ダイビング中に危険なサメに出会う確率
アメリカのスタンフォード大学の研究チームが公表したデータによれば、スキューバダイバーがサメの攻撃に遭うリスクは1億3,600万回潜って1度きりといわれています。
これは、海水浴客やサーファーよりも遥かに安全なレベルといえるでしょう。
しかし、ダイビング中に危険なサメと出会う可能性がまったく無いわけではありません。
「万が一」ということもあるので、危険なサメの見分け方と危険を回避する方法を知っておくことが大切です。
ダイビング時に危険なサメとは?
フロリダ自然史博物館の研究者による「国際サメ被害目録」によると、最も事故件数が多かったのがホオジロザメで、イタチザメ、オオメジロザメと続きます。
これらは「3大危険ザメ」と呼ばれるサメたちで、事故件数のうち約25%が死亡事故につながっています。
ついで、オオセ類やシロワニによる事故も確認されており、オオセ類は水底にじっとしていることが多く、気づかずに踏みつけて反撃にあった事例があり、ゆったり泳ぐシロワニはダイバーが簡単に近寄ることができるため触ったことが原因で、これらは死亡に至った例はわずかです。
危険なサメを見分けるには、「活発に動き回るかどうか」がひとつの目安になります。
例外もありますが、遊泳性のサメは魚食性でかつ鋭い歯を持っていることが多く、潜在的に危険なサメといえるでしょう。
水底にじっとしているサメは、自分から人を襲うことはまずありませんが、近づきすぎたり触ったりすると驚いて噛み付くことがあります。
また、攻撃性はなくてもジンベイザメのような超大型種にも要注意が必要で、強い力を持っているため誤って接触するとケガをする可能性があります。
ダイバーがサメの危険を回避する方法
サメからの危険を回避するには、サメの攻撃行動や危険なサメと出会ってしまった時の対処法を知っておくことが大切です。
サメが人を攻撃するときの行動
サメが人を攻撃する時は「噛み逃げ」「体当たり」「忍び寄り」など、いくつかの攻撃パターンがあります。
まずは、それぞれの攻撃行動の特徴を知っておきましょう。
噛み逃げ攻撃
サメによる事故で1番被害が多い攻撃パターンが、ひと噛みして逃げる「噛み逃げ攻撃」です。
被害者の多くは海水浴客やサーファーで、軽い噛み傷で済むことが多く死亡にまで至った事故は滅多にありません。
噛み逃げ行動の原因は、サメがいつものエサだと思って噛みついたものも、間違えたと気づいてやめてしまう、いわゆるサメの判断ミスだと考えられています。
体当たり攻撃
少し沖合やサンゴ礁域なので起こることが多い被害が、サメが円を描きながら人の周囲を泳ぎ回り体当たりをしてくる「体当たり攻撃」です。
サメは補食目的で人に接近してくるため、何回か続けて攻撃を受けることも多く、サメが円をどんどん小さくするように周囲を回りだしたら、すぐにその場を離れ、ボートか陸に上がる必要があります。
忍び寄り攻撃
「忍び寄り攻撃」も沖合やサンゴ礁域などで多い被害で、サメが姿を見せないように忍び寄り、突然近づいて噛みついてくるパターンです。
そのため事前に対処する方法はなく、補食という明確な意思で攻撃をしてくるため執拗に攻撃が繰り返され、被害者が受ける傷は極めて大きくなります。
攻撃的なサメと出会ってしまったとき
ダイビング中に攻撃的なサメと出会ってしまった時は、パニックにならないように冷静に行動することが大切です。
どのような対応をとればいいのか見てみましょう。
サメが近づいてきたら
サメが近寄ってきたら、まず近くいるバディにサメの存在を知らせ、サメを刺激しないように行動に注意しながら浮上して、その場を離れます。
それでも近寄ってくる場合は、岩やサンゴなどを背にして後方からの攻撃を防止し、付近に岩などがない場合はバディと背中合わせになりサメの行動を注意深く監視しながら、その場を離れましょう。
サメに攻撃を受けたら
もしもサメに攻撃を受けたら、鼻先(吻)を硬いもの(カメラなど)で叩いたり、敏感な目やエラの部分を強くつかんだり叩いたりします。
このような抵抗の意志を表すことで、一時的にサメの気勢を削ぐことができます。
サメが逃げ出したら、すぐにその場を離れましょう。
サメに噛まれたら
サメによる噛み傷は、深い傷になることが多いため、もし噛まれたら即座に止血をする必要があります。
サメによる死亡事故は、噛み傷によるものではなく失血によるものです。
また、サメによる噛み傷は複雑で雑菌による感染にも注意が必要なので、小さな傷でも必ず医療機関で治療を受けるようにしましょう。
ダイビングでサメ事故に遭わないために
サメの事故に遭わないように、安全を100%保証する方法はありません。
ダイビングでサメと出会うパターンには餌付け(フィーディング)と自然遭遇の2つがありますが、いずれも基本ルールを知っておけば、その危険性をかなり軽減することが可能です。
まず、餌付けの場合はダイビング前のブリーフィングをよく聞き、ルールを厳守することが重要です。
危険なサメと呼ばれるホオジロザメのゲージダイビングや、イタチザメなどのシャークダイビングもルールさえ守れば安全に潜ることは可能です。
そして、自然遭遇の場合は、むやみに刺激したり威嚇したりしないことが大切で、海底でじっとしているサメ、動きの鈍そうなサメ、おとなしそうなサメであっても、近づきすぎたり触ったりするのは厳禁です。
また、サメは明暗差が効くため、ウエットスーツや器材などはコントラストの強いカラーを避け黒で統一すると安心です。