子どもの外遊びは身心の成長につながる
ここでいう心身の成長とは、心の発育・発達と体の発育・発達を指してます。
まず、心の発達とは、クリエイティブな発想や問題解決能力、自主性やコミュニケーション能力のことを指します。
体の発育発達とは、健康で丈夫な体を指し、これらは情緒の安定につながるため身心の成長にもつながるのです。
子どもの心身の成長を促すためには、質の高い教育を実施する必要があります。
「質の高い教育をみんなに」というのは、国連が提唱しているSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の中の1つです。
質の高い教育をみんなに届けるために、UNESCOは、ESD(Educational for Sustainable Development)を推進していて、これに子どもの外遊びが効果的であることがいわれています。
外遊びでは、自然と触れ合う中で子どもたちが楽しみながら自然を感じます。
この自然とのかかわりは、ESDの基本の1つです。光松の報告では下記のように報告されています。
ESDの基本は、地球規模で問題を捉えることにあるが、行動は身近なところから起こすことが特徴的である。地球規模の問題は自分が動いたところで劇的に変わるものではないが、自分が住んでいる地域、身近な問題は自分の行動で変えることができるかもしれない。身近な地域であれば、子供たちが何度も繰り返し、関わることができる。
つまり、子どもたちが身近な自然と触れ合う外遊びは、子ども自身が自然や環境について考えるための基礎となり、ゆくゆくは子ども心身の成長となるわけです。
子どもが自然とかかわりをもつことの意味
子どもが自然とかかわりをもつことの意味として、光松の報告では下記のように述べられています。
受講生は短期大学部保育課所属の2年生で、4週間の教育実習を終えた6月に質問した。自由記述の回答を表1に示す。回答群を「自然を理解する」、「環境に対する意識、生命の大切さ」、「想像力、発想力、表現力、豊かな心」、「問題解決」、「自主性」、「コミュニケーション」、「健康」の7つに分類することができる
本記事では、この7つの群を大きく4つに分類して解説します。
自然を理解して環境への意識・生命の大切さがわかる
自然を理解して環境への意識・生命の大切さがわかるのは、子どもの外遊びにおいてとても大切です。なぜならば、身近な自然や生命を感じることは、地球規模で起こっている環境問題につながるからです。
例えば、日本の環境汚染は深刻です。野菜や果物の生産している種類は、海外と異なるものの、単純に面積あたりの農薬使用量で比較すると、トップクラスで農薬が使用されていると言われています。
この農薬や化学肥料などに含まれるリンや窒素が土壌から川・海へと流れ、アオコが発生するのです。
琵琶湖のアオコの発生をみてみると、平成28年に過去最高日数を記録しているほどです。
もし、琵琶湖でカヤックやSUPなどを体験してみるとアオコが発生しているのを見ることができるかもしれません。
このように、身近な日本の自然にも地球の環境問題は数多くあります。
自然への意識や生命の大切さを理解することは、質の高い教育につながるため心身の成長にもつながります。
子どものクリエイティブな発想を培える
子どものクリエイティブな発想を培うのに、外遊びはとても効果的です。
たとえば、ゲームやおもちゃのない自然の中では、自然の素材自体がおもちゃになります。
しかし、その自然の素材をどのようにして遊ぶのかは子どもしだい。
発想力や想像力、表現力が求められます。
國家の研究では、子供期の外遊びに関して下記のように述べられています。
そう考えた上でなお、子ども期というのは、全身を使っての遊びを通して、種々の直接体験を積み、五感を研ぎ澄ませて、身近な人、物、自然の環境に触れ、この世界からの印象を身体に刻み込んでいくのにふさわしい時間であり、大人の介在がある場合は別として、文字や映像を通じて間接的な経験を重ねていくには、いま少しの時間を必要としているのだと言えるだろう。
子どもの自主性と問題解決能力
アウトドアでは、子どもは自ら考え行動し、自主的に動きます。これが、自主性と問題解決能力を育むのです。
子どもの自主性や主体的な思考力の成長を妨げる要因には、親の過干渉や過保護があります。
親の過干渉や過保護について浅見は下記のように述べています。
現在の社会状況のもとで、親の過干渉や過保護が子供の自主性、主体的な思考力の成長を阻害し、遊びや生きる子どもの生活空間を縮小させてしまうと考え、体験学習を学びの出発点であると位置づけた。
小学校の学習指導要領総則は、平成29年度に改訂されていて総則改定の要点として下記のように報告されています。
①資質・能力の育成を目指す「主体的・対話的で深い学び」
・言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力や、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を教科書等横断的な視点に基づき育成されるよう改善した。
つまり、子どもの主体的な外遊びを通して、問題発見・解決能力が身につくのです。
子どもが健康になる
外遊びなどのアウトドア活動には、、親や学校の先生など関わっている人達の健康をも増進します。
西浦の日本創造学会SIGアクティブ・ラーニング特集の中では、外遊びなどのアウトドア活動について下記のように報告されています。
アウトドアに費やす活動と時間は、教師と子どもの健康と幸福感(well-being)を改善します。アウトドア活動自体が自然と一体になっているのです。アウトドア環境によって、子供と教師の両者がいつもと違った一面をみせてくれます。継続的なアウトドア活動は、ストレスに関連した病気や、他の健康問題を減らすことができるのです。
出典:西浦和樹(2017).アウトドア教育で科学するこころを育てる創造的問題解決による知識の活用を促す教授法とその実践 日本創造学会論文誌20:26-29.
つまり、外遊びなどでアウトドア活動すること自体が、子どもたちを健康にしてさらには幸福感も高めてくれるのです。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。