夏といえば人気の昆虫、カブトムシやクワガタを探しに行く絶好の季節。図鑑でしか見たことのない憧れの昆虫に自然の中で実際に出合う体験は、子どもにとって忘れられない思い出になるでしょう。本記事では、カブトムシ・クワガタの生態を知り、出合える場所や準備のポイントを分かりやすく紹介します。

カブトムシ・クワガタの生態を知ろう

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カブトムシ・クワガタの生態を知っていると、これらの昆虫を探すときのポイントが見えてきます。どちらも、卵・幼虫・さなぎ・成虫という完全変態をする昆虫です。

体全体が硬い前羽や皮膚におおわれているので「甲虫」と呼ばれており、硬い前羽を開き、薄い後ろ羽を羽ばたかせて飛ぶことができます。どんなくらしをしているのか、それぞれ解説します。

カブトムシとは

カブトムシは本州・四国・九州・沖縄に広く生息しています。もともと北海道には生息していませんでしたが、持ち込まれた個体が野生化し外来種として定着しました。種名は「カブトムシ」です。

成虫はコナラ・クヌギなどの樹液を好み、口にはブラシのような毛があり樹液を吸いやすい構造となっています。フンは水のようにさらさらとした液体です。昼間は落ち葉の下に隠れて主に夜に活動しますが、昼でも樹液に集まることがあります。

オスは、メスや餌場をめぐってほかのオスとけんかをすることがあり、大きな角が特徴です。初夏から夏にかけて羽化して地上に出てきたメスは、交尾後、落ち葉の中に潜り地面に穴を掘って卵を産み、約10日後に幼虫が孵化(ふか)すると、幼虫は腐葉土などを食べながら冬を越して大きく成長します。

6月ごろには蛹室(ようしつ)を作ってさなぎとなり、約2週間で羽化します。羽が固まるのを待って地上に出てきますが、成虫としての寿命はおよそ1か月しかありません。冬が来る前に死んでしまいます。

クワガタとは

クワガタは日本全国に広く分布しており、地域や島ごとにさまざまな種が生息しています。なかでもオオクワガタ、ヒラタクワガタ、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタなどは、多くの地域で見られる代表的な種類です。

成虫はクヌギやコナラなどの樹液に集まり、夜間を中心に活動します。オス・メスとも特徴的な形の大あごがありますが、多くの種でオスの方が大きい大あごをもち、餌場やメスをめぐって激しく争うことがあります。

初夏から盛夏に羽化したメスは、交尾後、朽ち木に穴をあけて産卵します。孵化した幼虫は腐りかけた木を食べながら1〜3年かけて成長し、朽ち木の中に蛹室を作りさなぎになります。羽化して地上に出てくるのは、地域によって異なりますが6~8月です。

成虫の寿命は種類によって異なり、オオクワガタやコクワガタなどは冬を越して3〜4年生きることがありますが、ノコギリクワガタやミヤマクワガタは寿命が短く、通常3〜5か月しか生きません。

カブトムシとクワガタの成虫はどちらも樹液を餌としていますが、クワガタのほうは日本に多くの種類が生息しており、寿命が長い点、卵を産む場所などに違いがあります。

カブトムシ・クワガタを見つけるポイント

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カブトムシ・クワガタを見つけたい場合、一番わかりやすいのは成体です。これらの活動時間に合わせて、餌場に行くのが最も効果的でしょう。ご自宅の近くや出かける先に、餌場となる環境があるかどうか探してみてください。

ここでは、いつどんな場所に行けば見つけやすいのか、どんな準備が必要かについて紹介します。

いつ、どこにいる?

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カブトムシ・クワガタはクヌギやコナラなどの木から出る樹液に集まるため、雑木林へ出かけるのがお勧めです。また、近年では公園や住宅に植栽されるシマトネリコも環境によっては樹液を出しやすく、カブトムシ・クワガタが集まる場合があります。シマトネリコの近くに幼虫のすみかである落ち葉だめなどがあることが条件です。

クヌギやコナラの樹皮はひび割れのような模様があり、ごつごつとしているので見分けられます。木の幹が黒っぽくなり昆虫が集まっていれば、そこに樹液が出ている証拠です。酸っぱいような匂いも手がかりになります。

夏の夜、特に7~8月の蒸し暑い夜、気温が高く風の少ない日の20時〜深夜0時ごろがねらい目です。暗い中で樹液の出ている場所を探すのは難しいので、昼間のうちに下見をして目星をつけておくとよいでしょう。

また早朝でも、まだ樹液を食べている個体が樹上に残っている可能性があります。雨上がりは活動が少なくなることがあるため、天候にも注意しましょう。林の中でも明るく開けた場所より、ややじめじめした日陰や湿り気のある場所のほうが見つけやすい傾向があります。

もしかしたら、これらの昆虫がほかの生きものに食べられた跡や、セミやトンボの羽化の場面に出合えるかもしれません。虫探しは、自然の営みを直接体験する貴重な機会でもあります。自然観察のマナーとして、木を傷つけたりせず、落ち葉や朽木を掘った場合にはもとに戻すことも大切です。自然を大切にしながら、生きもの観察を楽しみましょう。

どんな準備が必要?

カブトムシやクワガタを探しに行くときは、安全で快適に観察できるよう、服装や持ち物の準備が大切です。森や山には、マムシやスズメバチなど危険な生物もいます。まず服装は長袖・長ズボンが基本で、帽子をかぶると虫刺されやケガを予防できます。虫よけスプレーも効果的です。靴は滑りにくく、足全体をカバーする運動靴やトレッキングシューズを選びましょう。

夜間に観察する場合には懐中電灯やヘッドライトが必要ですが、むやみにあちこち照らすのは生きものにとって迷惑なので気をつけましょう。熱中症対策として、飲み物やタオルも忘れずに。携帯電話や地図、虫刺され薬もあると安心です。また、虫網は手の届かない所にいる個体を採取するのに便利で、捕まえて飼育ケースに入れればじっくりと観察できます。

カブトムシ・クワガタを飼いたいと言われたら

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「持ち帰って飼いたい!」憧れの昆虫を見つけられれば、多くの子どもがこう言うでしょう。リーブノートレイス(Leave No Trace)※でも紹介されている通り、「自然のものは元通りに」「生きものは自然のままに」という考え方がアウトドアの基本です。

※リーブノートレイス….自然環境への影響を最小限に抑えてアウトドアを楽しむための行動指針

しかし、飼ってみて初めて発見できることや心動かされることもあります。子どもの好奇心に寄り添い体験を通した理解を深めるには、飼育経験の意味は大きいのです。

ただし、責任をもって飼うことができるのかは、子どもとよく確認したほうがよいでしょう。家で飼いたいのか、繰り返し見に来るほうがよいのか、親子で話し合って決めてください。2~3日だけ飼育してもとの場所に戻すのも選択肢の一つです。

購入した外国の昆虫を野外に放してはならないことはもちろんですが、日本の昆虫でも採取した所と別の場所に放すのは生態系の攪乱につながるのでやめましょう。

昆虫を探して実際に見つける体験は、子どもにとってかけがえのない経験となります。生きものの命に触れることで、観察力や思いやりの心も育まれるでしょう。大人にとっても、子どもと一緒に自然の営みを知る時間は貴重なひとときです。安全やマナーに気をつけながら、夏の思い出づくりに、親子で昆虫探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

参考資料
昆虫 新版|学研の図鑑LIVE

曽我部倫子

ライター

曽我部倫子

東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。

子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。