浜辺で飼い主とサーフィンをしている犬を見たことはありませんか。動画で見たことがある人はいるのではないでしょうか。世界大会まであるドッグサーフィンという犬のマリンスポーツです。今回はドッグサーフィンを通じて犬と人の関わり方について考察します。
 

ドッグサーフィンとは

ドッグサーフィン トレーニング

ドッグサーフィンとは、その名の通り犬が行うサーフィンです。

犬だけでサーフボードに乗る「ドッグサーフィン」と、人も一緒にサーフボードに乗る「ダンデムサーフィン」があり、飼い主と楽しみながら競技を行うドッグスポーツのひとつです。

アメリカでは毎年、世界大会も開かれるほどメジャーなドッグスポーツですが、日本でも湘南や千葉で見かけることが多くなってきました。

犬のしつけや運動の一環として、さまざまなコンテストやドッグショーが世界中の愛犬家の間で行われています。

なかでもドッグサーフィンは、水辺で活躍する犬種によるウォーター・トライアルという競技から始まりました。

水辺の狩猟犬を先祖に持つガンドッグというグループには、レトリバー種、スパニエル種、ウォータードッグなどの犬種があり、従順で泳ぐのが得意な犬種なので、ドッグサーフィンなどの水辺でのスポーツに適しています。

また愛玩犬のグループに入るプードル、パピヨン、キャバリアなども、ガンドッグを先祖に持つ犬種なので、しつけしだいではドッグサーフィンを楽しめる犬種と言えます。

ドッグサーフィンで大事なのは、犬も楽しんでいるかどうかです。

ドッグスポーツは犬の展覧会でも飼い主の自己満足のためにあるのではありません。

犬と人が共に楽しく遊ぶことがドッグサーフィンの魅力なのです。

 

トレーニングとしつけ

ドッグサーフィン トレーニング

サーフィンは人間でも難しいスポーツです。

愛犬と一緒にサーフィンを楽しむためには、適正なトレーニングやしつけが不可欠です。

人間のサーフィンでも同じことを言いますが、陸上で出来ない行動は、不安定な海の上では到底できません。

「オスワリ」「マテ」で、飼い主が離れても次の指示まで待てることが、最低限必要なスキルになります。

スケボーでの練習も人間のサーフィンと同様、もしくはそれ以上に大事な練習法のひとつです。

また、もしもの時に備えて犬用のウエットスーツや救命胴衣を着けるのですが、これを嫌がらずに付けられるかも重要です。

そもそも、水を嫌がったり、波音や海そのものを怖がったりするのであれば、無理に教えようとしてもストレスを与えるだけです。

飼い主の気持ちを押し付けるのではなく、愛犬も楽しめるように海遊びの延長として一緒に遊ぶことから始めましょう。

 

日本のペット産業

ドッグサーフィン トレーニング

個体差はありますが、ほとんどの犬は泳ぐことができるはずです。

しかし水を怖がったり、大きな音にストレスを感じたりするのは、幼犬時の社会化が影響しています。

犬は本来、生まれてから6ヶ月以内に、母犬や一緒に生まれた兄弟犬から社会化を学びます。

どのくらい噛んでも大丈夫なのか、吠えていい場合といけない場合、泳ぎ方や遊び方、天候や環境など、さまざまな体験をこの時期にすることにより、社会化を学習していくのです。

犬はオオカミを先祖に持つため群れで行動し、えさ場、寝床、トイレは別々の場所を使う習性があります。

そのため、社会化が的確に行われている子犬は、トイレトレーニングもそれほど難しいものではありません。

ドッグサーフィン トレーニング

しかし、日本のペット産業では、これまで行われていた独特の販売方法により、犬本来の社会化がないがしろにされてきました。

生後すぐに母犬から引き離され、狭いケージに入れられて店頭に並びます。

そんな環境では、季節や天候、自然などを感じる事も出来ずに育ちますし、トイレも食事も寝るのも同じ場所です。

何も学ぶことが出来ないまま、知らない人間に買われていき、見たことのない環境で突然しつけが始まるのです。

戸惑うのも当然な事ですし、新しいことを覚えるのも犬にとっては大変なストレスを感じることでしょう。

 

