子どもたちに人気のカミキリムシ。近年、さまざまな外来種が話題になることが増えましたが、「クビアカツヤカミキリ」という昆虫をご存じでしょうか。サクラなどの樹木に入り込み、内部を食害して枯らしてしまう特定外来生物です。日本の春の風景を彩るサクラが、いまこのカミキリムシによる被害にさらされています。身近なサクラを守るため、私たちにできることはないでしょうか。まずは、どんな虫なのかを知り、身近なサクラに現れる異変にも目を向けてみましょう。
※本記事には昆虫の写真が含まれます。苦手な方はご注意ください。

クビアカツヤカミキリとは?サクラに被害を与える外来種

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クビアカツヤカミキリは、主にサクラの樹木を内部から食害する外来のカミキリムシです。成虫は黒い体に胸の赤色が特徴で6~8月に出現しますが、被害を及ぼすのは、木の中で成長する幼虫です。

気づかないうちに樹木の内部で食害が進み、サクラの木を衰弱させることがあります。ウメやモモなど果樹への被害も報告されており、農業に大きな影響を与えるほか、さまざまな樹木を食害することで、生態系への影響も懸念されています。

どんな昆虫?幼虫が木の中で成長

クビアカツヤカミキリは、体長2.5〜4cmほどの大型のカミキリムシです。光沢のある黒い体に、名前の由来にもなった赤い胸部がよく目立ちます。

問題となるのは幼虫です。幼虫は樹皮の内側に産み付けられた卵から生まれ、幹の内部を食べながら2〜3年ほどかけて成長します。この間、外からは見えないですが樹木が大きく傷つけられ、被害が進むと樹木の成長を妨げ枯死の原因となります。

クビアカツヤカミキリには幼虫などを捕食する天敵の甲虫も知られていますが、現在の被害を自然の力だけで抑えるのは難しいとされています。

参照:
捕食寄生性甲虫サビマダラオオホソカタムシのクビアカツヤカミキリに対する室内放飼試験|日本応用動物昆虫学会誌
クビアカツヤカミキリ防除の手引|東京都

どこから来た?原産地と日本での分布

クビアカツヤカミキリは、中国や韓国、台湾、ベトナムなど東アジアを原産とし、日本では2012年に愛知県で初めて確認されました。

国内への侵入過程は明らかになっていませんが、輸入木材や輸送用パレットなどに卵や幼虫が潜んだまま運ばれ、国内で成虫になって繁殖した可能性が考えられています。

10年あまりの間に分布は拡大し、2026年8月現在、関東と近畿地方を中心に22都府県で発生が確認されています。被害のさらなる拡大を防ぐには、発生している地域で個体数を減らし、できるだけ早い根絶を目指すことが重要です。

そのためにも、まずは身近な場所に生息している可能性があることを知っておきたいところです。

参照:
クビアカツヤカミキリ防除の手引|東京都
クビアカツヤカミキリは、 特定外来生物に指定されています|環境省
クビアカツヤカミキリに関する情報|農林水産省

クビアカツヤカミキリの被害は?サクラで見つけるポイント

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クビアカツヤカミキリの被害は、専門的な調査をしなくても、異変に気づける手がかりがあります。それは、「フラス」。

公園や街路樹のサクラを眺めるとき、少し視点を変えてみるだけで、身近な自然の変化を知るきっかけになるかもしれません。ここでは、フラスの見つけ方や被害が進んだサクラに見られる変化について紹介します。

木の根元に「フラス」があったら要注意

フラスとは、幼虫が木を食べたときに出る木くずとフンが混ざったもの。クビアカツヤカミキリの場合、木の幹や太い枝、根元付近の穴から、うどん状につながった木くずが出ていることがあります。

特に幼虫が成長するとフラスの量が増え、根元にまとまって積もることも。薄く削り取られたような木片が混じるのも特徴です。

フラスは主に4月末頃から10月末頃に排出され、特に5~9月は見つけやすい時期です。活動期に出たものが根元に残り、冬に見つかることもあるため、季節を問わず散歩の途中に少し目を向けてみるとよいでしょう。

フラスは、クビアカツヤカミキリだけが出すものではありません。しかし、「根元に木くずのようなものがある」と気づけること自体が、被害の早期発見につながります。

被害が進むとサクラはどうなる?

