Pretty Solidというネーミングに込められた想い
ーパート2もまずは自己紹介からお願いします。
松尾裕幸(まつおひろゆき)です。長野県出身の38歳、スケートボード歴は今年で26年になります。20代はプレーヤーとして活動し、その後30歳を迎えたタイミングで、Pretty Solidスケートボードスクールを立ち上げました。
スクール業はプレーヤー以外の部分で、自身の経験や知識、技術を人々に伝えたいと思って始めました。現在はスケートパークの経営をしながら、スケートボードの魅力や楽しさを伝えています。
ーPretty Solidというネーミングにはどのような意味が込められているのですか?
Pretty Solidには、“中身が詰まっている”といった意味があります。「スキルを磨くだけでなく、考え方や価値観等の中身も磨いて欲しい」という想いで名づけました。
ーかわいらしいロゴですが、何かこだわりがあるのでしょうか?
Solidのl(エル)は、リンゴの木をイメージしています。果実が実る過程と、通ってくれる子の成長をかけており、Pretty Solidでスケートボードに出会った子が、卒業する頃には立派に実ってほしいという願いを込めています。
ー素敵なネーミングですね。Pretty Solidのレッスン概要についても教えてください。
Pretty Solid skate schoolでは、グループレッスンと個人レッスンの2種類を設けています。基本は、その人にあった課題やトリックを指導する形ですね。
あと個人で受けるか、グループで受けるかは、個々の目的に応じて選択できるようにしています。
ー個人レッスンとグループレッスンの違いは何でしょうか?
技術の向上を求める方には個人レッスンを薦めています。仲間との高めあいや、チームワークの役割を身につけながらレベルアップを目指すなら、グループレッスンをご案内しています。
その際、受講者さんのやりたいことがバラバラだと、良いレッスンにするのが難しいところがあります。レベルや目的、年齢などを考慮してクラス分けを行い、最大限の効率化を図っています。
多彩な講師陣と細かなクラス分け
ークラス分けはどうやって決めているのですか?
1クラスにつき生徒6名で、全部で18クラスあります。これとは別に大人向けのクラスが2つ。
レベルや通う目的に合わせてクラスを設定し、個々のタイプだけでなく、講師との相性も考慮してクラス編成を行っています。
ー生徒さんの数や年齢層、男女比率なども教えてください。
年齢層は小学生から中学生までで、男女比は7:3くらい。基本的には月謝制レッスンをベースに設けており、週に一回通ってもらう形のスクールとなっています。
ー講師は何人いるのですか? また、どのように選定されているのでしょう?
講師は全員で9名在籍しています。
選定条件は、教えられる十分な技術があること、スケートボードをやっていてよかったという気持ちをもっていることです。
また、自分の為のスケートと、人の為のスケートの区別をつけてスクールに取組むことが出来る事も重要です。
カリキュラムは実践をもとにゼロから作成
ー講師が複数いる場合、ある程度のルールや統一性がないと、クオリティが維持できないと思います。そこはどう対応されていますか?
講師1人1人に、スクール業の一連の流れを全て把握してもらうため、作業内容をカリキュラム化し、統一性をもたせています。
また、定期的に講師ミーティングも行っています。講師からの意見を取り入れながら、改善できることと統一事項の再確認をして、クオリティを維持しています。
ー教える側も大変なご苦労がありますね。
教える側の講師にとっても、働きやすい環境を作ることが重要です。これも良いスクールを維持するうえで、大切な要素だと考えています。
ーカリキュラムを作成する上で、前例など参考にされたところはありますか?
自身の練習方法や経験を元ににレッスン内容を考え、実践を繰り返し、試行錯誤を重ねながら作り上げています。
スクール運営の魅力は子どもの成長過程を見られること
ースクール業を始めてみて、気付いたことや学んだことはありますか?
スクールを通じて確かな技術と知識を教えなければならないので、間違った知識を伝えないように気をつけると共に、講師側も日々トリックや教え方を勉強しています。
ー他にも工夫されていることがあれば教えてください。
クラス制を導入する事で仲間意識が芽生え、コミニュケーション能力向上にも繋げレッスンもゲーム形式にして楽しく覚えてもらうなど、教え方にも工夫を凝らすようにしています。
ースクール業をやっていて、良かったなと思うことはありますか?
生徒が上手くなってくれると嬉しいです。
また、会う回数を重ねるにつれて関係性が深まり、その子を知ることができます。成長の過程を保護者の方と一緒に見られるところも魅力の一つです。
ーずっと見守ってきた子が上達すると、感動もひとしおでしょうね。
成長の過程において、ご両親を含めてスクールの存在に感謝してもらえるとやりがいを感じます。
これはスケートボードに限らず、他にも共通する事かと思いますが、プレイヤー(子)側とサポート(親)側のすれ違いが生じることが出てくる事がよくあります。Pretty Solidではそういったところも、親と子の間に立って導けるようにしていきたいと思っています。
親と子どもの間に入りクッションの役割も
ー親と子どもの間に立って導くとは、どういったことなのでしょうか?
上手くなるにつれて、スケートが上手くなりたいという子どもの気持ちと、親がサポートする気持ちのズレが生じる事があります。すると、親子間でさまざまなトラブルが発生しがちです。
ーその場合は、どのように対応されるのでしょう?
あくまでもスケートボードをしているのはプレーヤーなので、そのプレーヤー本人の意思を尊重します。本人が一生懸命に取組むことが第一だと考えています。
それに対して周りは、できることをサポートしてあげることが一番良い形。僕たちは親と子どもの間に入って、クッション材のような役割を果たしてあげたいと思ってます。
ー具体的にどういった行動をとるのですか?
当スクールの場合は、保護者の方もレッスンを観覧できるので親と子どもの双方に関わることができます。レッスン前後に会話をし、相談等があれば、それぞれに対しアドバイスをするようにしています。そうやって親と子が良い方向に進んでいけるよう、導いてあげられたらと思っています。
最終的にはスケートボードを楽しみながら続けて、好きになったら嬉しいです。
Profile:松尾裕幸(まつお ひろゆき)
1985年5月31日生まれ。ホーム:横浜
スケールの大きなライディングで、現役時代は数々のスポットレコードを更新してきた国内屈指のハンマートリッカー。現在はPretty Solidスケートスクールの代表として後世の育成に励むとともに、より安定したスケートシーンの構築に向けて、常に新たな試み実践。自らをネクストステージへプッシュし続けている。
ライター
吉田 佳央
1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。フォトグラファー兼ジャーナリストとして、ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。