ネパールのエベレスト街道とは
その名の通りエベレストへ向かう道のりの「エベレスト街道」は、世界でも屈指の絶景を誇る、山好きな方にはぜひ訪れて欲しいトレッキングルートです。
中国との国境に跨るエベレストがあるクーンブ山群は、サガルマータ国立公園に指定されています。
ルートは山岳民族のシェルパ族が住む村々を繋ぐ生活道でもあり、彼らの生活に触れながらの道のりはヒマラヤへの理解を深める旅路となることでしょう。
谷の奥に進んでいくと、エベレストをはじめ、ローツェやアマダブラムなどクーンブ山群の名峰が次々と現れ、息をのむ世界が広がります。
エベレスト街道の玄関口はルクラから
エベレスト街道への道のりは、標高2,800mの渓谷にあるテンジン・ヒラリー空港(旧称ルクラ空港)から始まります。
カトマンズからは複数の航空会社の定期便が毎日乗り入れており、わずか30分程の飛行ですが眼前に山が迫るマウンテンフライトは中々の迫力です。
1本しかない空港の滑走路はわずか500m程しかなく、斜面ギリギリにランディングすると小型機の中は拍手喝采になる場面も。
ルクラ村の小さなメインバザールには、wifiのあるカフェやロッジ、土産屋が建ち並び、トレッカー達で賑わっています。
メインバザールを抜けゲートをくぐるといよいよトレッキングが始まります。
また、1960年代に空港が建設される以前には、カトマンズから陸路でジリという村に入りエベレストへのキャラバンがスタートしていました。
現在でもルクラまで所要1週間の道のりのクラシックルートとして存在しています。
エベレスト街道:ルクラ~ナムチェ
トレッキングはルクラをスタートし、山中に住む人々の生活道を進んでいきます。
歩き始めると、周囲には穀物や野菜が豊かに実る畑や、昔ながらの石造りの家々、石畳の上で行水する裸の子どもたち、そんなどこか懐かしい穏やかな風景が広がっています。
途中のジョルサレのチェックポストで許可証提示と国立公園入域料を支払うと急坂となり、登り切った先にはクーンブ地方最大の村、ナムチェ・バザールが現れます。
ナムチェは標高3,440mに位置し、ほとんどのトレッカーが高所順応のため2泊する行程をとるのが普通。
すり鉢状の斜面にロッジが所狭しと並び、細い石畳の路地には荷物を積んだヤクが通り抜け、土産物屋にアウトドアショップにと村は活気に溢れていている光景を見ることができます。
物資が揃っているのはここまでなので、トレッキングに必要な物はナムチェでそろえておくと安心でしょう。
コンデリやタムセルクなどの6,000mを越える万年雪を抱いた山々が見え、いよいよヒマラヤの懐に入った事を感じさせます。
のんびりと滞在を楽しみながら、この先の標高に向け体を高所に慣らしていきましょう。
エベレスト街道:ナムチェ~ロブチェ
ナムチェを過ぎると、女神の首飾りと呼ばれる美しいアマダブラムや世界第四位の高峰ローツェの奥に、初めてエベレストがその頭をほんの少し見せてくれます。
ナムチェ以降、標高は富士山を越え日本では経験できない高度となるので、高山病の症状が現れる人も。ゆっくりと呼吸をしながら歩いていきましょう。
途中、タンボチェにはエベレスト街道で一番大きなチベット仏教の僧院(ゴンパ)があり、僧たちの生活や法要の様子を見学することもできます。
トレッキングの道中には経文が刻まれた石や、マニ車、青い空にたなびくタルチョ(祈祷旗)等をあちらこちらで見ることができ、シェルパ族にとってチベット仏教が深く根付いていることを感じられるでしょう。
さらに標高を上げ、ディンボチェ、ペリチェと進んでいくと景色は荒涼とした大地へと移り変わり、いよいよ谷の最奥の宿泊地ゴラクシェプ(5,170m)が見えてきます。
エベレスト街道:カラパタール、エベレストベースキャンプ
ここからは、ゴラクシェプから足を伸ばしたい2つのポイントをご紹介しましょう。
絶好の展望地であるカラパタール
まずは、エベレストを望む絶好の展望地であるカラパタール(5,545m)です。
エベレストまで直線距離にして約10㎞のカラパタールは、周囲の巨峰に比べるとまるで小さな丘のようですが、頂上からは対面にエベレスト、正面には美しい円錐形のプモ・リ(7,165m)、眼下にはクーンブ氷河と、360度の大絶景が広がります。
ゴラクシェプから標高差は400m程、登り切った先には無数のタルチョがはためき、エベレストを目の前に感動もひとしおとなることでしょう。
エベレスト・ベース・キャンプ
もう1つのポイントは、エベレスト登頂を目指す登山隊がキャンプ地を設営するエベレスト・ベース・キャンプ(通称EBC)です。
ゴラクシェプからゴロゴロとした岩が続くクーンブ氷河の上を進んでいくと、エベレスト街道最奥の地、EBC(5,350m)に到着します。
キャンプ地はエベレストの麓にあるため、EBCからはエベレストを望むことはできませんが、シーズン中ともなれば世界中から集まった登山隊で賑わいを見せ、厳しい登攀に挑戦する彼らの様子を間近で見ることができます。
いずれも標高が高く決して楽な道のりではありませんが、エベレスト同様に世界一とも言える絶景があなたを待っています。
高山病の注意点
エベレスト街道では数日から最奥のベースキャンプを目指すコースは往復2週間程と、予定に合わせてトレッキングの行程を組むことが可能です。
谷の奥に進めば進むほど標高が上がっていくので、いかに高所順応をしていくかがトレッキングの鍵となります。
急激に標高を上げずに、ゆとりある日程で少しずつ標高を上げていき高度に体を慣らして行く事が重要です。
高所順応のコツは、呼吸が早くならない程度にゆっくりと歩き、深い呼吸を心がけること。また、血液循環を悪くさせないためにも水分を多く摂取し、睡眠を十分に取りましょう。
一度、高山病の症状が出て悪化してしまうと、対処法は高度を下げるしかありません。
そのため、体調を良く見て、無理をせずゆっくりとトレッキングを楽しむことがここでのトレッキングを楽しむための一番の方法です。
きっと、あなたも「ゆっくり」を意味するネパール語の「ビスターリ」という言葉を道中で何度も耳にすることでしょう。
素朴な暮らしを続けるシェルパ族の人々の生活を垣間見ながら、自然に身を委ねてゆっくりのんびりとヒマラヤのトレッキングを楽しんでみてください。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。