「サステナブル」「エシカル」という言葉をよく耳にするけれど、その違いを正しく理解している人はまだ少ないのが現状です。おしゃれが好きだからこそ、環境や社会にも優しい選択をしたい。この記事は、そんなあなたに向けた「サステナブルファッション入門」です。基本の知識から、今日からできる5つの具体的なアクションまで、わかりやすく紹介します。

「服はあるのに、着る服がない」から卒業しませんか?

毎朝「今日、何を着よう…」と悩むあなた。ファストファッションの消費サイクルが影響しているかもしれません。安価な新商品が次々と出回り、クローゼットの中は、一時的な流行や「何となく」で選んだ服でいっぱいに。結果として、本当に自分を輝かせる一着が埋もれてしまいます。

もしそんな消費のあり方に違和感を覚えるなら、ステナブルな視点が新しいおしゃれの楽しみ方を教えてくれるはずです。

そもそも「サステナブルファッション」って何?エシカルとの違いは?

「サステナブル」と「エシカル」は、どちらも環境や社会を思いやる言葉ですが、少しニュアンスが異なります。ここではそれぞれの意味と関係性を整理し、ファッションを選ぶ際に役立つ“自分らしい基準”を見つけるヒントを探っていきましょう。

地球の未来を考える「サステナブルファッション」

サステナブルファッションとは、服の生産から廃棄まで、全工程で地球環境への負荷を減らし、未来も持続可能にする社会を築くことを目指す考え方です。

例えば、農薬や化学肥料を抑えたオーガニックコットンや、ペットボトルを再利用したリサイクル素材を選ぶこと。あるいは、水の使用量を抑えた染色技術や、再生可能エネルギーで稼働する工場で生産された服を選ぶことも含まれます。

日本では毎年約50万トンの衣類が廃棄され、そのうち再利用されるのは約30%にとどまっています(環境省, 2020)。また、国連環境計画(UNEP)によれば、ファッション産業は世界の廃水の約20%を占めるとされ、地球規模での環境負荷が懸念されています。

こうした課題に対応するためには、個人は一着を長く着られる丈夫なデザインを選び、企業や社会は古着を資源として再利用する循環システムを築くことが欠かせません。 将来の世代も安心しておしゃれを楽しめるよう、地球全体の未来を見据えるのがサステナブルファッションといえるでしょう。

人・社会・動物への思いやりを形にする「エシカルファッション」

エシカルファッションは、日本語で「倫理的なファッション」と訳され、人や社会、動物への思いやりを形にする考え方を指します。

その背景には、安価な服を大量生産する過程で、生産者が不当な低賃金や劣悪な環境で働かされている問題があります。そうした状況をなくすため、公正な取引を保証する「フェアトレード」認証のついた製品を選ぶことは、代表的なエシカルな行動です。

また、動物の毛皮を使わない「ファーフリー」や、革やウールなど動物由来の素材を一切避ける「ヴィーガンファッション」も、動物福祉の観点から重要な選択肢といえるでしょう。背景にあるストーリーに目を向け、ファッションに関わる全ての命への配慮を大切にするのがエシカルファッションです。

2つの違いと共通点。完璧じゃなくてOK、自分なりの基準を見つけよう

サステナブルが「環境の持続可能性」という未来志向の広い視点を持つのに対し、エシカルは「人・動物・社会への倫理的な配慮」という現在のプロセスを重視する側面が強いといえます。しかし、この二つは独立したものではなく、密接に関わり合っています。例えば、労働者の健康を守る(エシカル)ことは、結果的に地域の環境改善(サステナブル)にも繋がるからです。

「環境負荷を減らしたい」「生産者の暮らしを応援したい」など、自分が心地よいと感じる基準を見つけることが第一歩。完璧を目指さず、楽しみながらできる範囲で選択を重ねることが、あなたらしいファッションの楽しみ方になるでしょう。

今日からできる!おしゃれを楽しむサステナブルアクション5選

サステナブルな選択は、「我慢」や「制限」ではありません。むしろ、自分の価値観でおしゃれをより深く楽しむための新しい扉。ここでは筆者も取り入れている、5つの具体的なアクションを紹介します。

