寒い時期ならではの色鮮やかで濃厚な味わいの少し変わったレア野菜。気候変動や経費の高騰で農家が苦労するなか、付加価値の高い少量多品目の生産が見直されています。レア野菜はときにマルシェや直売所などで試験的に出品されることもありお買い得ですよ。
「はじめて野菜」チャレンジにおすすめの種類
お買いものをするとき、メニューを決めてから必要なものを買う人もいると思いますが、値段を見て「方針変更!」ということもとくに最近は増えているのではないでしょうか?そんなときこそ、手に取ってみてほしい「はじめて野菜」。お料理のレパートリーと食卓の話題が増えますので、チャレンジしてみませんか?
あやめ雪カブ
(株)サカタのタネが交配し、2006年に発表された、あやめのような色合いのグラデーションがかわいいカブです。甘くて皮もやわらかく、生食や浅漬けがおすすめです。熱をかけると色がくすんでしまいますので、さっと炒めるくらいにしてください。
日野菜カブ
原産は滋賀県蒲生郡日野町で室町時代から栽培されていた伝統野菜です。その後、美しさと漬物のおいしさから、西日本を中心に各地で栽培されるようになりました。
日野町では生産が衰退していきましたが、わずかな農家が原種を守り継承され、「近江日野産日野菜」として2022年GI(地理的表示保護制度)に登録されました。ご当地の日野菜漬けはやっぱりおいしい、とのことでなのでぜひ食べてみたいですね。
あやめ雪カブ同様、アントシアニンの作用で、地表から出た部分が赤紫のグラデーションになります。ほのかな甘みと独特な辛みがあり、コリコリとした食感も楽しい野菜です。
チコリ
チコリはキャベツに似ていますが、キャベツはアブラナ科、チコリはレタスと同じキク科です。
今回レシピで紹介する赤チコリはプレコーチェとも呼ばれ、鮮やかな紫と白の楕円形をしています。たまにスーパーで見かける白いチコリは「軟白栽培(なんぱくさいばい)」といって、ある程度育った根を掘り上げてホワイトアスパラのように遮光をした場所で育てます。
白チコリは苦みが少なくそのままサラダがおすすめですが、赤チコリは少し熱をいれると甘みが増します。あまり熱しすぎると色がくすんでしまうので注意しましょう。ほんのり苦いのがクセになりますよ。
キクイモ
キクイモもチコリと同じキク科の植物です。ジャガ芋はナス科、里芋はサトイモ科、さつま芋はヒルガオ科、芋なのにみんな違うんですね。
キクイモは北アメリカ原産で、もともとは葉茎(ようけい)が飼料とされていました。血糖値コントロールや便秘解消に効果があるとされる水溶性食物繊維のイヌリンが豊富に含まれており、近年、食用として各地で栽培が盛んになってきています。
熱してもシャキシャキ感が楽しめるのでかき揚げやキンピラがおすすめです。
ザーサイ
ザーサイは瓶詰めをスーパーでよく見ますが、実は上の写真のようなアブラナ科の野菜です。「なんだかブロッコリーの芯に似てる」と思ったので、ブロッコリーでも同じ味付けでザーサイ風を作ってみました。ブロッコリーの方がやや硬めですが、そこそこザーサイ風になりました。
日本でもお馴染みの中国の漬物ですが、おもに四川省で作られています。本場のザーサイはいろいろな香辛料とあわせて乳酸発酵させ、約1年熟成させるそうです。今回はそのまま生を塩もみしていただきました。
葉にんにく
葉にんにくは、にんにくの成長過程の葉が柔らかいうちに収穫される野菜ですが、「ハーリック」という専用の品種が一般的に使われます。もともと青森県や高知県などで収穫されてきましたが、近年では関東でも栽培が盛んになってきています。葉はにらのような香りと食感で、玉の部分は小さく、にんにくをマイルドにした香りです。
パスタや麻婆豆腐などによく合います。にんにくほどきつくない香りなので、調理しやすい食材です。
チコリの根は焙煎してコーヒーの代用になります。チコリコーヒーってなんとなく聞いたことがないでしょうか?輸入食品店などで購入できます。そして、同じキク科のキクイモからもコーヒーができるとか。いずれもイヌリンが豊富に含まれます。カフェインを控えたい人やダイエットしたい人は試してみてはいかが?
ワクワク!旬のレア野菜レシピ
日野菜やあやめ雪カブの赤紫、赤チコリの濃い紫、ザーサイのさわやかな緑などこの時期にしか味わえない旬の色を活かした料理がつくりたいと思いました。
「あまり手を加えない」が結論です。赤いカブ・ザーサイは塩もみでは色は落ちません。赤チコリは少々苦みがありますが、ひき肉とオリーブオイルをあわせてみるとやわらぎました。日野菜の葉はカブと一緒に塩に漬けるとやや塩味が強くなりますので、水にさらして味をみてくださいね。
赤チコリとあやめ雪カブのグラデーションサラダ
記念日などのお祝いに赤チコリとあやめ雪カブのグラデーションが美しいオードブルはいかがでしょうか?甘くやわらかいあやめ雪カブとチコリのほろ苦さが食欲をそそりますよ。
材料(2人分)
- チコリ 4枚
- あやめ雪カブ 中1個
- 鶏むね肉ひき肉 60g
- ミニトマト 4個
- チェダーチーズ 15g
- オリーブオイル 小さじ1
- 塩(カブ用) 小さじ1/2
- 塩(ひき肉用) ひとつまみ
つくり方
- カブはくし切りにして、葉と一緒に軽く塩もみし約30分おいておく
- オリーブオイルをスキレットであたため、ひき肉に塩を振って炒める
- ミニトマトを各1/4、チェダーチーズを1cmくらいの短冊に切っておく
- 炒めたひき肉・トマト・チーズをチコリに乗せ、バーナーで軽くあぶる
- 塩もみして置いておいたカブと葉の水分をよく拭いて、チコリと同じ皿に並べる
チコリは火をあてると変色してしまうので注意!軽めにあぶりましょう。チーズが少し溶ければOKです。カブの葉は、塩気が強すぎたら水にさらして塩抜きをしてください。少々苦みがあるので、苦手な人はひき肉を炒めたあとの油で軽くあぶるとGOOD!
