今さら聞けない、天気全体についての基礎知識を説明しているシリーズの最終章。3回目のテーマは、アウトドアでは避けることができない怖い存在である雷です。気象現象としての雷から、身を守るための安全対策を解説していきます。

アウトドアでは不可避の存在である雷

気象 天気 基礎知識

アウトドアで活動するときに、避けることができないリスクが落雷です。まずは、雷から身を守るための基礎知識を身につけておきましょう。

積乱雲を早く見つけ近寄らない

雷は発達した積乱雲の下で発生し、かなりの割合の雷が落雷となって地上付近に到達します。夏場の雷雨や冬の雪雲、寒冷前線や台風など、積乱雲が発達しやすい気象状況では、落雷のリスクはきわめて大きくなります。

落雷に遭遇しないためには、何よりもその予兆を早く察知して、対処することが最善の方法。雷は発達した積乱雲の下で発生するため、それを見つけて近寄らないことがもっとも有効です。

もし、見上げるほどの距離に迫っていたら、迷わず、悩まず、安全な建物のなかに避難しましょう。

安全な避難先とは?

安全な避難先としては、大きなビルのなかが最適です。しかし、アウトドアフィールドでは近くにないことが多いため、低い建物や車のなかに避難しましょう。

ここで大切となるのは、密閉された空間のなかに入ること。東屋のような屋根と柱だけの建造物や、商店の軒先などは避けてください。そのような場所に雨宿りと兼用で避難するのは危険です。

そして、なかに入っても壁や窓からはできるだけ離れ、車中ではボディや金属部分には触れないことが大切です。

また、絶対に安全とまでは言えませんが、高い建物や鉄塔には雷に対する保護範囲があると言われています(図参照)。その範囲内に入れば比較的安全なので覚えておくと役立ちます。

以前は樹木にも保護範囲が存在すると言われていましたが、枝や葉の先から電撃を受ける事例も多く、決して安全とは言えないのです。

 

雷の性質を知っておこう

気象 天気 基礎知識

自然界でリスク最強の飛び道具とも言われている雷。身を守るためには、雷の基本的な性質を知っておくことが重要です。

雷は少しでも高く突き出たところに落ちる

雷の性質についての一般常識として、「雷は高いところに落ちやすい」「金属に落ちやすい」というところではないでしょうか。たしかにこれらは雷の性質ですが、もう少し詳しく解説していきます。

「高いところに落ちやすい」雷ですが、補足すると「少しでも高いところ」となります。つまり3m以上などの絶対的な高さではなく、相対的に少しでも高い方に落ちるのです。

身長のことなる2つの人形を並べて行った実験で、身長が20cm違うと背の高い方に落ちるという結果が出ています。このことからも、なるべく凹んだところで低い姿勢を取ることが大切だとわかります。

ただし、電撃は地面も伝わってくるので、寝そべることは禁物です。接地面積を少なくして低くしゃがみ、万が一のときに足から足に電気が抜けるように、膝は開いておきましょう。

ボードやパドルは雷のターゲット

「金属に落ちやすい」を補足すると「金属など電気を通しやすいもの」となります。

アウトドアでの活動には道具・用具がつきもので、それらには金属製のものだけではなく、FRP製のものも多くあります。

FRPとはさまざまなクロス(Fiber)を樹脂(Resin)で強化して作られたプラスチック(Plastic)のこと。このFRPのクロスに、高い電気伝導率を持つカーボンクロスを使用している製品も、ボードを筆頭として多くあります。

とくにSUPのパドル、ウィンドサーフィンのマストやブーム、そしてフィンなど、尖った形のものは、雷を呼び込みやすいので注意が必要です。

光と音の時間差で雷との距離がわかる

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雷が光ってから雷鳴が聞こえるまでの時間差で、雷までの距離がわかるという説があります。ご存知のかたも多いのではないでしょうか。これは決して都市伝説ではなく、音と光の速度の差から導かれる根拠がある説です。

稲妻を見たら秒数をはかろう

音の速さは秒速340m、時速にすると1,225kmです。光の時速は10億7,900kmと、それと比べ物にならないほど高速です。

そのため、シンプルに光ってから雷鳴が聞こえるまでの秒数を測り、それに340mをかけた距離が雷までの距離と思って差し支えありません。

たとえば、光ったあと10秒後に音が聞こえれば3,400m、3秒の場合は約1kmと算出できます。なお、音が聞こえるのは10〜15kmぐらいまでで、光るだけの場合は40〜50kmぐらいです。また、10〜15kmという距離は、ほぼ積乱雲ひとつの大きさでもあるのです。

どうしてゴロゴロという音がするのか?

ゴロゴロと表現される雷鳴ですが、どうしてそのような音が発生するのでしょうか?原因は、雷の通り道の大気が瞬間的に熱せられ膨張するためで、これによって音が発生します。

大気はもともと絶縁物です。しかし、強大な雷エネルギーは絶縁物である大気を引き裂いて、何とか地面に伝わっていこうとするのです。

雷は、約3万℃という太陽の表面温度の約5倍の高温に、一瞬にして大気を熱してしまいます。同時に圧力を高めて瞬間膨張します。

この時の衝撃音が雷鳴の正体で、近いと「バーン!」や「バリバリッ!」などの衝撃音、遠い場合は反響するため「ゴロゴロ」という音になるのです。

SUPやウィンドサーフィンをはじめとするウォーターアクティビティは隠れる場所がありません。たとえボード上にスタンディングしていなくても、水上にいるだけで人間は周囲よりも20cm以上高い存在になります。海から浜に上がり、立ち上がった瞬間に雷に打たれた死亡事例もあります。雷の標的にならないためにも、天候の変化に敏感になり、ウォーターアクティビティを楽しむようにしてください。

ライター

Greenfield編集部

自然と向き合い、環境に配慮しながらアウトドアスポーツを楽しむ人に向け、自分や周囲のウェルビーイングの向上につながる情報をお届けします。