単独での登山は思い立ったときに行けて、自由に歩ける気楽さがあります。しかし、事故が多いのも事実。リスクや対策を確認して、ひとりでも事故なく登山を楽しめるようにしましょう。単独登山のときに備えておくべきアイテムもご紹介します。

単独登山でのリスクとは?

登山 単独行動 危機管理

登山での単独行動は、ひとりですべてを判断しなくてはいけません。どのようなリスクがあるのかを理解しておくことが必要です。

遭難しやすい

単独での登山では、遭難しやすいというリスクが挙げられます。警視庁によると、遭難の原因でもっとも多いのは道迷いで、令和3年は全体の41.5%にのぼりました。とくに単独行動のときは、疲労で注意力が散漫になると道迷いに気づかず、コース修正のタイミングを逸するリスクがあります。

令和3年の全遭難者に占める単独登山者の割合は、41.7%。グループ登山と比べると、遭難者の死者・行方不明者の割合は、7.5%高くなっています。

標識や目印のリボンだけに頼るのではなく、こまめに地図を見ながら進みましょう。下記の記事も参考にしてみてくださいね。

登山で遭難してしまったら?緊急時の対応を解説
山の遭難事故に遭わないために気を付けることとは?

出典:警察庁「令和3年における山岳遭難の概況

事故があったときに気づかれにくい

なにか事故があったときに、ひとりだと気づかれにくいのも、単独登山のリスクです。グループ登山はお互いを確認しながら登るため、はぐれたり病気や怪我で動けなくなったりしても、対応してもらえるメリットがあります。

しかし、ソロ登山ではなにかあったときに気づかれにくく、救助や発見が遅れる場合も。道迷いや滑落などでコースからはずれると、最悪の場合、命を落とすだけでなく、そのまま行方不明になってしまう可能性もあります。

出典:NHK首都圏ナビ「コロナ禍の夏山 単独登山が増加か 死亡のケースも

 

単独登山での6つのリスク対策

登山 単独行動 危機管理

単独登山は不慮の事故がないように対策が必要です。「自分だけは大丈夫だろう」という油断が、危険を招きます。登山前からしっかり準備できるように、リスクへの対策を6つご紹介しますね。

①十分な下調べをする

事前に登る山について下調べをしておけば、遭難のリスクを減らせます。登山ルート・天候・コースタイム・危険箇所・難易度などを調べて、自分のレベルに合った山を選びましょう。

また、明るいうちに下山できるスケジュールを立てることが大切です。実際に行った人のブログ記事やYouTubeなどで、細かい情報も収集するとよいでしょう。

②しっかりとした装備でのぞむ

季節に合わせた万全の装備で登山にのぞみましょう。また、つかうことがなくても、いざというときのために必要なものを常備することが重要です。持っていくべきアイテムについては後述するので、参考にしてみてください。

③登山知識を習得する

登山に関する知識があれば、アクシデントから身を守れます。周囲に人がいないとき、頼れるのは自分だけです。

身につけておきたい知識としては、たとえば地図読み・天気図や空の見方・応急処置の方法・緊急時の道具のつかい方などが挙げられます。登山スキルのレベルアップにもなるので、勉強しておきましょう。

④登山届を必ず提出する

登山 単独行動 危機管理

登山をするなら、必ず登山届を提出します。無計画な登山を防ぎ、万一のときは捜索活動が迅速に行えるからです。家族や友人に、行き先と下山予定時刻を知らせておくことも必要ですね。

登山届は登山口で提出するのもよいですが、事前にインターネットから提出するのもおすすめ。インターネットで登山届を共有できるシステム「コンパス」なら、全山域に提出できて、下山通知機能で家族にメールが送信されるので便利です。

以下の記事もあわせてご覧ください。

インターネットでも提出できる!登山届(登山計画書)の重要性とネットで提出できる都道府県一覧

⑤山岳保険に加入する

山岳保険は、山に登るのであれば必ず入っておきたいものです。万一遭難したとき、捜索費用が莫大にかかる場合があります。登山に特化した保険としては、「YAMAP 登山保険」「JRO(ジロー)」「やまふきエキスパート」などがよいでしょう。

下記の記事も参考にして、自分に合った保険に入ってくださいね。

【山岳保険】とは何だろう?安全な登山のために保険について少し勉強してみよう

⑥迷ったら引き返す

事前の準備ではありませんが、登山中は道に迷ったら、正しいルートまで引き返すのが鉄則です。「このまま進めば目的地に着くはず」といった思い込みは、状況を悪化させる場合があります。

