天気全体についての基礎知識を解説する「天気を知る」シリーズの最終回となります。また「風」「波」「海流・潮流」「天気」と続いてきた「知っておきたい海の気象」はこれで最後となります。フィナーレの今回は、最近話題の気象現象について取り上げます。

「エルニーニョ」と「ラニーニャ」

気象 天気 基礎知識

最近の天気予報では、以前は使われていなかった「エルニーニョ」と「ラニーニャ」という言葉が聞かれます。

それが異常気象の原因として徐々に使われるようになり、異常気象が頻発するにつれ、「エルニーニョ」と「ラニーニャ」という言葉は、最近の天気予報では定着しています。

太平洋の熱帯域の海水温分布が異なる状態

エルニーニョとラニーニャは、太平洋の熱帯域の海水温分布が通常と異なっている状態を指しています。この区域の海水温は、通常では東の南米沖で低く、西のアジア沖では高くなっています。

しかし、アジア沖ではいつもより低く、南米沖で高い状態になることがあります。この状態のことをエルニーニョと呼び、その反対の状態のことをラニーニャと呼びます。

はじめはペルー沖の水温上昇の研究がきっかけで、この水温異常のことをエルニーニョと呼びました。

しかし研究が進むにつれて、これは局地的ではなく、太平洋の赤道海域全体が連動している大規模な現象で、しかもシーソーのように変化することが判明。

そのためエルニーニョの反対の状態のことを、のちにラニーニャと呼ぶようになったのです。

海水温の変化による影響は異常気象にもつながる

熱帯の水温や気圧が変化すると、熱帯での低気圧の発生場所も東西にズレが生じます。

このズレは太平洋高気圧の位置のズレ、さらに日本上空の偏西風のルートにも影響を与え、日本の天候にも大きな影響を及ぼします。

このように遠く離れた南米沖の海水温変化が、連鎖式に日本をはじめ世界中の天候に影響を与え、各地で起こっている異常気象にもつながっていくのです。

日本が猛暑になるか、厳冬になるかなどの予想に、今ではこのエルニーニョ、ラニーニャの予想が欠かせない存在となりました。

 

すでに顕在化している「地球温暖化」

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19世紀の産業革命以降、地球の温度は急激に上昇し、今世紀末には日本の平均気温が約4.4℃上昇、海面は最大82cm上昇すると予測されています。

地球温暖化の原因は、大気中に含まれる水蒸気や二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスに、今まで以上の熱が蓄えられるために起こります。

温暖化は気象にも影響する

地球全体の平均気温は14℃前後です。しかし、この温室効果ガスがなければマイナス19℃くらいになります。

温室効果ガスの濃度バランスが、地球の快適な環境全体を作り出しているのです。この濃度が人間の営みによって上昇し、バランスが崩れて温暖化につながりました。

温暖化の影響はさまざま。気象・環境では、気温上昇/熱波、海面上昇、干ばつ/砂漠化、洪水の増加/激化、台風の激化、海洋酸性化、生物多様性の損失などです。

社会生活では、感染症の拡大、食料不足、難民の増加、漁獲量減少、季節感の喪失などです。将来というよりは目前の人類共通のテーマとして、私たちも高い意識を持つように心がけたいところです。

日本の区分にはない「スーパー台風」

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スーパー台風とは、平均の最大風速が67m/s (130kt) 以上というJTWC(米軍合同台風警報センター)が定める最強区分の台風のことです。

他国でも風速に応じて台風の階級を設け、そのなかにスーパー台風という階級があります。いずれにしても最強の勢力を持つ台風のことを指しています。

日本では「猛烈な台風」

日本の気象庁にはスーパー台風という基準はありません。他国が台風の最大風速を区分の基準にするのに対し、日本は中心気圧を用い、風速には「猛烈な」などの形容詞が使われています。

最大風速54m/s (105kt) 以上の「猛烈な台風」がスーパー台風に該当し、1959年の伊勢湾台風がそのスーパー台風に相当すると言えるのです。

 

2つの微粒子「黄砂」と「PM2.5」

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「黄砂」と「PM2.5」は、最近天気予報にも登場するようになった微粒子を指した言葉です。

この2つの微粒子は人の健康にも悪影響を与えるため、その飛来予報が天気予報にも組み込まれるようになりました。

中国内陸部から遠く飛来してくる黄砂とは

黄砂とは、気象現象を指す名称です。中国大陸の内陸部のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠などの土壌や鉱物粒子が、風によって数千mの高さにまで巻き上げられ、それが偏西風に乗って日本に飛来し、大気中に浮遊や降下する現象のことを指します。

巻き上げられた黄砂は周辺地域にとどまらず、大気中に浮遊して雲の発生や降雨を起こし、地球全体の気候にも影響を及ぼしています。

黄砂現象は近年頻度と被害が大きくなっていて、単なる自然現象から環境問題としての認識が高まっています。

日本まで到達する粒子の直径は最大4ミクロン程度で、石英や長石、雲母などの鉱物が多数含まれるだけではなく、途中で大気汚染物質を取り込んでいる可能性も示唆されているのです。

体調不良を引き起こす可能性があるPM2.5とは

PM2.5は、大気中に浮遊している直径2.5ミクロン以下の非常に小さな粒子のこと。

PMとは英語での粒子状物質の頭文字をとったもので、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染の原因となる粒子状の物質のことです。

超微粒子のため肺の奥深くまで侵入し、呼吸器系疾患や肺がんだけでなく、不整脈など循環器系への影響まで懸念されている粒子です。

そのため、日本では2009年に環境省がPM2.5の環境基準を定め、天気予報の中でもPM2.5の濃度情報が伝えられるようになっているのです。

アウトドアライフの経験を重ねてくると、大自然への感謝や畏怖とともに、天気は行動を決める最重要の要素となってきます。生活が都市化された今こそ、天気の重要性を忘れないようにすることが大切です。この記事で、この章と「知っておきたい海の気象」シリーズを終わります。ぜひ、この記事を参考にして気象に対しての知識を持ち、事故のないウォーターアクティビティを楽しんでください。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。