アウトドアに出かけると、山や道沿いに広がる荒れた竹やぶが気になることはありませんか。竹林は、タケノコという旬の恵みをもたらす身近な里山環境の一つ。しかし、手入れされずに放置された竹林は広がり続け、景観の悪化や生態系への影響を招く問題にもなっています。日本の文化や人びとの暮らしを支えてきた竹は、今どう向き合うべき存在なのでしょうか。竹林の現状と活かし方、私たちにできることについて考えていきます。
竹ってそんなに増えるの?放置竹林が広がる理由

なぜ、全国各地でこんなにも竹林が拡大しているのか。その理由を知るために、まずは竹という植物の特徴と人の暮らしとの関わりをひもといてみましょう。
竹は便利だからこそ、生活の中の多くの場面で利用されてきました。プラスチック製品が当たり前となった今でも、文化や習慣のなかには竹が息づいているケースもあります。
竹とはどんな植物か
手入れされないと竹林が一気に広がってしまう理由は、旺盛な繁殖力にあります。
竹は木のように見えますが、イネ科タケ亜科に属し、冬でも枯れない多年草の一種です。草と木の性質を合わせ持つ不思議な存在で、温暖で湿潤な地域に生育し、日本だけでも約130種類が確認されています。
毎年、地下茎の芽からタケノコが出て、1日に1m以上伸びることもあるほど。さらに地面の下では地下茎が根のように横に広がり、特にモウソウチク林は条件が良ければ1年で8%面積が広がるといわれています。これは10年で2倍になるペースです。
竹も花を咲かせますが、開花の仕組みはまだ謎に包まれています。マダケやハチクは約120年周期で一斉に開花するといわれ、開花後に地上部が枯れますが、地下茎が残り再びタケノコが伸びて竹林が再生する場合もあるようです。
竹が暮らしに欠かせなかった理由

竹が昔から暮らしに欠かせなかったのは、材が扱いやすい性質だからです。節があり中が空洞で軽く、縦の繊維が強いため丈夫。鉈(なた)を入れるとまっすぐ割れ、細い材はしなやかに曲がるなど、加工しやすい素材です。
この特性からザルやかご、物干し竿などの生活道具、魚をとる漁具、竹細工や茶道具、竹垣や建材まで幅広く使われてきました。とくに茶道では茶筅(ちゃせん)をはじめ多くの道具に竹材が用いられ、今も重要な素材として受け継がれています。
また竹の葉も、食材を包むなど、保存や香りづけに活用されてきました。海外では今も建設現場の足場に利用されるなど、その実用性は現在にも通じています。食材であるタケノコはもちろん、成長の早い有用な自然素材として、竹は長く人の暮らしを支えてきたのです。
参照:
身近で不思議なタケの生態に迫る!|農林水産省
竹の性質|林野庁
日本のタケの特徴と多様な利用 | 内閣府
放っておくとどうなる?放置竹林が引き起こす問題

竹は本来、手入れされてこそ活かされてきた植物です。しかし、暮らしとの関わりが減ってしまった今、その強い繁殖力により、竹林は手に余るほどに広がっています。
山や人里の竹やぶの変化は、単なる景観の問題にとどまりません。ここでは、放置竹林がなぜ増え、どのような影響をもたらしているのかを見ていきます。
放置竹林が広がる理由と背景

放置竹林が増えている背景には、私たちの暮らしの変化があります。かつては生活道具や建材として使われていた竹も、プラスチックや金属製品の普及によって利用の機会が減りました。
さらに里山では、人口減少や高齢化が進み、竹林を手入れする担い手が不足しています。加えて、地球温暖化による気温の上昇なども、竹の分布拡大に影響している可能性が指摘されています。
こうした複数の要因が重なり、竹林は管理されないまま広がりやすくなっているのです。
山の自然環境へのリスク
放置された竹林は地下茎で周囲に広がって、畑や山林に入り込んで他の植物をおおい、太陽の光をさえぎって枯らしてしまいます。やがて地面は草木のない状態になり、雨で土壌が流れやすくなる結果に。
健康な竹林は一定の防災機能を持つとされますが、手入れされない竹林では水を蓄える力が低くなり、土砂崩れのリスクが高まります。さらに環境が単純化することで生きられる動植物の種の数が減り、生物多様性の低下につながることも無視できません。
放置竹林のリスクは、自然環境と防災の両方に影響し、私たちの生活にもつながる課題だといえます。
参照:
竹林と環境
タケ、北日本で分布拡大のおそれ
竹は厄介者?放置竹林を資源として活用