  • 「買う前」
  • 「買う時」
  • 「着る時」
  • 「手放す時」
  • 「輪を広げる」

以下で詳しく解説します。

アクション1【買う前に】クローゼットと向き合い「自分だけのスタメン」を知る

新しい服を買う前に、まずは手持ちの服をすべて把握することから始めましょう。クローゼットの中身を可視化することで、自分の買い物の癖が見え、衝動買いを防ぐことができます。次に買うべきものが明確になり、クローゼットの中が本当に好きな服だけで満たされるはずです。

そのための具体的な方法として、筆者は「ワンイン・ワンアウト」※1や、サステナビリティ活動家リヴィア・ファース氏が提唱した「#30Wears」※2といったルールを実践しています。

※1 新しく服を一着買ったら、持っている服を一着手放すというルール
※2 「この服を30回着るだろうか?」と自問してから購入を決めることを推奨するキャンペーン

アクション2【買う時に】未来の自分に「投票」するように選ぶ

服を買う行為は、その服が作られた背景やブランドの姿勢に「投票」することと同じです。素材の知識を少し持つだけで、買い物の視点が大きく変わります。たとえば、農薬を抑えたオーガニックコットンや、ペットボトルから再生されたリサイクル素材を選ぶこと。

筆者は、ブランドの公式サイトで生産背景の情報を確認したり、第三者機関による認証の有無をチェックしたりしています。流行りのアイテムは、古着やレンタルで気軽に取り入れ、長く愛用できる定番は新品に投資するという賢い選び方がおすすめです。

アクション3【着る時に】お気に入りを「育てる」時間も楽しむ

お気に入りの服を少しでも長く楽しむためには、日々の手入れが欠かせません。洗濯表示をしっかり確認し、素材に合った方法で洗うだけで、服の寿命は大きく変わります。たとえば、タグに記された洗濯表示を守ることが大切です。筆者はネット洗いや平干しなどを実践しています。

また、小さなほつれやボタンの緩みは、気づいた時に自分で直しています。少し手間をかけることで愛着が増し、その服は「世界に一つの宝物」へと育っていくはずです。

アクション4【手放す時に】次に繋げる「ありがとう」のバトン

役目を終えた服を「ごみ」として捨てる前に、次に繋げる方法を考えてみましょう。特に子供服は、素材が痛む前にサイズが合わなくなることが多く、まだまだ着られるものがほとんどです。

筆者は、友達や親戚に譲ったり、フリマアプリやリセールサービスを利用して、必要としている人にバトンタッチしています。また、居住地のアメリカでは、多くの場所で善意活動グループに古着を寄付できるのでよく利用しています。このような選択をすることで、大切な資源を無駄にせず、次の役割へと「循環」させられます。

アクション5【輪を広げる】あなたの「好き」がムーブメントになる

あなたの「好き」という気持ちは、サステナブルなファッションの輪を広げる大きな力になります。お気に入りのエシカルブランドや、古着で見つけた素敵なアイテム、服を長持ちさせるための工夫などをSNSでシェアしてみませんか。あなたの投稿が、誰かの新しい発見や行動のきっかけになるかもしれません。

また、「こんな商品が欲しい」という消費者の声は、企業を動かす原動力です。レビューやアンケートを通じて積極的に意見を伝えることで、誰もがより良い選択をできる未来につながります。

サステナブルでエシカルなファッションは、我慢ではなく、新しい価値観を楽しむための選択肢です。完璧を目指す必要はありません。まずはこの記事で紹介した5つのアクションの中から、一つでも「これならできそう」と思えるものから始めてみませんか。その小さな一歩が、あなた自身のファッションをより豊かにし、地球や社会の未来をもっと素敵に変えていくはずです。

参考資料:
環境省「サステナブルファッション」
環境省「日本における衣類の廃棄量に関する調査報告(2020)」
UNEP (United Nations Environment Programme), “Sustainability and Fashion Industry Report” (2019)

Kazumi Kawagoshi

ライター

Kazumi Kawagoshi

大学で国際文化・環境を学び、卒業後、小笠原父島で5年間の島暮らしを経験。現在、世界一高いレッドウッドの森と太平洋を望む米カリフォルニア州で21年目の生活を送る。休日は家族とサーフィンやキャンプを楽しんでいる。一児の母。ライター活動を通じ持続可能なくらしや地域文化の魅力を発信中。