ファッションといえば、フランスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?SDGsが世界的に重視されるなか、フランスのファッション業界でも環境対策が進められています。この記事では、フランスのサステナブルファッションへのさまざまな取り組みを紹介しますね。
サステナブルファッションとは
サステナブルファッションとは、洋服の生産から着用、廃棄までのプロセスで、将来にわたり持続可能であることを目指すことです。地球環境や社会、関わる人々に配慮した取り組みを指します。
衣服を提供する企業にとっては、将来世代の生きる環境を損なうことなく、経営を続けられるかどうかが問われているのです。
出典:
千葉商科大学「サステナブル・ファッションとは? おしゃれで自分を表現したい人が知っておきたい、アパレル産業のSDGs」
環境省「サステナブルファッション」
フランスのサステナブルファッションに関する4つの取り組み
ここからは、フランスのサステナブルファッションへの取り組みを4つ紹介します。
1.循環経済法の施行
フランスでは、2020年2月に『循環経済法』といわれる「いまある資源を循環させ、廃棄物を削減することを目指す法律」が施行されました。この法律は以下の5つを軸にしています。
- 使い捨てプラスチックからの脱却
- 消費者への情報提供
- 廃棄物への対策および連帯再利用
- 製品の陳腐化への計画的な対応
- よりよい生産の推進
この法律によって、ファッション関連の生産業者・輸入業者・流通業者に対して、売れ残った衣服の廃棄を禁止。再利用やリサイクル、寄付を促進することが義務付けられました。
出典:
環境省「ファッションと環境」
JETRO「循環経済法が2月に施行、循環経済型社会へ大きな一歩(フランス)」
2.服や靴の修理代の補助金を支給
2023年10月には、衣服や靴の修理に対して補助金を支給するプロジェクトを開始しました。というのも、2050年までに、繊維産業が排出する温室効果ガスは世界の4分の1を占めるとのこと。温室効果ガスが地球の温暖化を進めるなど、深刻な問題とされています。
フランスの修理品に補助金を出すプロジェクトは、消費者にとっても嬉しい取り組みですよね。また、衣類や靴の寿命を延ばし、資源の消費を抑え、新しい経済的な仕組みを構築できるのもメリット。フランスの民間団体『Refashion』が運営を行っています。
補助金は、6ユーロ~25ユーロ(約936円〜約3,900円)の範囲内で、修理の複雑さに応じて金額を決定します。衣類メーカーや修理業者は、民間団体を通じてプロジェクトに無料で参加可能です。
消費者が修理を依頼すると、修理代金から補助金の分だけ割引されます。その後、適用した金額をRefashionが参加企業に補助金として返金する仕組みです。
つまり、企業は負担なく環境保護に参加でき、消費者も安い料金で服や靴の修理を依頼できるのです。
出典:CNN「類や靴の修理に補助金支給へ、環境対策視野に 仏政府」
3.リサイクルボックスの設置
フランスでは、いらなくなった衣服や靴の回収所が国内に約4万6000件以上あり、そのうちの約8割は歩道などに設置されたものが占めています。
サステナブルファッションのビジネスモデル構築を支援する、政府公認のNPO法人『EcoTLC』の報告によると、2019年には64.8万トンの繊維製品や靴が販売されました。そして、約4万6,000件の回収所から、合計24.9万トンの繊維製品と靴が回収されたそうです。」
繊維製品や靴のリサイクルは年々増加しており、その8割以上は歩道などに設置されたボックス経由となっています。また、EcoTLCが2018年にフランスの消費者1,000人に行ったアンケートによると、 約80%の人々が繊維製品と靴の専用回収ボックスを利用していると回答しました。
フランスでは、商品を長く使うための意識や行動が国民に根付いているといえるでしょう。
出典:
消費者庁「事例 フランスのファッション業界の取組」
JETRO「フランスを中心とする欧州アパレルブランドのサステナビリティ動向調査 」
4.サステナビリティを評価するアプリの提供
フランスでは、服のブランドが環境や人にどれくらい優しいかを判定するアプリ『Clear Fashion』がリリースされています。この取り組みは、2020年に施行された循環経済法の「消費者への情報提供」に関連していますよ。
法律では、消費者が環境保護に関する情報を見られるようにするのが、生産者の責任とされています。たとえば、リサイクル素材を使っているか、有害物質が使われていないか、再生可能な資源が利用されているかなどを、消費者はチェックできるのです。
アプリで服のタグを読み取ると、ブランドの貢献度を「人間・健康・環境・動物」の4つの観点で、それぞれ100点満点で判定。さらに、各項目でそのブランドの取り組みが紹介されており、消費者はそれらの情報をもとに商品購入ができる仕組みになっています。
利便性の高いアプリを通して、消費者のサステナブルな行動を促進しているのです。
出典:
JETRO「フランスを中心とする欧州アパレルブランドのサステナビリティ動向調査 」
IDEAS FOR GOOD「洋服のタグからブランドのサステナビリティを評価するアプリ「Clear Fashion」」
フランスでサステナブルな取り組みが認知されているブランド
フランスのファッション業界では、サステナブルな取り組みをしているブランドが多数あります。ここでは、日常的に使えるカジュアルな2つのブランドを紹介しますね。
Veja(ヴェジャ)
Vejaはデザインと社会的責任を両立させた、サステナブルなシューズブランドとして知られています。スニーカーの素材には、オーガニックコットンや持続可能な方法で採取された天然ゴムを使用し、生産はブラジルで行われています。
中間業者を通さずにペルーにいる生産者と直接取引しているため、無駄な経費を削減し、生産者に利益を還元しているのです。また、工場の場所や労働条件、原材料の買取価格などの情報を公式サイトで公開。環境や社会に配慮した取り組みを発信しています。
出典:JETRO「フランスを中心とする欧州アパレルブランドのサステナビリティ動向調査 」
1083 (ミル キャトルヴァントワ)
1083はフランス国内で生産と流通を行う、メイド・イン・フランスのサステナブルデニムブランドです。ブランド名の『1083』は、フランス最東端と最西端の町を結ぶ距離に由来。フランス内ですべての生産活動を行っています。
オーガニックコットンのベーシックラインに加え、ボタンや糸、ラベルなどすべてのパーツがリサイクル素材でできている『Jean Infini』を展開。商品を買うときにデポジットが取られるものの、購入者が使用後の商品を返却するとデポジットが返金され、返却されたデニムがまた新しい商品へリサイクルされます。
出典:JETRO「フランスを中心とする欧州アパレルブランドのサステナビリティ動向調査 」
ライター
エレナ
フリーランスライター。学生時代の海外ボランティアをきっかけにSDGsやエシカルに興味を持つ。主にSDGs、英語学習、留学、旅行について執筆。リフレッシュには自然の中でのんびり過ごすのが好き。