翼と尾翼を備えています。

まさに飛行機と似たような形状なのです。

これをボードのボトムに装着することによって、走行時にフォイルを水中に保ち、そして水流が両翼にもたらす揚力によってボードはリフトし、水面から浮いた低抵抗状態での走行ができるのです。

低抵抗がもたらす高いスピードと無音の走行感が魅力

フォイルによって、推進力に対する走行速度は劇的にアップし、弱い推進力でも高いスピードが実現しました。

フォイル注目のきっかけとなったアメリカズカップの使用艇の最高速度は、巨大ヨットにもかかわらず、今や約90km/hと言われるほどです。

また、衝撃が少なく、無音に近い静かな走行感もフォイルの特徴です。

今までにない魅力によって、フォイルは水上のボードスポーツに急速に広がり、今後は標準的なアイテムになっていくことは確実でしょう。

水上スポーツにおけるフォイルの歴史

船の一形態として以前から存在したフォイルを、水上スポーツのジャンルに導いたのは、国際的なメガヨットレースのアメリカズカップ使用艇での採用です。

しかし、その前にマリンスポーツでは一部の人がフォイルを利用していたのです。

2000年代にデイブ・カラマやレイヤード・ハミルトンなど一部のハワイ・マウイ島のウィンドサーファーが、手作りでフォイルを作り、ボードのフィンボックスに取り付けていました。

そして、水上バイクで牽引しビッグウェイブに乗るトゥイン サーフィンでフォイリングを実践したのです。

しかし、そのフォイルは本格的な商品化には至らず、ギアとしてもスポーツとしても、フォイルは特殊な位置付けに留まったのです。

これがアメリカズカップでの使用によって、先行していたウィンドサーフィン界でとくに再注目されて一気に商品化が始まりました。

また、すぐにSUPやカイトボーディング、サーフィンなどの水上で楽しむボードスポーツへと拡散していったのです。

フォイル各部の名称と役割を知っておこう

フォイル

 

フォイルは一般には全くと言っていいほど馴染みがないギアです。言葉も専門用語ばかりのため、ここでフォイル各部の名称やその役割などを解説します。

①フロントウイング/Front Wing

フロントウイングは飛行機の主翼にあたるものです。

形状や厚み、翼断面などの違いによって、リフト、スピード、ターンと、そのフォイルのすべての性能を司っています。

形状はアスペクト比(縦横比)と厚みの違いで表現され、細くて長いものは高アスペクト、逆に幅広く短いものは低アスペクトとなり、各々異なる性能の傾向を持っています。

高アスペクトのものはスピード性、レスポンスともに高く上級者向き、低アスペクトのものはリフトが強く、性能はソフトでマイルドです。

最新機種では先端に立った小さな板(ウイングレット)が付いているモデルも登場し、まさにエアバス機の翼と同じ形状となっています。

フォイル

⓶マスト/Mast

マストとは本来は帆柱、セールの支柱の意味ですが、フォイルでは翼柱となり、断面も帆柱のような円形ではなく、フィンのような翼断面形を持っています。

マストが長い方が操作性も含めて高速走行に優れ、ポンピングという加速テクニックがしやすいなど多くの利点がありますが、入門者は75cm程度の長さがおすすめです。

ウイングを引き込んで風をはらんだときは別ですが、風に流しておけば、女性でも片手で楽に持てるほどの軽さです。

③Mount/マウント

マウントをボードのボトム(底面)にあるボックスに取り付けます。

SUPやウィンドサーフィンなどで、フィンを取り付けているフィンボックスと同じです。

フォイル用でのフィンボックスタイプは、タトルとUSの2タイプが使われています。

当初はタトルが主流でしたが、現在はUSボックスのロングタイプも増えています。

SUPやウィンドサーフィンなどのボードとボックスタイプがほぼ同じであることから、手持ちのボードにフォイルを装着することも可能なのです。

ただし、フォイルを本格的に楽しむには、やはりそれぞれのスポーツにおけるフォイル用ボードとのセットでの使用をおすすめします。

④フューサレージ/Fuselage

フューサレージとは機体の意味です。

フォイルではフロントウイングとリアウイングを取り付けるパーツがこれに当たります。

フューサレージが長いと安定性が高まり、短いと回転性が上がるなど、長さによって性能が変わります。

⑤リア(テール)ウイング/Rear Wing

リア(テール)ウイングは、飛行機における水平尾翼にあたります。

回転させようとするモーメントを抑え、安定性を司る重要な部分です。上昇を生み出すフロントウイングとは反対の下向きの力を発生させ、バランスを保ちます。

浮上走行という革命を起こしたフォイル。水上のボードスポーツにおいて、フィンと同レベルの重要ギアとなっていくことは確実です。今までにない魅力的なそのスピード性能と走行感は、水上のボードスポーツ未経験者はもちろん、これまでを知っているだけに経験者の心を、深くワシ摑みにするポテンシャルを持っています。ぜひ、トライしてみてください。

ライター

Greenfield編集部

自然と向き合い、環境に配慮しながらアウトドアスポーツを楽しむ人に向け、自分や周囲のウェルビーイングの向上につながる情報をお届けします。