竹炭
放置竹林の問題は「減らすこと」だけでなく、「どう活かすか」という視点を持つことで、新たな可能性が見えてきます。環境や地域の課題を解決しながら、竹を再び役立てる取り組みが各地で広がっています。
竹チップ・竹炭を地球温暖化防止に
伐採した竹をチップや竹炭に加工し、資源として活用する動きが進んでいます。竹チップは堆肥や土壌改良材として使われ、農業と結びついた循環利用が可能です。
また、竹炭は土に混ぜることで二酸化炭素を長期間固定できるため、温室効果ガス削減にもつながる素材として注目され、Jクレジット(※1)の選択肢の一つでもあります。
放置竹林の整備で出た竹を燃料や農業資材として活用できれば、環境負荷を減らしながら地域内で資源を循環させることができ、持続可能なシステムとして理想的です。
(※1 Jクレジットとは、省エネや森林管理などによる二酸化炭素排出削減・吸収量を国がクレジットとして認証し、売買できる形にした仕組み。)
紙や布地の新しい素材に

竹繊維を使った和服の長襦袢
竹は繊維資源としても見直されています。国産竹を原料にした竹紙は、木材パルプの代替として注目されています。竹は空洞であるため運搬コストは割高で、同量のパルプを得るためにはより多くの竹を必要とし、コスト面には課題があるのも事実。
しかし、独特の風合いが美しく、紙自体にコシがあり、文字がにじまず書き味も良いといった特徴があり、ノートや封筒、カレンダー、紙袋、フリーペーパーなどに使われています。
また、竹繊維を使った布地が、衣類やタオルなどに活用される例もあります。竹繊維の製品は、抗菌・消臭性が期待されるほか高い吸水性をもち、肌触りも良いのが特徴です。こうした製品は、日常生活の中で取り入れやすいのも魅力といえるでしょう。
竹あかりを観光資源に

伐採した竹に穴を空けて、中に灯りをともす「竹あかり」のイベントは、地域の観光資源になっています。各地で開催されるライトアップイベントでは、竹林や公園が非日常の空間に生まれ変わり、幻想的な風景が多くの人の心をつかんでいます。
こうした取り組みは、竹林の整備と竹資源の利用を進め、地域の魅力の発信や地域経済の活性化にもつながります。竹を「人を呼ぶ資源」へと転換する好例といえるでしょう。
国産メンマを特産品に
放置竹林から生まれる若い竹を活用し、国産メンマとして商品化する取り組みも注目されています。タケノコとしての収穫時期を過ぎたものも、メンマの材料として活用できるのがメリットの一つです。
これまでメンマは輸入品が主流でしたが、地域で収穫したタケノコを加工することで、全国各地で新たな特産品としての価値を生み出しています。
竹林の整備と食品加工を組み合わせて継続的な収益化が可能となり、地域の雇用創出にもつながります。食を通じて竹林問題に関わるきっかけになる点も、大きな魅力です。
純国産メンマの作り方はこちらをチェック
参照:
バイオ炭の施用量上限の目安について|農林水産省
広がる竹の可能性!新たな竹の利用法に迫る|農林水産省
竹からタオルや洗剤を生産、放置される竹林を“宝の山”へ|小企業ビジネス支援サイト
竹あかりで学ぶ循環型資源利用|玉川大学
放置竹林問題解消を目指したメンマづくりに関する取組⋮林野庁
竹と上手につきあうヒント

山歩きやキャンプで見かける竹やぶも、少し見方を変えると、放置竹林という課題の入口となるかもしれません。荒れた竹林が気になったなら、竹でできた製品や竹の素材を使った商品を選んでみるのも手軽な方法の一つです。
竹は成長が早く再生可能な資源であり、石油由来のプラスチック製品に比べて環境負荷が低い素材といえます。特に国産のものを選べば、国内の竹林の有効活用や整備の循環にもつながります。
さらに一歩踏み込むなら、竹林整備のボランティアや里山保全の活動に参加してみるのもおすすめです。自治体の広報や地域のNPO、森林組合のホームページ、イベント情報サイトなどで募集が行われており、初心者向けの体験会も開かれています。竹の伐採やタケノコの収穫などを実際に体験すれば、楽しみながら自然との距離がぐっと近づくでしょう。
参照:
TOKYO環境学習ひろば⋮東京都環境局
里山へGO!⋮東京都環境局
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。