外の冷え込みを感じるたび、野外活動が億劫になる——それは冬特有の自然な感覚です。一般的なアウトドア活動がオフシーズンに入り、自転車に乗る頻度も減るこの季節、運動量の低下に焦りを覚える人も多いでしょう。しかし、継続の鍵は根性ではなく「設計」にあります。春に軽やかに動き出すことを目標に。雪国・新潟で10年以上ロードバイクを続けてきた筆者の実体験を交えながら、大人のための“静かな準備期間”のつくり方を紹介します。
冬を“耐える季節”から“整える季節”へ

趣味がアウトドアに根ざしたものであるほど、冬は遊びによって活動が制限されるもどかしい季節です。
雪が積もり、アスファルトが白く隠れていく雪国・新潟。ロードバイクを楽しむ筆者にとっても、かつて冬は「やりたいことが思うようにできない」と、春を待つだけの“耐える季節”でした。
しかし、10年以上この環境で走り続けて気づいたのは、冬は決して空白の期間ではなく、心身を“整える季節”だということです。
外を走れないからこそ、室内でじっくりとフォームを見直し、基礎体力を維持していく。今の環境でできる“小さな継続”を淡々と積み重ねた先に迎える春のライドは、これまで以上に身体に馴染み、走ることの純粋な楽しさを思い出させてくれます。
挫折を未然に防ぐマインド設計で“0か100か”を捨てる

冬に運動が続かない理由は、意志が弱いからではありません。「1時間走らなければ」「外に出なければ」という、自分を追い込む“100点”の設定が壁になっているケースが多いのではないでしょうか。
大切なのは、最初からハードルを下げておく設計です。
“5分またがるだけ”のハードル設定
寒い朝や疲れた夜、最初から高い目標を掲げると、脳はそれを「苦行」と判断してブレーキをかけてしまいます。そこでおすすめなのが、「5分だけ自転車にまたがる」という設定です。
ここで鍵となるのが、“作業興奮”という仕組み。心理学では「やる気が出たから動く」のではなく、「動くからやる気が出る」という仕組みを“作業興奮”といいます。行動を起こすことで脳の側坐核(そくざかく)が刺激され、やる気に関わるドーパミンが分泌され、結果として作業のやる気がでる仕組みを指します。
筆者自身も、5分だけのつもりで始めた運動が、気づけば長く続いていたという経験を何度もしています。最初の5分だけを目標にする設定は、脳の仕組みを味方につけた効率的な継続術です。
※参考:スポーツ科学センター
仕事後の疲れに加えて、育児や家事で時間がない人方は、筆者おすすめの朝活について以下の記事も参考にしてください。
運動×ドラマやアニメで“自分時間”にする
室内トレーニングの時間を「苦行」ではなく「娯楽」に変えてしまうのもひとつの方法です。お気に入りのドラマやアニメを観る時間をローラー台の上と決めておけば、運動は「目的」ではなく、楽しみな「自分時間」になります。
とくに仕事に子育てに忙しい世代は、ダラダラと動画をみるのも貴重な時間であり、運動とセットにすることで義務感が消え、むしろ待ち遠しい自分時間へと変わります。
この思考の転換こそが、冬の習慣化を支える大きな鍵になると感じています。
他アウトドアの“ベーストレーニング”という視点をもつ

冬のトレーニングは単に春を待つための手段ではなく、あらゆる活動の基礎能力を高める土台作り(ベース)でもあります。自転車は、アウトドアアクティビティとの親和性が高く、日常的に親しみのある運動のひとつです。
持久力を冬に“貯金”する
ロードバイクによる低強度の有酸素運動は、心肺機能を維持できる点や下半身の大きな筋肉を使う点で、春の山歩きや長時間のアウトドア活動に役立ちます。
週に一度でもサドルに跨る時間を設けてみると、春先の登山口に立った際、冬の間の「貯金」のおかげで足取りが軽く感じられるのではないでしょうか。
冬の地道な運動が、春からの遊びの質を底上げしてくれる。そう考えると、日々の運動にも意味を見出しやすくなります。
ウィンタースポーツと組み合わせて心身を整える

筆者は冬の間、スノーボードも積極的に楽しみます。
不安定な雪面でバランスを取るスノーボードの動きは、自転車では使わない筋肉を刺激してくれます。日頃からロードバイクで鍛えている筆者ですが、スノーボード後は思わぬところが筋肉痛になることも。
特定の競技に固執せず、季節に合わせた遊びで全身を整えることが、結果的にロードバイクへの情熱を長続きさせる秘訣です。
雪国に学ぶ、走り出すまでの“心理的摩擦”を消す工夫

「寒さ」そのものよりも手ごわいのは、準備の「億劫さ」ではないでしょうか。習慣化のための、滑らかに行動へ移るため環境づくりを紹介します。
室内トレーニング(ローラー台)を“イベント”にしない
室内トレーニングを続けるコツは、準備の手間を最小限に抑えることです。
理想は、いつでもすぐに跨れる場所に設置し、機材のセットアップを「日常の風景」の一部にしてしまうこと。 室内トレーニングをわざわざ準備して行う特別なイベントにしないことが、継続への近道です。
「お風呂の前に少しだけ汗を流そう」といった、生活動線に組み込まれた緩やかな気持ちで向き合うくらいが、大人の習慣にはちょうどよいと感じています。
以下の記事では、バーチャルアプリを使用したロードバイクトレーニングについて紹介しています。
ウェアと機材を準備しておく
寝起きや仕事後に、寒いなかでウェアを探す時間は、モチベーションを削ぐ大きな要因です。
朝活派の筆者は前夜のうちに、ウェア、ソックス、汗止めのヘアバンドまでを一箇所に並べておくようにしています。起きたら着替えるだけの状態にすることで、走り出すまでの心理的摩擦を大幅に軽減できますよ。
最近はウェア類だけでなく、トレーニング中に視聴するアニメなども事前にチェック。こうした小さな「迷い」を消す設計が、軽い気持ちで走りだす助けになっているのは間違いありません。
【実録】歴10年サイクリストの冬限定1週間トレーニングメニュー

次シーズンのレースを見据えて走り込む筆者の冬は、実は「4歳児の寝かしつけ」から始まります。
- 22:00: 4歳の息子と一緒に就寝(夜の時間を潔く捨て、睡眠を優先)
- 4:00: 起床。コーヒーを淹れ、前日に準備したウェアに着替える。
子育て、仕事に加えてロードバイクトレーニングを可能にする、1週間のルーティーンをまとめました。
- 月:レスト(完全休息)
- 火:高強度トレーニング(L4・L5強度)
- 水:レスト
- 木:中強度トレーニング(FTP・ SST強度)
- 金:低強度トレーニング(L2・L3強度)
- 土:レスト
- 日:ロングライド/スノーボード
驚かれるかもしれませんが、この「22時寝・4時起き」のサイクルこそが、子育てとトレーニングを両立させるためにたどり着いた、私にとって最も「無理のない」設計でした。
もちろん、無理のない生活リズムは人それぞれ。メニューをこなすことではなく、春が来た時に「よし、今年も楽しもう」と思える心身の状態をキープしておくことが大切です。
ライター
yomec(よめしー)
自然豊かな新潟県在住、夫婦でロードバイクを楽しんでいる自転車ライター。子育てしながらトレーニングする方法を日々模索中です。今ではヒルクライムを中心としたレースが家族旅行に。愛車はSPECIALIZEDとBROMPTON。夫婦での所有スポーツバイクはなんと8台。ファミリーでも楽しめる自転車の魅力を発信します。