また、道に迷って沢や谷沿いに下りると、崖や滝に阻まれて身動きできなくなる可能性があり、危険です。GPS・地図・コンパスといったナビゲーションツールを活用し、冷静に対処して戻りましょう。

 

単独登山で持つべき7つのアイテム

登山 単独行動 危機管理

登山で遭難や事故にあったとき、通常の装備だけでは対処できないことがあります。小さなことが生死を分ける場合も。単独登山で必ず持参したいものを7つご紹介しますね。

①登山地図のスマホアプリ

登山地図のスマホアプリを使用すれば、リスク回避になります。圏外の場所でもGPS機能で、自分のいる位置がすぐに確認できるからです。無料のものから有料版まであるので、自分がつかいやすいものを選ぶとよいでしょう。以下のアプリを参考にしてみてください。

②紙の地図とコンパス

紙の地図も併用すると、なお安心です。紙の地図なら広範囲を一覧できて、山域の全体像を把握しやすくなります。単独登山でも、視野が狭くなりにくいのがメリットですよ。

事故や天候の変化などでコース変更が必要なときも、紙の地図があればプランを検討しやすくなります。軽量で荷物にならないので、必ずコンパスと一緒に持参しましょう。

一方、スマホ地図は、ピンポイントで場所の状況を確認するのに活躍します。アナログな紙地図とデジタルなスマホ地図、両方のよいところ取りで、登山の安全性を高めてくださいね。

③電波発信機

電波発信機も単独登山の心強い味方です。たとえば、山岳遭難を対象とした捜索ヘリサービス「ココヘリ」の会員になると、電波発信機が貸与されます。発信機の電波で正確な位置情報を警察に知らせ、救助までの時間を短縮できるのがメリットです。

ココヘリはほぼ100%の確率で遭難者を発見している実績もありますよ。もしものために常備したいですね。発信機には電池を入れ忘れないようにしましょう。

出典:ココヘリ「捜索実績

④ヘッドライト

ヘッドライトも持参したいもののひとつです。暗くなったとき、グループ登山なら自分のヘッドライトがなくても、仲間に光を照らしてもらえば下山できます。しかし、単独登山はヘッドライトがないだけで、致命的な遭難につながる場合もあるので注意が必要です。

日没までに下山できないときに備えて、必ず持っていきましょう。

⑤ファーストエイドキット

怪我や病気の応急処置ができる、コンパクトなキットを携帯しておきます。中身は、絆創膏・滅菌フィルム・飲み薬・塗り薬・三角巾・テーピング・ポイズンリムーバー・10徳ナイフなどです。事前に中身を確認して、補充や入れ替えを行っておきましょう。

⑥エマージェンシーシート

下山できずに山中で1泊しなくてはならない場合、エマージェンシーシートが活躍します。低体温症にならないように、体に巻いて体温を確保したり、雨風を防ぐタープにしたり、つかい方はさまざまです

軽くてコンパクトなので、ファーストエイドキットと一緒に入れておくと忘れませんよ。下記の記事で詳しく説明しているので、参考にしてくださいね。

エマージェンシーシートは登山や災害時で使えるアイテム

⑦予備品

予備品にもいろいろありますが、以下のものは備えておくと安心です。

  • 少し多めの水・食料
  • 電池
  • モバイルバッテリー

単独行動だと仲間のサポートが受けられません。余裕があれば、ライターや結束バンドも役に立ちます。ガスバーナーの火がつかないときは、ライターを使用して着火。また、登山靴のソールが剥がれてしまった場合、応急処置として結束バンドで固定できます。

登山ではどんなに経験や実力があっても、不慮の事故に見舞われることがあります。とくに単独登山では、リスクを想定して、どのように備えるかが大切です。単独登山をしてみると、今まで周りに頼っていたことを実感するかもしれません。単独行動することで、自信や経験にもつながるでしょう。入念な下調べと準備をして、経験を重ねながら、いろいろな山に挑戦してみてくださいね。

ライター

yuki

幼少期からキャンプや釣り、スキーなどを楽しむアウトドアファミリーで育つ。10代後半は1人旅にハマりヨーロッパや北米を中心としたトラベラー期となる。現在もスキー、スノーボード、ダイビングなど海や山で活動中。「愛する登山」は低山から厳冬期の雪山まで季節問わず楽しむhike&snowrideなスタイル。お気に入りの山は立山連峰!Greenfield登山部/部長の任命を受け部活動と執筆活動に奮闘中。