日常の移動手段として、電動自転車(電動アシスト自転車)を取り入れてみたいと思ったことはありませんか?日本では子育て世代の保育園送迎などをきっかけに電動自転車が普及していますが、スイスでは通勤や買い物、レジャーなど幅広い移動手段として利用され、国内の保有台数は約120万台に達しています。この記事では、日本とスイスの電動自転車の使われ方の違いを年代別に比較しながら、実体験も交えて紹介します。カーシェアリングと併用するスイスの移動スタイルから、暮らしを豊かに変えるヒントを探ってみましょう。
日本とスイスではどう違う?電動自転車の広がり方を比較

電動自転車の普及は、日本もスイスもコロナ期をきっかけに急成長してきました。日本とスイスでは異なる成長の道筋を辿ってきましたが、両国ともに電動自転車は「便利な移動手段」として支持されています。
誰が、何のために利用しているのかを見ると、その背景にある生活文化や地形、価値観の違いがくっきりと浮かび上がります。ここからは、日本とスイスの違いを見ていきましょう。
日本:子育て世代の送迎ニーズが普及の後押し

日本で電動自転車といえば、多くの人がまず思い浮かべるのは「子供の送迎」です。特に都市部では、保育園の送り迎えや買い物のために利用する家庭が多く、子育て世代にとって日常に欠かせない移動手段になっています。
実際、日本では自転車を保有する30代の子育て世代の約4人に1人が電動自転車を所有※しているという調査もあり、生活の利便性を高めるツールになっています。つまり、日本では「生活を快適にする乗り物」という位置付けが強いと言えるでしょう。
※参考:AU損保
スイス:通勤や日常の移動手段として普及

一方、スイスでは電動自転車の役割が少し違います。スイスは平地でも起伏に富む地形で、通勤のアップダウンもつきもの。電動アシストがそのハードルを取り払い、通勤・買い物・レジャーの全てを支える「車に変わる実用的な足」として定着しました。
子育てシーンにおいても日本とは少し役割が違います。日本では、保育園への送迎が電動自転車の主な利用シーンのひとつです。通勤前後の限られた時間の中で、子どもを乗せて効率よく移動する手段として定着しています。
スイスでも、保育施設(託児所)への送迎に電動自転車を使う家庭はありますが、日本ほど「送迎専用の移動手段」としての色合いは濃くありません。通勤や買い物、その他にもレジャー目的として使われているのが特徴です。
自転車文化を象徴するイベントとしてスイス国内では「slowUp(スローアップ)」※が開催されています。通常は車が走る道路を一時的に閉鎖し、自転車や歩行者用に開放するイベントで、国内各地で行われています。
場所によって参加者数は異なりますが、1回あたり数万人規模が参加!移動そのものを楽しむ文化が根付いていることが感じられるイベントのひとつです。
※参考:slowUp
電動自転車を買った理由「少し遠いスーパーへ」

日々の生活の中で、バスや車を使えば行ける場所でも「自転車でいけたら、時短にもなるな」と思うことが多々ありました。「青空の下、サイクリングがてらに買い物に行けたら気持ちいいんだろうな」そんな思いもあり、普通の自転車で出かけたところ、荷物が重くて坂道で断念した苦い経験もあります。
そんな話を友人にしたところ、彼女が使っていた電動自転車を試し乗りさせてくれたのです。試乗して、ペダルを漕ぎ始めたその瞬間に、笑いがとまらないほど!電動アシストのおかげで、ペダルをこぐ重さが軽減されていることに感動しました。
スイスイ走れる感覚に「これなら少し遠くのスーパーにも行けるのではないか?」という気持ちが芽生えてきました。距離にすれば2〜3km。バスも選択肢にあるし、カーシェアリングを利用する手もある。
けれども、「自分のペースで自分が動きたい時に動けたら、もっと快適だろうな」そんなささやかな期待もあり、電動自転車の購入を決めました。実際に購入して利用してみると、快適さは想像を超えてきました。買い物した荷物を乗せて坂道を走っても、足への負担が少ない電動自転車は、思っていた以上に行動範囲を広げてくれる存在になりました。
遠いから普通の自転車で行くのを諦めていた場所が、「気軽に行ける場所」に変わり、その感覚の変化は、日々の暮らしを豊かにしてくれています。
世代ごとに違う電動自転車の使い方とヒント
スイスにおいて電動自転車は、単なる「快適な道具」ではなく、人生のステージにおける「自由を広げるツール」として定着しています。その活用術を、年代別にみていきましょう。
30〜40代 日常の「タイパ」と「リフレッシュ」を両立

この世代にとって、電動自転車は最強の「時短デバイス」です。ドア・トゥ・ドアで最短移動ができるため、タイムパフォーマンスも上がります。スイスも日本同様、託児所への送迎や買い物にも電動自転車を利用する人が多いです。
しかしそれだけではなく、通勤やレジャーの時間に利用する人も多いのが特徴です。渋滞や駐車場探しのストレスなしで、移動そのものを「自分時間」に変えられるのが魅力的です。
日本でも同じように、移動時間を「自分時間」に変えることができます。たとえば、いつもの公園ではなく「子どもを乗せてすこし大きな公園へ行ってみる」「隣の駅の少しリーズナブルなお店に行ってみる」など、ちょっとした移動が「自分時間」に変わります。
50代 趣味と実用を兼ね備えた「大人の遊び道具」
子育てが一段落し、自分の時間を大切にしたい世代には、行動範囲を劇的に広げる相棒になります。週末には、少し離れた隣街のマーケットに出かけたり、湖畔のカフェまで10〜20kmのサイクリングを楽しんだり、趣味と実用を兼ね備えた遊び方が楽しめます。
体力に自信がなくても、アシストがあれば「冒険」が可能に。楽しみながら有酸素運動も続けられる、ちょうどいいバランスが魅力的です。
日本でも、普段は電車で通り過ぎる場所へ、あえて電動自転車で行ってみる「大人の遠足」を楽しんでみてはどうでしょうか。車では入れない細い路地裏の名店や、小高台の絶景ポイントも、電動アシストなら息を切らさずに辿り着けます。
無理な負担をかけずに有酸素運動も続けられるため、楽しみながら体型維持や体力作りが叶いますよ。
60代 自然と繋がり、社会とつながる「一生モノの足」

シニア世代にとって、電動自転車は「行きたい場所を諦めない」ための鍵です。
スイスのシニア世代は、自宅から山の入口まで電動自転車で走り、そこからハイキングを楽しんでいる人も多くいます。年齢とともにハードルが高くなる坂道や距離をアシストがカバーし、自然の中へ出る喜びを継続して味わえます。
「昔は歩けたあの丘」や「少し遠い川沿いの桜並木」へ。日本でも、公共交通機関の時間を気にせず、自分のペースで季節を感じるレジャーを楽しめます。
また、趣味のサークルへ通ったり、徒歩圏内を超えて友人と会ったり、移動のハードルを下げることで、社会との繋がりを軽やかに保てますよ。
家族で出かける日は車やカーシェアリングを活用する
無理に車を手放す必要はありません。1人での近距離移動は電動自転車、家族での遠出や大きな荷物のときには車、もしくはカーシェアリング。
目的に応じて移動手段を選ぶことも、快適な暮らしを手に入れるための方法。この使い分けこそが、環境への負担を減らしながら生活の質を落とさずに続けられるサステイナブルなスタイルなのではないかと思います。
ライター
アルパガウス 真樹
スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。