ヨーロッパアルプスの夏山歩き
ヨーロッパアルプスの夏山歩きは、大きく2つのカテゴリーにわけることができます。
ひとつは、アルピニスムと呼ばれる登攀技術やロープ、ピッケル、アイゼンなどの登攀道具を使ったクライミングや氷河歩きを含む山行です。
おもに、アルプと呼ばれる放牧地より上部に位置する人間生活のない領域を行動範囲とします。
有名なモンブラン登山や、マッターホルン登山などが良く知られていますね。
高山ガイドの資格を持ったガイドをつけると、より安全に余裕を持った山行ができることでしょう。
もうひとつは、特別な技術や道具を必要としないお花畑や放牧地のなかを歩くハイキング。
また、もう少し体力的にも技術的にもハードで、人里離れたところを数日間歩くトレッキングもあります。
ガイドはハイキング・トレッキングガイドやマウンテンリーダーが付きます。
道案内や安全確保のほかに、植動物や地質についても研修を受けているガイドですので、より深いトレッキングが目指せます。
今回は、トレッキングやハイキングを中心にご紹介しましょう。
こんな楽しみ方ができる
日本でのハイキングやトレッキングでもいえることですが、体力や体調、目的によってあらかじめ予定を立ます。
日本からの12時間を越えるフライトの次の日に、標高差1500m以上のピークハントをするのはかなり無茶です。
しかし、日本で頻繁に山トレーニングをしている人が、半日の下山ハイキングだとやはり物足りないですよね。
でも、ヨーロッパアルプスはリフトを利用することで、半日ハイキングが十分に楽しめるんです。
チーズフォンデューやブルーベリータルトを目指し山小屋に行くのも楽しみのひとつ。
また、何日もかけて山のまわりを回る人もいますし、山の中腹を縦走したりするトレッキングに挑戦するのもおすすめです。
ツールドモンブラン、夏のオートルートなんかが代表的です。
また、ヨーロッパで『登頂』なんてというと、ハードルが高いイメージがありますよね。
しかし、2000〜3000m級の登攀道具を必要としない無雪ピークもたくさんあるので、挑戦してみるのもいいでしょう。
頂上に着いたときの達成感は格別。
また、スキー用のリフトや登山電車を使ってアクセスできるハイキングコースも整備されています。
ベースから標高2000m地帯まで広がる針葉樹林帯を登る苦労が省かれ、森林限界の上に広がる絶景や爽快な風、お花畑を満喫できますよ。
最高峰モンブランを一周する「ツールドモンブラン」
ヨーロッパアルプス最高峰モンブラン(4810m)を一周するツールドモンブラン。
ツールドモンブランは、1周約170km、登りの標高差約10000m、フランス・イタリア・スイス3カ国にまたがる世界的に有名なトレッキングコースです。
コース上には20軒ほどの山小屋が点在し、体力に合わせ7日~12日ぐらいかけて歩きます。
モンブランの北壁で有名なグランドジョラスや、花崗岩の岩壁ドリュー針峰などを眺めながらのトレッキング。
170kmを脚で完歩したいという目的がないのであれば、リフトやバスを使いながらおいしいとこ取りツールドモンブランもおすすめです。
峠を越え谷間に下り、チーズ小屋でチーズを試食したり。
牧場の牛たちのあいだを通してもらったりしながら、時間に余裕のあるときにはお花畑でお昼寝するときもあります。
世界各国の老若男女と出会い、そして小屋で一緒だった人たちと前後しながら、次の小屋へ行く。
小屋には寝具などがそろっているので、日本での小屋泊の縦走程度の装備は必要です。
部屋はたまに雑魚寝の部屋もありますが、たいていは2段ベッドの部屋。
MYシーツを持参すると快適に過ごせますよ。
食事は小屋によって多少の差はありますが、スープやメイン、デザート付きコースが出ます。
宿泊も食事も基本予約制なのでご注意ください。
日本の山小屋との大きな違いは、ハイキング・トレッキングに関しては早朝出発ではなく、7:30ぐらいの時間帯になります。
朝食もそれにあわせ、6 :30ぐらいからになるのですが、欧米人は朝食の10分前まで寝ていることも。
そんななか、時差のためにはやく起きてしまったときには、すみやかに荷物を持ってロビーに移動しましょう。
あまりに時間があるなら、外に出て写真を撮ったりするのもよいかと思います。
思いがけず、素敵な朝焼けの写真が撮れるかもしれません。
忘れちゃいけない山のマナー
道中でのマナーに関しては、日本の山の常識はヨーロッパでも通用します。
いままで、日本のトレッカーによるマナー違反で不快な思いをした覚えはほとんどありません。
山岳地帯での自然保護区域について、緊急時の連絡方法について簡単に説明しましょう。
今ある自然を破壊しないために、政府や環境省、県、地方自治体などが国立公園や自然保護区を指定しています。
そういった保護区の入り口には、かならずインフォーメーションの看板があります。
注意事項や保護区の歴史、動植物に関しての情報が2ヶ国語とイラストで表示されていますので、休憩がてら目を通してみてはいかがでしょうか。
案内板には、緊急時の連絡方法が書いてある場合があります。
しかし、ヨーロッパは統一で112番に電話すると消防署、山岳救助隊などその場所、状況に応じた管轄に転送されますので覚えておきましょう。
ガイドブックに乗っているだけのコースだけでなく、現地の観光局やショップで地図を手に入れテラスでワインでも飲みながら、次の日の計画を立ててみるのも楽しいですね。