アウトドアブームの一方で、自然環境への負荷が世界的に深刻化しています。キャンプを愛するからこそ、美しい自然を次世代に残したいもの。この記事では、カルフォルニアの大自然で長年キャンプに親しむ筆者が、環境に配慮しながらアウトドアを楽しむ“サステナブルキャンプ”の考え方や、具体的な実践方法を伝えます。小さなことから、地球にやさしい行動をはじめてみませんか。

サステナブルキャンプが注目される理由

キャンプの人気が高まる中、自然環境を守りながら楽しむ「サステナブルキャンプ」が世界的な注目を集めています。

新型コロナウイルスの影響で、密を避けるために屋外でのアクティビティが注目され、キャンプ人口が急増しました。この傾向により、特に人気のキャンプ場では多くの人々が訪れるようになり、地面が踏み固められて植物が育ちにくくなるなど、野生動物の生態系にも影響が及んでおり、環境への負担が深刻化しています。また、不適切な排水による水質汚染や、ゴミの放置、無秩序な焚き火の痕跡など、環境破壊が目立つようになってきました。

このような状況を受け、北米発祥の「Leave No Trace(痕跡を残さない)」という環境保護の原則が世界中に広がっています。日本でも2024年にLeave No Trace Japanが発足。一部の自治体やキャンプ場では、環境への配慮を重視したルール作りが進んでいます。

さらに、一部のアウトドア用品メーカーも環境保護に向けた取り組みを強化。再生素材やリサイクル素材を使用した商品の開発に力を入れ、製品の環境負荷についても積極的に情報が公開されています。キャンパーの間でも環境への配慮を重視する意識が高まり、エコフレンドリーな商品の需要が伸びています。

環境に優しい方法でキャンプを楽しむことは、私たちの責任であり、また特別なことではなく当たり前の選択となってきているのです。

環境に優しいキャンプの基本7原則|Leave No Trace(痕跡を残さない)

キャンプを楽しむ際、自然環境への配慮は欠かせません。そこで重要なのが、アメリカで始まった「Leave No Trace(痕跡を残さない)」という考え方です。この理念は、キャンプを行うことで自然環境に与える影響を最小限に抑え、次に訪れる人々にも美しい環境を残すことを目的としています。ここでは、Leave No Traceの7つの原則と、それぞれの実践方法についてみていきましょう。

1.事前に計画し準備する

訪問地の規則や天候を調べ、適切な装備と食料を用意しましょう。混雑時期を避け、小規模グループで行動するのがポイントです。食料はファスナー付き保存袋 や再利用可能な容器に入れ替え、ゴミを減らします。地図やコンパスで道を確認します。

2.耐久性のある地面でキャンプする

既存のトレイルやキャンプサイト、岩場や砂地など、植生を傷めない場所を選びましょう。野生生物の保護のためにも水辺から最低60メートル離れてキャンプし、植物のない場所に活動を集中させることが大切です。

3.廃棄物を適切に処理する

「持ち込んだものは全て持ち帰る」を徹底します。トイレットペーパーや衛生用品も回収し、排泄物は水源から約60メートル以上離れた場所に15~20センチの穴を掘って埋めましょう。

 4. 見つけたものはそのままにしておく

石や植物、文化遺構は採取せず、自然のまま観察します。非在来種の持ち込みや人工物の設置も控えるべきでしょう。

 5.キャンプファイヤーの影響は最小限に抑える

調理は携帯ストーブで行い、火を使う場合は既存の焚火台を利用するといいでしょう。炭は分解されにくいため、白っぽい灰になるまでしっかり燃やし、燃え残りは完全に消火します。その後、灰は植物が生えていない場所に散らし、跡を残さないようにしましょう。

 6. 野生動物を尊重する

安全な距離を保ち、追いかけず、餌付けは絶対に行わないことが重要です。食料とゴミは動物に届かないよう厳重に管理しましょう。

7.他の利用者に配慮する

大声や騒音を控え、トレイルでは譲り合い、休憩は人目につきにくい場所でとります。自然の静けさを共有し、みんなの体験を尊重する姿勢が大切です。

サステナブルなキャンプギアの選び方

環境に配慮したキャンプギアを選ぶことで、自然への負荷を最小限に抑えながら快適なアウトドア体験ができます。持続可能なキャンプを実践するためには、購入前に検討すべき4つの重要なポイントがあります。

