エコビレッジってご存じですか?「自然と共生する暮らし」と聞くと、どこか理想論のように感じる人もいるかもしれません。しかし、共同生活やパーマカルチャーを実践しながら、20年以上にわたって運営されているエココミュニティが、実はスイスにも存在します。今回は、ボーデン湖畔の古城を活用したエココミュニティ「Schloss Glarisegg(グラリゼック古城)」を通して、エコビレッジの持続可能な暮らしの魅力を紹介します。ぜひ最後までお楽しみください。
エコビレッジとは?

エコビレッジと聞いて、みなさんはどのような場所を思い浮かべるでしょうか。
自然の中で自給自足する集落、あるいは環境意識の高い人たちが集まる特別なコミュニティ。そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、エコビレッジは特定の価値観を持つ人だけで構成される場所ではありません。
環境への負担を減らしながら、人と人、人と自然とのつながりを大切にし、持続可能な暮らし方を実践するコミュニティのことを指します。
気候変動や環境問題への関心が高まる近年、こうしたエコビレッジは世界各地で少しずつ広がっています。なぜ今、エコビレッジが注目されているのでしょうか。
エコビレッジが注目される理由
近年「サステナブル」という言葉を目にすることが多くなりました。環境に配慮した商品を選ぶこともひとつですが、本質的には暮らしそのものを見直すことが大切なのではないでしょうか。
エコビレッジは、食・エネルギー・住まい・コミュニティを切り離して考えるのではなく、ひとつの循環として捉えているのが特徴です。
世界的に有名なエコビレッジとしては、イギリスのフィンドホーン(Findohorn Foundation)※1があります。自然と共生の精神性を重視したコミュニティとして知られ、多くの人が学びの場として訪れています。
日本では、千葉県の木更津市にある※2クルックフィールズが注目されています。エコビレッジそのものではないですが、共通する価値観を体験できる場所でもあります。
農業や食、アートを融合させた施設で「これからの暮らし方」を体験できる場所として人気を集めています。
※1 Findhorn Foundation ※2 クルックフィールズ
「理想の暮らし」を目指すコミュニティとは

エコビレッジにはさまざまな形がありますが、共通しているのは「つながり」を大切にしていることです。
食べ物を育てる人、料理をする人、子どもを育てる人、それぞれが役割を持ちながらコミュニティを支えています。現代社会では、便利さや効率性が中心とされる一方で、人とのつながりが希薄になりがちです。
私自身、スイスのシェア畑を訪れたとき「野菜を育てること」以上の豊かさを感じました。収穫の喜びだけでなく、隣の区画の人との他愛ない会話や、季節の移ろいをからだで感じる時間。それが何より心地よかったのです。
エコビレッジも同じだと思います。その本質は環境への取り組みだけではなく、「人とのつながりを取り戻すこと」にもあるのではないでしょうか。
スイスで見つけた「暮らしとしてのエコビレッジ」
持続可能な暮らしを実践するコミュニティと聞くと、現実から遠い話のように感じてしまうかもしれません。正直、私も最初はそう思っていました。
でもその世界を知るうちに、エコビレッジは「選ばれた人だけの理想郷」ではなく、人と自然とのつながりを大切にしながら暮らしを丁寧に作っている場所なのだと気付かされました。
スイスでの代表例のひとつが、ボーデン湖畔にある「Schloss Glarisegg(グラリゼック城)」です。ここでは実際に人々が暮らしながら、共同生活やパーマカルチャー、教育活動を通して、持続可能な社会作りに取り組んでいます。
ボーデン湖畔の古城に生まれたコミュニティ