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クビアカツヤカミキリの幼虫による食害が進むと、サクラは内部からダメージを受け、枝の枯死や樹木全体の衰弱につながることがあります。

被害が著しい場合には枯れてしまうこともあり、公園や街路樹では落枝や倒木によって人や周囲の施設に影響を及ぼす可能性もあるため、私たちの安全にも関わる問題です。

もともとサクラは、植えられてから長い年月を経た高樹齢の木も多く、樹木そのものが少しずつ負担を抱えています。そこに近年の猛暑や激しい風雨などが重なると、さらにダメージを受ける可能性があります。

春になると当たり前のように楽しんでいるサクラの景色も、ずっと続くとは限りません。だからこそ、開花の時期以外にも身近なサクラを気にかけ、幹や根元にも目を向けてみる。ちょっとした意識が、サクラのある風景を守ることにつながります。

参考:
クビアカツヤカミキリ防除の手引|東京都

クビアカツヤカミキリを見つけたら?正しい対処法を知ろう

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クビアカツヤカミキリを見つけたときは、被害を広げないためにも、適切な対応が大切です。可能な場合はその場での駆除が求められます。クビアカツヤカミキリは「特定外来生物」に指定されており、生きたまま持ち運ぶことなどが法律で規制されているからです。

地域によって対応方法や報告先が異なるため、自治体の案内を確認してみてください。

見つけたときはどうする?駆除方法と注意点

クビアカツヤカミキリを見つけたら、発見場所や状況を記録し、土地や施設の管理者、自治体の窓口、環境省の地方環境事務所などへ連絡しましょう。見つけたときの状況を伝え、可能であれば写真も撮影しておくと確認に役立ちます。

成虫を捕まえた場合は、その場で殺処分します。何であれ、生きものを殺すことに抵抗を感じる場合もあるでしょう。

しかし、クビアカツヤカミキリは「特定外来生物」に指定されているため、飼うことはもちろん、生きたまま別の場所へ持ち運ぶことは法律で禁止されています。

なお、死んでいる個体であっても情報提供しておくと、地域の被害状況を把握する手がかりになります。

外来生物について詳しくはこちら

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自治体による捕獲・駆除の取り組み

被害の広がりを抑えるため、自治体では市民も参加できるさまざまな取り組みが行われています。奨励金や報奨品を設けたり、ボランティアが見回ったりするなど、地域の状況に合わせた方法で対策が進められています。

たとえば埼玉県川島町では、2026年度、成虫1匹につき100円の「駆除奨励金」を交付する制度を実施。予算の上限に達したため7月16日に受付終了となりましたが、約7万匹の成虫が駆除されました。

埼玉県越谷市では、成虫3匹を提出した人に埼玉県産材の報奨品を、東京都福生市では成虫10匹で福生市共通商品券500円分を渡す取り組みを実施しています。

また、京都市では「クビアカツヤカミキリパトロールボランティア」を、奈良県でも「サクラ見守り隊」を市民から募り、被害確認や成虫駆除に取り組んでいます。

身近なサクラに目を向けることから始めよう

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クビアカツヤカミキリが新たな外来種として紹介されたのは、筆者の住む自治体でも10年ほど前のこと。それが今では、近所の公園や桜並木のサクラが次々と被害を受けるまでに広がっています。

子孫を残そうとする生きものの力は、人の力で簡単に抑えられるものではありません。外来種を故意に持ち込まないことはもちろん、意図せず侵入した場合も、広がる前の早期対応が鍵。一人ひとりが身近なサクラに目を向けることが、被害の拡大防止につながります。

参照:
最新情報追加!クビアカツヤカミキリを駆除した方に奨励金をお出しします|川島町
クビアカツヤカミキリを退治してくれた方に報奨品をお渡しします! |越谷市
クビアカツヤカミキリを駆除した方に奨励品を交付します|福生市
クビアカパトロール募集(京都の自然を守るボランティアプログラム2026) | 京都市
サクラ見守り隊ボランティア隊員の募集を開始しました |奈良県

子どもとの散歩や買い物の途中にサクラを眺めることも、身近な自然を守る第一歩。花の季節だけでなく、季節ごとの変化にも目を向けることで、サクラを身近な自然として大切にする意識につながります。いつもの通り道にあるサクラが、これからも春の風景として残っていくことを願いたいものです。

曽我部倫子

ライター

曽我部倫子

東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。

子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。