海岸に流れ着いたペットボトルのキャップや、正体のわからないカラフルなプラスチック。それらを「ごみ」ではなく、ものづくりの素材として眺めてみたら――? パタゴニア鎌倉で開催された、海洋プラスチックからオリジナルランプをつくるワークショップに参加しました。子どもたちの自由な発想から見えてきたのは、楽しむことから始まる、海との新しい関わり方でした。
海洋プラスチックからランプをつくる「KAMAKURA LITTLE ARTISTS」

2026年8月1日・2日、パタゴニア鎌倉で開催された「KAMAKURA LITTLE ARTISTS 〜Pimlico Arts Japan と海洋プラスチックゴミからランプを作ろう〜」。
海洋プラスチックごみや廃材をアートへと生まれ変わらせる活動を行う「Pimlico Arts JAPAN」と、神奈川県の海岸美化に取り組む「かながわ海岸美化財団」がゲストとして登場し、海ごみについて学びながら、実際に海岸で回収されたプラスチックなどを使ってUSB電源で光るランプをつくるワークショップです。
筆者が参加した8月2日午前の回には、幼児から小学校高学年までの子どもたちとその保護者、4〜5組が参加していました。
テーブルの周りに集まった子どもたちを前に、いきなりランプづくりが始まるわけではありません。最初に行われたのは、海ごみについて知るためのトークでした。
「4秒の間に1トン」クイズで知る海洋プラスチックの現在

「みんなで4秒、数えてみようか」
かながわ海岸美化財団の柱本さんの呼びかけに合わせ、「1、2、3、4」と声をそろえる子どもたち。
「今、4秒数えている間に、1トンのプラスチックごみが海に行っちゃった」
そんな驚きの話から、海ごみについてのトークが始まりました。難しい説明を一方的に聞くのではなく、クイズに答えたり、写真を見たりしながら進んでいくため、子どもたちも興味津々です。

話題は、海を漂う小さな「マイクロプラスチック」へ。そして、海ごみが一体どこからやってくるのかという話に移ります。
海のごみというと、海岸を訪れた人がその場に捨てていったものを想像するかもしれません。しかし、街中に落ちているごみも、雨や風によって川へ入り、そのまま海へと流れ着くことがあります。
「海のごみ問題って、実は陸のごみ問題なんだよね。だから無関係な人はいません」
海から離れた場所で暮らしていても、普段の生活と海はつながっている。そんなことを、子どもたちにも身近な例を使って伝えていました。さらに柱本さんが見せてくれたのは、茅ヶ崎の海岸で最近拾ったという、古いお菓子のパッケージです。

そこに記されていたのは「昭和57年」。今から約44年前のものでした。誰かが何十年も前に捨てたものが、今も海岸に残っている。その事実には、大人の筆者も考えさせられます。
一方で、柱本さんが伝えたのは怖さだけではありません。海へ行ったら、ごみを一つ拾ってみる。そして日々の暮らしのなかで、ごみを一つでも減らしてみる。
今捨てたものが40年後、100年後の海を汚す可能性があるのなら、今一つ拾うこともまた、未来の海につながっていく。子どもたちにも今日からできる、小さなアクションが示されました。
海ごみの山が、子どもたちの「宝の山」に!

海ごみについて学んだあとは、いよいよランプづくりです。子どもたちの前に登場したのは、たくさんのプラスチックが入った大きなケース。ペットボトルのキャップ、チューブのようなもの、丸いもの、細長いもの。青、黄色、ピンク、緑……。形も色も大きさもバラバラです。
長崎や伊豆などの海岸でビーチクリーニングをしている人たちから提供された海ごみも、今回の素材として使われています。
「どれにしよう?」
ケースの中に手を入れ、素材を一つひとつ手に取る子どもたち。その様子を見ていると、「ごみを選んでいる」というより、まるで自分だけの宝物を探しているようでした。

これまで海岸に落ちていたら「ごみ」と呼んでいたものが、この瞬間から「何をつくろう?」と想像を膨らませるための素材になっていきます。Pimlico Arts JAPANが大切にしているのも、そんな視点の変化です。
ビーチクリーニングをする人たちは、ごみを拾うことにも、それぞれ独自の楽しみを見いだしているといいます。Pimlico Arts JAPAN自身も、海ごみを拾うことや集めることを楽しみながら、アートやものづくりを通して「ごみ」をいつもとは少し違う視点から見てもらう活動を続けています。
環境のためだから拾わなければならない、ではなく、「これ、おもしろい」「この形、何かに使えそう」から海ごみと出会ってみる。そんな入り口があってもいいのかもしれません。
正解なし!個性炸裂の「世界にひとつだけのランプ」

素材を選んだら、透明なライトの土台に自由に組み合わせていきます。キャップを重ねたり、細長いプラスチックを曲げたり、色の組み合わせを考えたり。スタッフや保護者に手伝ってもらいながら、それぞれの作品が少しずつ形になっていきました。
ここで印象的だったのは、「こうつくりましょう」という正解がほとんどないこと。同じライトをベースにして、同じ場所に並んだ素材から選んでいるのに、できあがるものは驚くほど違います。

黄色いキャップを高く高く積み上げたランプ。生き物のようにも、乗り物のようにも見えるランプ。何か不思議な装置を思わせる作品もあります。
「そう組み合わせるんだ!」
大人には思いつかない発想が次々と飛び出し、幼児から小学校高学年まで、それぞれの個性が文字どおり炸裂。どれも甲乙つけがたいほど秀逸です。
最後に電源をつなぎ、海洋プラスチックの間から光がともれば完成。少し前まで海岸にあったかもしれないものが、子どもたちの手によって世界にひとつしかないランプへと姿を変えました。
「拾わなきゃ」ではなく、「見つけたい」から始まってもいい

今回のイベントで印象に残ったのは、海洋プラスチックについて「学ぶ」ことと、自由に「遊ぶ・つくる」ことがつながっていたことです。最初のトークでは、海に流れ出すプラスチックの多さや、何十年も消えずに残るごみについて知りました。
けれど、その直後には、子どもたちは同じプラスチックを前に目を輝かせています。
「この色がいい」「こっちの形がおもしろい」「これをつけたらどうなるかな」
ごみだったものが、宝物のように見えてくる。
Pimlico Arts JAPANはイベント後、今回のテーマを「海ゴミの循環を生み出す」と振り返り、ビーチコーミングの楽しさや海ごみの魅力を、アートとものづくりを通して伝えたと発信していました。
海ごみ問題は、とても大きな問題です。一人で海のごみをすべてなくすことはできません。でも、次に海へ遊びに行ったとき、足元のプラスチックを見て「あ、これ何だろう」と立ち止まることはできる。気になった一つを拾うこともできます。
「ごみを拾わなきゃ」ではなく、「おもしろいものを見つけたい」。
そんな小さな気持ちの変化も、海との関わり方を変える一歩になるのではないでしょうか。
世界にひとつだけのランプを持ち帰った子どもたちには、次に海へ行ったとき、浜辺の景色がほんの少し違って見えるのかもしれません。
取材協力:パタゴニア/Pimlico Arts JAPAN/かながわ海岸美化財団
ライター
朝倉奈緒
ファッション誌の広告営業、音楽会社で制作やPRを経験後、フリーランス編集&ライターとして独立し、カルチャー・アウトドア・自然食を中心に執筆。現在Greenfield編集長/Leave no Traceトレーナーとして、自然を守りながら楽しむアウトドア遊びや学びを発信。キャンプ・ヨガ・野菜づくりが趣味で、玄米菜食を実践中。