素材と製造工程をチェックする

キャンプギアを選ぶ際は、リサイクル素材や天然素材を使用した製品を優先することが重要です。

例えば、リサイクルポリエステルを使用したテントやタープは、廃棄されたプラスチックを活用することで、環境への負荷を軽減できます。また、オーガニックコットンやバンブーファイバーなどの天然素材は、生産時の化学薬品使用を抑え土壌汚染を防ぎます。

ブルーサイン認証など、製造過程での環境への配慮を示す認証マークを確認することも重要です。

長寿命・修理可能な設計を選ぶ

耐久性に優れ、修理サービスが充実した製品を選ぶことで、長期間愛用でき資源の節約につながります。スノーピークのような永久保証を提供するメーカーなら、フレームが折れても何度でも修理が可能です。

また、部品交換ができる設計のテントやバックパックを選べば、一部の破損で全体を廃棄する必要がありません。

高品質な素材を使用し、適切なメンテナンスで長持ちする製品に投資することは、環境面とコスト面の両方でメリットがあります。

 循環型燃料を採用する

焚き火やバーベキューには、従来の木炭に代わる循環型燃料を活用しましょう。もみ殻を原料にしたモミガライトは、農業廃棄物を有効活用した燃料で、燃焼後の灰は土壌改良剤として再利用可能です。

また、トウモロコシの芯を炭化したマイスコーレなどの植物由来燃料は、木の伐採を必要としません。これらの燃料は着火しやすく燃焼時間も長いため、機能性と環境配慮を両立できます。

ブランドの姿勢・認証マークを確認する

キャンプギアを選ぶ際は、パタゴニアやザ・ノース・フェイスなど、環境保全に積極的に取り組むブランドを選ぶことも重要です。これらのブランドは売上の一部を環境保護団体に寄付し、フェアトレード認証工場での生産を行っています。

また、エコマークやブルーサイン認証などの第三者認証を取得しているかどうかも確認するとよいでしょう。

ゴミを出さないキャンプの具体的なテクニック

キャンプ場の美しい自然環境を保つため、ゴミを最小限に抑えることは現代のキャンパーに求められる重要なマナーです。意識的な工夫を行うことで、環境負荷を減らしながら充実したキャンプ体験ができます。

ここでは私が実践している誰でも簡単に始められる具体的なテクニックを紹介します。

 食材は地元で調達する

キャンプ場周辺の道の駅や地元スーパーで食材を調達することで、輸送によるCO2排出量を削減し、新鮮な旬の食材を楽しめます

キャンプ地への道中では、生産者が朝に収穫したばかりの野菜や果物を直接販売している光景をよく見かけます。我が家では長い旅路の休憩も兼ねて、地元の直売所に足を止めます。市場を通さない分価格も手頃です。地域の農業を支援でき、地元で調達した商品は包装材も最小限に抑えられるため、ゴミ削減にもつながります。

また、その土地ならではの食材を使用することで、キャンプ飯がより特別な体験となるでしょう。

 再利用アイテムを使用する

使い捨て商品を避け、繰り返し使用できるキャンプ用食器やカトラリー、マイ箸を使うことで、大幅なゴミ削減になります。シェラカップや金属製のカトラリーなら、軽量でスタッキング性に優れ、何度でも使用できるので、我が家の必須アイテムのひとつです。

また、保冷材の代わりに飲み物を凍らせて持参したり、再利用可能な容器に食材を移し替えたりするのもおすすめです。

燃料・廃熱対策を行う

効率的な燃料使用と廃熱の活用により、エネルギーの無駄を減らせます。焚き火では風よけを置いて燃焼効率を上げ、消し炭を着火剤として再利用することで燃料の消費を抑えることができます。

ガスバーナーを使うときはウインドシールドを使用。また、薪は完全に灰になるまで燃やすことで、土壌改良材としても使えます。

このような工夫を取り入れることで、限られた燃料を効率よく使い、環境への負荷を最小限に抑えることができるでしょう。

サステナブルキャンプは、美しい自然を次世代に残すために大切な心構えです。まずは、Leave No Traceの7原則を意識することから始めてみてください。そして、環境に配慮したギアを選び、ゴミを最小限に抑える工夫を実践していきましょう。今週末から、地球に優しいキャンプを始めてみませんか?

Kazumi Kawagoshi

ライター

Kazumi Kawagoshi

大学で国際文化・環境を学び、卒業後、小笠原父島で5年間の島暮らしを経験。現在、世界一高いレッドウッドの森と太平洋を望む米カリフォルニア州で21年目の生活を送る。休日は家族とサーフィンやキャンプを楽しんでいる。一児の母。ライター活動を通じ持続可能なくらしや地域文化の魅力を発信中。