カリフォルニアに秋が訪れる9月から11月、庭のりんごの枝はたっぷりの陽ざしを浴びて、実の重みでゆっくりとしなります。スーパーやファーマーズマーケットには地元農家のりんごがずらりと並び、店内には甘い香りがふわりと広がります。わが家の庭の木も毎年のように豊作で、家族だけではとても食べ切れない量のりんごが実ります。干しりんご、ジャム、クランブル……台所で手を動かしながら工夫して“使い切る”ことは、いつの間にかわが家の秋の恒例行事になりました。本記事では、そんな我が家流のりんご活用法と、そこに息づくサステナブルな暮らしの哲学を紹介します。

カリフォルニアの秋、庭にりんごが実るころ

カリフォルニアは、強い日差しと乾いた気候に恵まれたフルーツの一大産地で、りんごも全米有数の生産地です。州内の各地にはU-pick(ユーピック)の農園※1 があり、秋になると家族でりんご狩りを楽しむ、季節の定番行事になっています。

一方で、庭木や小さな果樹園に実った“余りもの”の果物をボランティアが収穫してフードバンクに届ける「gleaning(グリーニング)」の取り組みも、各地で行われています。採れすぎたりんごが、地域の仕組みを通じてみんなの食卓につながっていきます。

さらに、自家製のジャムや干しフルーツを家庭のキッチンで作り、ファーマーズマーケットやフェスティバルなどで販売できる「Cottage Food Law(コテージフード法」)の存在も、こうした暮らしを後押ししています。庭のりんごを干したり、煮たり、焼いたりして無駄なく使い切ることは、わが家にとっても保存食づくりであると同時に、カリフォルニアらしいフードロスの減らし方を実践することだと感じています。

こうした背景のなかで暮らしていると、「庭のりんごが余る」という状況も、捨ててしまうべき“困りごと”というより、誰かの食卓やしごとにつながる「資源」に見えてきます。だからこそ、わが家でもできるだけ無駄なくりんごを使い切り、干しりんごやジャム、クランブルといったレシピを通して、そのアイデアをシェアしていきます。

※1 U-pick農園:自分の手で果物や野菜を収穫できる農園。来訪者は、園内で育てられた作物をその場で収穫し、持ち帰る体験ができる

参照:
California Gleaning & Food Recovery Organizations
California Department of Public Health (CDPH) Cottage Food Operations

わが家流・りんごを「食べ切る」工夫

せっかくの自然の恵みを無駄にしたくない——そんな想いから、わが家では「干す」「煮る」「焼く」「瓶詰めする」など、あらゆる方法でりんごを楽しんでいます。ここでは、中でもわが家でとくに人気のある4つのりんご活用法を紹介します。

干しりんご ― 自然の甘みをぎゅっと凝縮

薄くスライスしたりんごをレモン汁に軽くくぐらせ、天日やオーブンでゆっくりと乾燥させます。カリフォルニアの乾いた空気は、干しりんごづくりにぴったり。数日もすれば水分が抜け、噛むほどに甘みが増す自然のスナックが完成します。

保存期間が長く、ハイキングやキャンプの行動食としても重宝します。自然の力を借りて作る干しりんごには、どこか懐かしい味わいがあります。でき上がった頃には、キッチンにふわりと甘い香りが漂い、家族の手がつい伸びるのもお決まりの光景です。

りんごジャム ― 朝食が待ち遠しくなる香り

完熟したりんごは、ジャムにすれば長く楽しめます。皮をむいて小さく切り、砂糖とレモン汁を加えて鍋でコトコト煮詰めるだけ。シナモンを少量加えれば、アップルパイのような香りに包まれますよ。

トーストやヨーグルト、オートミールとの相性も抜群。朝食のたびに、りんごの季節を思い出します。保存容器に入れて冷蔵庫で保存すれば1〜2週間、湯煎でしっかり殺菌し、瓶詰めにすれば数か月〜1年ほど常温で保存できます。甘さ控えめに仕上げると、ポークソテーやカレーの隠し味にも活躍。