グラリゼック城は、スイス東部のボーデン湖を望む場所にあります。歴史ある古城を活用し、2003年からエココミュニティとして運営されています。現在は約40名の大人と20名ほどの子どもが一緒に暮らしながら、共同生活を実践しています。
湖と緑に囲まれた美しい環境は、まるで物語の中の世界のよう。印象的だったのは、「特別な人たちの楽園」ではないということ。実際に子育てをしながら働き、ごく普通の日常を送る人たちが集まるコミュニティなのです。
共同生活・パーマカルチャー・教育の実践
グラリゼック城では、パーマカルチャーの考え方が生活の基盤になっています。パーマカルチャーとは、自然界の循環を手本にしながら、人間の暮らしも持続可能な形でデザインしようという考え方です。
敷地内では野菜や果物が育てられ、一部はコミュニティの食卓を支えています。また、食だけではなく、教育や子育て、コミュニティ運営も重要なテーマです。暮らしているメンバーは、意見の違いがあっても丁寧に話し合いを重ねながら意思決定を行い、自分たちの暮らしを自分たちで作り上げています。
コミュニティづくりを学ぶ人も集まる
面白いのは、グラリゼック城がコミュニティメンバーだけの場所だけではないことです。同じ敷地内にはセミナーセンターがあり、一般の人も有料でさまざまな学びの機会に参加できます。
なかでも、コミュニティメンバーの関わる「コミュニティ構築アカデミー(Akademie für Gemeinschafsbildungt)」では、持続可能なコミュニティの運営方法や、人との関係性の築き方、パーマカルチャーについてのセミナーが開催されています。
セミナー受講者は、敷地内でキャンプも楽しむこともでき、自然豊かな環境の中で学びを深められるのも魅力です。
キャンプをしながら、実際に暮らしてる人たちの姿や住民同士が協力しながら生活する様子に触れることで新しい価値観をより間近に感じられるかもしれません。
また、子どもたちにとっても、自然の中で遊ぶだけではなく、多様な人々が支え合いながら暮らす姿をみることは、普段の旅行やキャンプでは得られない貴重な経験になりそうです。
キャンプに抵抗があったり、日帰りが難しい人は、近隣ホテルも案内してもらえるため、家族でも安心して訪れることができます。
日本の暮らしへのヒント

エコビレッジは「自然豊かな場所に移住しなければ実現できない暮らし」ではありません。グラリゼック城の取り組みを見ていると、大切なのは場所ではなく、人や地域とのつながりを意識することだと感じます。
日々の暮らしの中で小さな一歩を踏み出すことで、持続可能な暮らしに近づくことができます。ここからは日本でも取り入れやすい方法を紹介します。
エコビレッジに住まなくてもできること
誰もがエコビレッジに暮らすことは不可能。しかし、私自身スイスで暮らす中で、シェア畑や地域のイベントなどを通じて、人と緩やかにつながることの大切さを実感しています。
実は身近な場所にもヒントはあります。大切なのは完璧を目指すことではなく、意識を少しだけ変えてみることなのです。日本でも取り入れやすい方法をいくつか紹介するので、是非参考にしてみてください。
・クルックフィールズを訪れてみる
まずは、サステナブルな暮らしをを体験できる場所に足を運んでみるのもひとつの方法です。
千葉県木更津市にあるクルックフィールズでは、農業・食・アートを通して、自然の循環や資源の繋がりを五感で体験できます。野菜の収穫や種まき体験だけではなく、「育てる」「食べる」「土に還す」という循環の流れを身近に感じられるのが魅力です。
実際に共同生活を送るエコビレッジではありませんが、施設を利用することで、宿泊者同士が自然につながり、体験を通して日常では触れることのできない価値観に出会えます。
持続可能な暮らしに興味があるものの、何から始めればよいのか分からないという人にとって、エコビレッジ的な価値観に触れる入り口になるかもしれません。
・シェア畑、コミュニティガーデンを利用してみる
以前紹介したシェア畑も、その延長上にあります。自分で野菜を育てる体験は、食への意識を変えてくれるだけではなく、地域の人との自然な交流のきっかけにもなります。
シェア畑についてはこちらをチェック
・地元のコミュニティに参加してみる
地域のお祭りや清掃活動、マルシェに参加してみるのもよいでしょう。仕事や子どもの親として接点を持った人たちとは、また違ったコミュニティに出会えるかもしれません。
年齢や性別、立場関係なく、みんなで何かを作り上げる体験は、エコビレッジが大切にしている「人との繋がり」や「支え合い」の感覚に通じるものがあると思います。
ライター
アルパガウス 真樹
スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。
