「アニマルウェルフェア」は「動物の福祉」と訳されます。このアニマルウェルフェアは、日本では海外から遅れているのが現状。今回はアニマルウェルフェアの意味や、「5つの自由」についても説明します。アニマルウェルフェアを考えるきっかけにしてみてください。

アニマルウェルフェアってなに?

アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェアとは、動物たちが死を迎えるまで、できるだけストレスなく、健全に過ごせる環境を整えるための定義のこと。日本も加盟している世界の政府間機関「国際獣疫事務局(OIE)」も勧告している基準です。

アニマルウェルフェアにおいての動物というのは、ペット・実験動物・動物園の動物たちなど、すべての動物たちが含まれています。今回は、主によく取り上げられる家畜動物たちについてお伝えしますね。

 

アニマルウェルフェアの指針「5つの自由」

アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェアには、「5つの自由」という指針があります。イギリス政府が打ち出した「すべての家畜に、立つ・寝る・向きを変える・身づくろいする・手足を伸ばす自由を」という基準によってつくられました。「5つの自由」の主な内容を説明します。

空腹と渇きからの自由

  • 発育段階にあわせた適切な量と質の食事を与える
  • いつでも新鮮な水が飲める状態にしておく など

不快からの自由

  • 家畜によって異なる快適な温度を保つようにする
  • 夏の暑さ対策、冬の寒さ対策を行なう など

痛み・傷害・病気からの自由

  • 外的処置を行なうときは、苦痛を緩和するよう努める
  • 病気やケガをした場合は、適切な治療を行なう など

恐怖や抑圧からの自由

  • 騒音などの恐怖を与えないようにする
  • 過度なストレスがかからないよう努める など

正常な行動を表現する自由

  • 家畜が休息するなど、正常な行動ができるスペースを確保する
  • 家畜の習性を把握し、それにあった環境で飼育する など

出典:
農林水産省「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について
公益社団法人 日本動物福祉協会「動物福祉について

日本のアニマルウェルフェアはどうなってるの?

アニマルウェルフェア

日本のアニマルウェルフェアは、世界から遅れているのが現状です。世界動物保護協会(WAP)が発表した「動物保護指数(API)」によると、日本はA~Gのランクのうち、Eランクと低い評価。畜産動物の福祉に至っては、最低評価のGランクという残念な結果でした。

現在、日本で多く見られる家畜動物の飼育方法について説明します。

出典:世界動物保護協会(WAP)「動物保護指数(API)/日本

妊娠ストール

妊娠ストールとは、妊娠した繁殖用の母豚が入れられる檻です。その檻は、身動きが取れない豚自体とほぼ同じ大きさ。母豚は子豚を産んだあと、種付けをされ、妊娠するとまたその檻に入れられます。

妊娠ストールが、アニマルウェルフェアに反するとして禁止している国は、EU・アメリカ・スイス・オーストラリア・カナダなど。廃止を表明している海外企業も多数あります。

日本国内の対応は海外から遅れていますが、たとえば日本ハムは2030年度末までに、自社農場での妊娠ストールを廃止する予定。今後は徐々に対応する企業や農家が増えていくと考えられます。

出典:日本農業新聞「アニマルウェルフェアで日本ハム 対応強化へ方針策定 豚の妊娠ストール廃止

バタリーケージ

バタリーケージは、鶏を金網でできた狭い檻に入れ、それをいくつも連ねて飼育する方法です。本来、鶏は羽ばたきや身づくろいをし、地面を歩き回る習性があります。このバタリーケージでは、その欲求を満たすことができません。

バタリーケージも妊娠ストールと同じように、アニマルウェルフェアに反するとして、EU・スイス・ブータン・インドで禁止されています。2022年時点で、アメリカの8州でもバタリーケージ禁止の動きが見られますよ。今後、日本でも鶏の飼育方法の改善が期待されるところです。

乳牛の飼育方法

日本では多くの場合、赤ちゃん牛は母牛のお乳を飲めません。赤ちゃん牛は、母牛と離されて人工乳を飲みます。母牛のお乳は人間が飲む「牛乳」となるからです。

成長すれば、人工授精・妊娠・出産・搾乳が繰り返され、5〜6年で廃牛となって短い一生が終わります。

こうした乳牛の飼育方法の改善のために、「一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会」は、2016年、独自の認証制度の運用をはじめました。評価項目を80%以上クリアした農場を認証して、その食品に認証マークを与えるなどの活動を行っていますよ。

出典:一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会「乳牛のアニマルウェルフェア評価基準(16年8月)

 

家畜動物たちのために、私たちができること

アニマルウェルフェア

海外のアニマルウェルフェアに近づく第一歩として、わたしたちにもできることを考えてみましょう。

アニマルウェルフェアに配慮した食品を購入する

アニマルウェルフェアを意識した買い物をすることも、方法のひとつ。たとえば、平飼いの卵を買うなどです。地面の上を自由に歩き回れる鶏たちは、ストレスが少なく、アニマルウェルフェアに叶った飼育がされていると考えられます。

お肉や牛乳も、放牧飼育のものを選んでみてはいかがでしょうか。

アニマルウェルフェアを推奨する自治体に関心をもつ

日本には、アニマルウェルフェアを推奨している自治体もあります。たとえば、山梨県は2021年、自治体では初の認証制度「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を創設しました。認証された農場やそこで生産された畜産物には、認証ロゴマークがつけられますよ。

出典:山梨県「やまなしアニマルウェルフェア認証制度について

家畜動物のことを知る

自分で調べないと、家畜動物について知ることはできません。スーパーで売られているカットされたお肉、牛乳パックに入っている牛乳。そこに並べられるまでの過程を知るために、畜産の現場を見学するのも、アニマルウェルフェアについて考える機会になるかもしれませんね。

今回は、アニマルウェルフェアの日本の現状や、私たちにできることについてお伝えしました。毎日、当たり前のように食卓に登場するお肉や牛乳。しかし、その背景には海外から遅れた日本の現状があります。動物たちも私たち人間と同じ生きものであるというのが、アニマルウェルフェアの基本的な考え方です。まずは、アニマルウェルフェアについて正しく理解することからはじめてみませんか。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。