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第3章のテーマ「波」の第2回目も波を理解するための基礎知識をご紹介していきます。前回は波の発生と発達の説明でしたが、今回は波の大きさと速さに関わる知識についてフォーカス。また天気予報で使用される波に関する用語についても解説します。

波の大きさは「波高」だけではなく「周期」も重要な要素

気象 基礎知識

大きな波と聞いたときに、まず思い浮かべるのは高さのある波だと思います。

しかし、幅がある、水の量が多い、分厚いといった他の要素も含まれた大きな波を思い浮かべることも少なくありません。

このように波の大きさを決める要素は、高さを表す「波高」だけではなく、その他の事象が関係する波の「周期」も重要となるのです。

「波高」とエネルギーの大きな波

波の大きさとは、波の底から頂点までの高さのことだと、通常は理解するのではないでしょうか。気象予報などで使用されている「波高」という用語がこれに当たります。

しかし、波高は波の高さだけをもっとも的確に表す用語ですが、一般的に大きな波と呼ぶ場合は、それだけではなく、左右の幅や前後方向、厚みも要素に入れて大きな波と表現しています。

ウォータースポーツ愛好者など、実際に波のなかに身を置いた経験がある人なら、この違いに納得できるのではないでしょうか。

事実、彼らは「大きな」だけではなく「分厚い」とか「ワイドな」といったような形容詞を波の前につけて波の大きさを表現しています。

海などのウォーターフィールドを安全に利用するためには、大きな波とは高さだけではなくエネルギーが大きな波であるという幅広い認識を持つことが必要です。

波のエネルギーと直接関係する「周期」

気象庁の波浪予想図には、「波高」とともに「周期」も表示されています。波やうねりの頂点や底は繰り返し現れますが、この現れる間隔を周期と呼びます。

周期は、定義は違いますが波長と理解することができます。波の高さは目視でもすぐにわかりますが、周期は見ていてもなかなかわかりません。

天気予報などで出される波浪予想図は大きなスケールでの波やうねりの予想です。

私たちが普段見ている海岸に押し寄せた最終段階の波とはことなりますが、この予想図の波高と波長から波のエネルギーの大きさをある程度予想することができるのです。

波高だけでなく周期の長短によっても、その波・うねりの水の量はことなります。周期が長い波は水の量が多く、短い波では水の量が少なくなります。

たとえ波高が低くても周期が長い場合は、波高が高くて周期が短い波よりも水の量が多いというケースもあります。

また、波は岸に近づき水深が浅くなるとブレーキがかかるため、水が前後に圧縮されます。このとき水の量が多いとそれまで波高が低くても、少ない場合よりも波高が大きくなることもあるのです。

台風からのうねりは、おおよその周期が14秒、もし発達していたとしても低気圧からのうねりの周期は8秒と言われています。

正式な波長は、周期の2乗に比例するため、台風の波の波長は低気圧の波長の3倍となるのです。

低気圧の波長を100mとすると台風の場合は波長が300mとなり、水の量もエネルギーも格段に多いということになります。

このように周期・波長の長短は水の量に関係し、それはその波・うねりのエネルギーの大小に関わってくるのです。

 

深海波と浅海波の2パターン

気象 基礎知識

波が遠くまで伝播していく速さには2つのパターンがあり、水深が浅いところの波「浅海波」と、深い海の波「深海波」によって特徴が異なります。

深海波といっても深い海底の方に起きている波ではありません。海底の影響を受けない波のことで、あくまでも水面の波です。

深海波は波長や周期が長く、大きい波ほど速く伝わる性質があります。波速には公式があり、周期や波長から導くことが可能です。

低気圧や台風までの距離がわかれば、到達時間まで計算で求めることができますが、単純に距離を波速で割ればいいという単純なものではないのです。

群速度とブレイクの発生

実際に、陸に届くまでにはそのほぼ2倍の時間がかかります。波が実際に陸に到達するスピードを群速度と呼び、このスピードを使って到達時刻を割り出します。では、なぜ時間がかかるのでしょうか?

ひとつの波のエネルギーは、そのまま次の波に伝わるわけではありません。1/2はその波自身の維持のために使われ、次の波を作るために残りの1/2を使います。

それを次々繰り返していくと、n個先の波のエネルギーは1/2のn乗となり、波高も目視不能なレベルになってしまいます。

その結果、目に見える大きさの波が届くには、計算上のほぼ2倍を費やすことになるのです。

先ほど台風の方が波長が長いと触れましたが、当然の事ながら台風の群速度の方が速く、その群速度はおおよそ低気圧の1.5倍となります。

まだ太平洋のはるか南方海上に台風が位置していても、早く大きな波が立ちはじめるのは、群速度が速いためです。

サーファーなど波を望んでいる人を除いて、海辺で遊ぶときには遠くても台風の位置は気にするようにしてください。

そして、この深海波が浅海波になると、前述のようにスピードが遅くなって波高が高くなります。

回転する水粒子は、波頭から進行方向に飛び出しブレイクを作ります。波のブレイクは、浅海波の減速によって発生する現象なのです。

 

気象庁が定める波の状態を表す各種階級や区分

気象 基礎知識

最後に波やうねりについて、気象庁が定めている用語を紹介しておきます(別表)。これは、天気予報を見る際、聞く際に覚えておくと役に立つはずです。

気象 基礎知識

なお、波浪を表す用語には、荒れている、しけているといった曖昧な表現もあります。しかし人命に関わる情報だけに、気象庁は客観的な表現としていくつかの区分や階級を定めているのです。

今回ご紹介した波・うねりの速さは、はるか沖合から伝播してくるスピードで、スケールの大きな話です。この種の基礎知識をそなえておくと、天気予報を見る目、聞く耳が変わり、特に海でアクティビティを楽しむ際に、スケジュール立てや当日の準備・心構えに役立てることができますのでぜひ覚えておきましょう。なお、波の速さにはもうひとつあります。それが波のブレイクの速さで、直接私たちが体に感じる身近なスケールの話です。これは改めて別の機会に解説します。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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