目を背けたくなる殺処分問題

ドッグサーフィン トレーニング

日本では未だに、犬、猫をはじめとしたペットは法律的にモノ扱いされ、人間の都合で行き場を失った動物たちは殺処分されています。

平成27年度に保健所などの行政機関に引き取られた犬猫の数は約13.6万頭。

そのうち殺処分されたのは8万頭を越えます。

しかもこの数字は行政機関だけの数字ですので、繁殖場や流通時に死んでいった数を含めると更に数倍もの命が失われています。

殺処分問題解決に向けて、行政やボランティア、民間企業などが、引き取りや里親探しなどの対策を講じています。

しかし日本独自に発展した、利益重視の身勝手なビジネス形態を変えない限り、捨てられる犬猫の数は減りません。

欧米では、犬の生体を売買することは法律で禁止されています。

ペットショップは犬を飼うところではなく、えさやおやつ、グッズを買うところなのです。

パピーミルと呼ばれる繁殖場で、工場のように生産され、モノ扱いされて販売される日本独特のビジネスプランは、世界の先進諸国から批判されています。

2020年東京オリンピックでは、世界中から人々訪れると予想されていますが、一部の動物愛護団体からは、家族をデパートで買うような野蛮国へは行けないとまで言われているのです。

 

犬と人の関係性

犬と人間の関りは驚くほど永く、日本では古代石器時代までさかのぼります。

また古代エジプト文明期の壁画にも犬が登場するなど、人類と犬の関係は古くから続いていたものとされています。

もともとオオカミが家畜化され、主に狩猟犬として活躍するようになりました。

その後、牧畜犬や番犬、愛玩犬など、用途により交配が行われていき、現在では350種類以上の犬種が存在します。

ドッグサーフィン トレーニング

犬は古くから人類の生活において、重要なパートナーとして活躍してきました。

近年のペットブームにより、特に愛玩犬と呼ばれる犬種は、おもちゃのような扱いを受けていますが、本来、犬と人間は相互作用の関係にあるべきだと思います。

共に人生を生きるパートナーのような存在であり、人間は犬から癒しや補助をもらい、犬は人間から食事などの生活の糧をもらっているのです。

留守番をしてくれたり、しつけ通りの行動をしてくれたりした犬にご褒美をあげることで、犬はその行動が飼い主を喜ばせ、自分にも見返りがあることを学びます。

しつけやトレーニングは、この条件づけという関係性から行われています。

犬にとっての「ご褒美」は、おやつなどの食べ物だけではありません。

撫でてもらったり、飼い主が褒めてくれたり、一緒に遊んで飼い主が笑顔になってくれることも「ご褒美」なのです。

 

ドッグサーフィンが繋げる輪

ドッグサーフィン トレーニング

全ての犬がドッグサーフィンをできるわけではありません。

ドッグサーフィンをするためには、もともとの気質や性格、適切なトレーニングが出来ているかなどの必要なスキルがあります。

もちろん、飼い主もサーフィンが出来ないと、一緒に楽しむことは出来ません。

浜辺でドッグサーフィンをしているところには、自然と人が集まり笑顔になります。

愛犬と楽しそうに波に乗っている姿は、愛犬家にとってはうらやましい光景でしょう。

「うちの子も・・・」と挑戦したくなるはずです。

ドッグサーフィンは、犬と人間が幸せに暮らすために必要な信頼関係やしつけ、トレーニングの延長線上にあります。

日本でも、ドッグサーフィンがもっとたくさんの人の目に留まり、一緒に遊べる犬達が増えることで、犬と人間の関係性がもっと幸せなものになるのではないかと思います。

ドッグサーフィンは、犬と飼い主の信頼関係から成り立ち、お互い真摯に取り組まなければできないマリンスポーツです。大好きな海で、大好きな愛犬と、大好きなサーフィンをする至福の時間は、犬と人間の幸せのあり方を見せてくれます。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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