イタリアでも各都市でマラソン大会が開かれています。今回参加したヴェネチアのSu e Zo per i pontiという大会は、街中にある45個もの橋を渡る少し変わった大会。このSu e Zoについての体験レポートをご紹介します。

Su e Zoはヴェネチア方言で「上り・下り」

 

Su e Zoというのは、ヴェネチアの方言で上ると下がると言う意味で、この大会の正式名称Su e Zo per i pontiは「橋の上り降り」という意味になります。

その言葉どおり、このマラソン大会の一番の特徴というと、コース中にとにかく橋が多いということ。

コースは12.5㎞と6.5㎞の2つあり、長い方は45個、そして短いコースでも23個の橋が含まれています。

「水の都」とも言われるヴェネチアは、街中に橋があり、とても美しい景色です。

しかし、ヴェネチアに住む人たちにとっては、悩みの種でもあるよう。

重たい食料品をなどを持って、いくつも橋を渡ったりするのは大変です。

また、平坦な道よりも膝に負担がかかるので、膝を痛める人も多いといいます。

そしてヴェネチアは路地が狭いこともあり、自動車も自転車も禁止なんです。

車の代わりに船が通っていて、大きな運河沿いに船着き場も多くあります。

しかし、船はすぐに来なかったり、観光客が多すぎて乗れないなんてことも。

そのため、ヴェネチアの人はよく歩きます。

このSu e Zoは、そんなヴェネチアの地の利である橋を楽しみながら、新しい発見をしようという趣旨のもと始まったものです。

 

 

ヴェネチア特有の狭い路地でマラソン大会

出典:Su e Zo.it

 

もう1つこのマラソン大会の特徴としては、コースの狭さが上げられます。

普通マラソン大会といえば、広い舗装された道で行われます。

しかし、Su e Zoではヴェネチアの街全体がコースになるので、狭い路地なども含まれています。

ヴェネチアは普段から観光客も多く、なるべく観光客に邪魔にならないようなコースが考えられてはいます。

しかし、スタートやゴール地点が、ヴェネチアの玄関口である国鉄サンタ・ルチア駅や「世界で最も美しい広場」と呼ばれるサン・マルコ広場になることが多いので、観光客の間をすり抜けて進まなくてはいけません。

 

 

もともと、ヴェネチアがあった場所は、土や砂が堆積してできた砂州や潟になっていた場所。

敵からの侵略を受けにくいということで、干拓して街となったのです。

干拓してつくったので、場所によって海抜の高低差があり、潮の満ち引きによって起こるアクアアルタ(異常潮位現象)のときには、水没してしまう地区も。

そのため、いたるところに橋があり、路地が入り組んでいてまるで巨大な迷路のようです。

これも世界中から愛される理由なのでしょう。

このような街で行われるマラソン大会なので、狭い路地では人が密集してしまい走ることはもちろん、歩くのも困難な状況に。

もちろん一生懸命走る人もいます。

しかし、ヴェネチア人は一生懸命走るというよりは、友達とおしゃべりしたり楽しみながら歩く人が多いようです。

 

目的は団結+ヴェネチアの街の良いところ探し

 

マラソン大会の目的といえば、普通はタイムや順位を上げることだと思います。

Su e Zoの場合は、「団結して改めてヴェネチアの良いところを散策しながら探すということ」を掲げています。

家族、友達をはじめとして、クラスや学校、スポーツクラブなどのグループで参加をすることで、友情・一緒になにかをする力・団結力などを高めるわけです。

そのため、賞は上位3位入賞以外は20〜50人のグループ、50人以上のグループ、外国人で一番数が多いグループなどに賞がもらえます。

ヴェネチアの幼稚園や小学校では、クラスやグループでの参加が多くあります。

子供たちにとってみたら、近場の遠足という感じで楽しいのかもしれませんね。

 

筆者も今回初めての参加だったのですが、普通のマラソンとは違い、ほとんど歩いているので、いつもとは違ったヴェネチアの風景を堪能できました。またほとんどが地元の人ということで、歩いているとあっちこっちで、「チャオ!元気だった?」とか「あなたも参加したのね〜」といった声が聞こえてきて、とてものんびりとした雰囲気が心地良く楽しく参加できました。このSu e Zoは毎年4月が行われていて、当日参加もできますので、機会があればぜひ参してみて下さい。きっとヴェネチアの良いところが見えてきますよ!

ライター

Greenfield編集部

自然と向き合い、環境に配慮しながらアウトドアスポーツを楽しむ人に向け、自分や周囲のウェルビーイングの向上につながる情報をお届けします。