アップルクランブル ― オーブンから広がる、香ばしいおうちおやつ

りんごを薄切りにして耐熱皿に並べ、バター・小麦粉・砂糖を混ぜたクランブル生地をのせて焼きます。オーブンから漂う香ばしい匂いは、家じゅうをあたたかく包み込みます。表面はサクサク、中はとろりと甘酸っぱく、家族の笑顔が広がります。

カリフォルニアではアウトドア用オーブンを使ってキャンプで作る人も多く、自然の中で焼きたてを頬張る時間は格別です。シンプルながら、心を満たす秋の定番デザートです。

アップルパイフィリングの瓶詰め ― 保存食にもギフトにも

りんごが一度に採れすぎたときは、アップルパイフィリング(パイ用りんご煮)の瓶詰めが便利です。薄いくし切りにしたりんごを砂糖とレモン汁、シナモンで煮詰めて瓶に詰め、湯煎でしっかり殺菌すれば、常温でも数か月〜1年ほど保存できます。

パンケーキやヨーグルトのトッピング、アイスクリームを添えるだけで立派なデザートに。ラベルを貼ってギフトにすれば、手作りのぬくもりが伝わる贈り物になります。寒い冬の日に開けると、秋の香りがふわっと蘇る——そんな幸せな保存食です。

サステナブルな暮らしに通じるりんご活用

りんごを使い切る工夫は、単なる料理のアイデアにとどまりません。自然の恵みを最後まで生かすことは、暮らしをより豊かに、そして持続可能にしてくれます。ここでは、りんごを通じて見えてきたサステナブルな暮らしのヒントを紹介します。

家庭でできる小さな食品ロス削減

熟しすぎたりんごも、形がいびつなりんごも、工夫次第でおいしく生まれ変わります。紹介した活用法以外にも、たとえば煮詰めてソースにしたり、スムージーに加えたり。小さな一手間が、食品ロスを防ぐ第一歩になります。

「食べ切る」という意識は、買い方や保存方法にもつながります。自然の恵みを大切に扱う気持ちが、暮らし全体をやさしく変えていくのです。

加工して残す、旬を楽しむ知恵

旬の果物を形を変えて残すことは、昔から続く暮らしの知恵です。干す・煮る・焼くという行為には、時間を味方につける豊かさがあります。冷蔵庫に並ぶ瓶詰めや乾物を見るたびに、自然の循環を感じることができます。

“待つ時間”が心のゆとりを育ててくれる——それこそが、現代の忙しい生活に必要なサステナブルな視点かもしれません。

地産地消は「食卓から始まる」

カリフォルニアでは週末ごとにファーマーズマーケットが開かれ、旬の果物が並びます。農家と直接話しながら選ぶことで、食べ物との距離がぐっと近くなります。

地元のりんごを選ぶことは、輸送による環境負荷を減らし、地域経済にも貢献する行動です。地産地消は、大きな理念ではなく、家庭の食卓から始まる小さな実践なのです。

“食の循環”が教えてくれること

りんごの皮や芯はコンポストに入れ、翌年の肥料になります。そこからまた新しい実が実り、再び食卓に戻る——そんな循環の中に、自然と人の関係が見えてきます。

食べ切るという行為は、自然と共に生きる感覚を取り戻すこと。りんごを通じて学んだのは、「使い切ること」こそ、豊かに生きる知恵だということです。

自然の恵みを無駄にせず、長くおいしく味わうことが、サステナブルな暮らしにつながります。りんごひとつあれば、そのまま食べるだけでなく、干したり、煮たり、焼いたり、ジャムにしたりと、形を変えて何度でも楽しめます。今日はそのうちひとつだけでも、新しい食べ方を試してみませんか。カリフォルニアの太陽の下で育ったりんごを、最後までおいしく食べ切ること。それが、わが家で続けている、小さなサステナブルの習慣です。 

Kazumi Kawagoshi

ライター

Kazumi Kawagoshi

大学で国際文化・環境を学び、卒業後、小笠原父島で5年間の島暮らしを経験。現在、世界一高いレッドウッドの森と太平洋を望む米カリフォルニア州で21年目の生活を送る。休日は家族とサーフィンやキャンプを楽しんでいる。一児の母。ライター活動を通じ持続可能なくらしや地域文化の魅力を発信中。