ザーサイの浅漬け
ザーサイは葉も食べられますのでとっておいてくださいね。ザーサイの方がコリコリ食感がよいですが、旬が短いので、ブロッコリーで作るのもおすすめ。レシピはこちらの記事をご参照ください。
材料(2人分)
- ザーサイ(芯) 小2本
- 白ごま 小さじ1/2
- ごま油 小さじ1/3
- 塩 ひとつまみ
- うすくちしょう油 少々
つくり方
- ザーサイを流水で洗い、葉と芯を切り離して皮の硬い突起をそぐ
- 塩もみをして約1時間置いておく
- よく水切りをして、ごま油・ごま・しょう油であえる
ザーサイの葉とキクイモの天ぷら
なかなか天ぷらってハードル高いですよね。でも、旬の食材をおいしく食べるための方法のひとつにしておくと選択肢が広がります。おいしく揚がると達成感も◎!
材料(2人分)
【天ぷら衣】
- 冷水 200ml
- 薄力粉 140g
- 卵(卵水用)1/2個
【具材】
- キクイモ 150g(5~6個)
- ザーサイの葉 3〜4本
- 米油 揚げ鍋 3cmくらいの深さになる分
つくり方
- 薄力粉をざるでふるい、うち40gを打ち粉用に分けておく
- 卵を溶き、1/2と冷水をよく混ぜておく(卵水)
- 卵水を薄力粉の入ったボウルにゆっくりそそぎ、泡だて器で混ぜる
- ザーサイの葉に軽く打ち粉をして、衣液をくぐらせ180℃の油で揚げる
- キクイモに打ち粉をして、残った薄力粉を衣液に混ぜる
- おたまにキクイモを適量のせ、衣液をかけてかるく混ぜておく
- やけどに注意して、固まってきたらおたまを外す
※そのほか、お好きな具材を一緒に揚げてください
ザーサイの葉の根元に2本くらい切れ目をいれておくと均一に揚がります。水分が多いので、できるだけ高温でカリっとするまで揚げるとおいしくなります。ほろ苦さが早春を感じさせてくれますよ。反対に、キクイモは温度を上げ過ぎない方がシャキシャキ感があっておいしいと思います。
葉にんにくのクリームパスタ
葉にんにくはさわやかな香りで後味もよく、クリームソースとの相性抜群です。緑の葉は大きめに切れば色味もよくなりますよ。お腹いっぱい食べてください。ワインのおともにも最適です。
材料(2人分)
- パスタ(フジッリ) 180g
- 水(ゆで用) 1.5L
- 塩(ゆで用) 大さじ1.5
- 葉にんにく 2本
- エリンギ 2個
- 玉ねぎ 中1/2
- ベーコン 70g
- 牛乳 220ml
- 薄力粉 大さじ1.5
- オリーブオイル 大さじ1
- 輪切りとうがらし 小さじ1/2
- 塩 ひとつまみ
- 黒コショウ ひとつまみ
- 粉チーズ(パルミジャーノ)適量
つくり方
- 沸騰したお湯に塩を入れ、標準マイナス1分でパスタをゆでる
- 具材を切る(葉にんにくの葉は大きめ、中間部は薄く、玉はみじん切りに)
- ベーコンをフライパンの端に、オリーブオイルを真ん中に入れ、葉にんにくの玉ととうがらしを弱火で焼く(焦げないように注意)
- 香りがでてきたら玉ねぎとエリンギを入れ、焼き目をつける(にんにくととうがらしは焦げないように端によせておく)
- 塩をふり、葉にんにくの中間部を入れ、ひと混ぜしたら薄力粉を全体にかける
- 牛乳をゆっくり回し入れ、にんにくの葉を入れる
- ゆで上がったパスタを入れ、ひと煮立ちさせる
- 皿に盛って黒コショウと粉チーズをかける
葉にんにくの緑の葉の部分はあまり熱をかけすぎないようにご注意を!パスタはリングイネとペンネでも試しましたが、アルデンテ気味に上げるとちょっと味の乗りが悪かったのでフジッリにしました。葉にんにくとベーコンでかなり味は入るので、ふり塩は味をみながら調整してださいね。
寒い時期にも、野菜は太陽の光を吸収して鮮やかな色合いや滋味を育んでいます。 そして生産者の方々は、土寄せや霜よけ、乾燥の対策などの日々の作業や工夫を惜しまず、その努力には頭がさがります。消費者の私たちも、おいしく無駄なく食べたいものです。今回ご紹介したレアな野菜は、そこに楽しさもプラス!ワクワクする「初めて」の楽しさを、ぜひ食卓にも取り入れてみてくださいね。
ライター
Maita
アウトドア大好きなフリーランスのフードコーディネーター(FCAJ認定/1級)&Webデザイナー。こだわって作った『つくりおき料理』で楽しいキャンプ飯を考案。また、日本各地の固定種・在来種の食材を使った料理を手掛け、地域の食文化の継承を模索している。一人でも家族でも仲間でも楽しめる、そして地球にやさしいレシピを提案していく。